【早大研究員の視点】中国、エリート大学生がなぜ「ネズミ人間」に?高等教育の膨張が招いた「高学歴失業」という不都合な真実

2026-02-10 07:31
経済の低迷が続く中国。「寝そべり族」や「ネズミ人間」といったネット流行語は、激しい競争と高圧的な労働環境に置かれた若者たちの集団的な無力感を浮き彫りにしている。(資料写真/新華社)
経済の低迷が続く中国。「寝そべり族」や「ネズミ人間」といったネット流行語は、激しい競争と高圧的な労働環境に置かれた若者たちの集団的な無力感を浮き彫りにしている。(資料写真/新華社)

近年、中国の若者労働市場において、不可解なパラドックスが顕在化している。高等教育の規模が過去最大に拡大する一方で、若年層の失業率は高止まりを続け、若者の職業観と企業の需要とのミスマッチが深刻な広がりを見せているのだ。

​こうした歪みは、公的な世論にも色濃く反映されている。「寝そべり族」や「ネズミ人間」といったネット流行語の台頭は、高学歴化した若年層に広がる挫折感と疎外感の表れといえる。人口減少と急速な少子高齢化によって将来の労働供給が制約される中、いかにして教育体系、労働市場、そして社会の期待値を調整していくかは、中国当局にとって極めて緊急性の高い課題となっている。

過去最高水準で推移する若年失業率

中国国家統計局のデータによると、2025年12月の全国調査失業率は5.1%であったが、16〜24歳の若年層に限れば16.5%という高い水準に達している。2024年1月に統計手法が変更された後、同層の失業率は同年8月に修正後最高値となる18.9%を記録した。その後、9月以降は卒業シーズンを終えたことによる季節要因で緩やかに低下したものの、全体的な水準は前年同期を依然として上回っている。

高等教育の膨張と市場の「受け皿」不足

若年失業率の上昇を招いた主要因の一つは、高等教育の急激な拡大である。過去20年間で中国は高等教育の普及期へと転換し、大学卒業生数は過去最高を更新し続けているが、労働市場の吸入能力はそれに伴っていない。

2023年の高等教育進学率は60.2%に達し、2003年のわずか17%から飛躍的に上昇した。これに伴い、大学卒業生数は2018年の753万人から2023年には1158万人へと急増し、5年間で年平均約400万人という驚異的なペースで増加している。

若年失業の多くは、皮肉にもこれら高学歴層に集中している。2022年のデータでは、20〜24歳の失業者の約70%が大学卒業生(専門学校を含む)であり、中等教育(中学・高校)卒業者は約15%にとどまっている。この不均衡は労働構造の変化と密接に関連しており、2022年に新たに労働市場へ参入した大学卒業生857万人に対し、中等教育卒業生は合計で約401万人にすぎなかった。

ミスマッチの深化 「ホワイトカラー偏重」の罠

卒業生の職業選好と実際の労働需要との乖離も問題を悪化させている。多くの卒業生がIT(情報通信技術)や金融といった高年収セクターに集中する一方で、企業の実際の求人は物流、卸売・小売、サービス業といった現場のポジションが中心である。また、製造業では熟練技能工が慢性的に不足しており、実務能力を備えた技術人材への需要は高い。
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かつての「一人っ子政策」も、家庭内の高等教育に対する執着を強める結果となった。多くの親は子供がブルーカラーに従事することを避けるため多額の教育投資を行い、その結果、卒業生の「ホワイトカラー志向」が強化され、労働市場の需給バランスをさらに崩している。

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