世界的なスマートフォン市場の停滞やコスト圧力といった逆風が吹くなか、台湾の半導体大手メディアテック(MediaTek)は「モバイルの覇者」から「AIインフラのキープレイヤー」への転換を加速させている。蔡力行CEOは、クラウドコンピューティングおよびデータセンター向けカスタムチップ(ASIC)分野での進展が想定を上回るスピードで進んでおり、2026年には同事業の売上高が10億ドル(約1,500億円)の大台に乗ると明言した。
エッジからクラウドへ 2026年が「ASIC元年」に
これまでモバイル向けSoC(システム・オン・チップ)で市場を牽引してきた同社だが、現在はハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)市場への参入を急ピッチで進めている。
蔡CEOは決算説明会の冒頭で、「遍在するAI(Ubiquitous AI)」が演算能力の限界を押し広げている現状に触れ、「データセンター向けASICの売上高は2026年に10億ドルを突破し、2027年には数十億ドル規模に達すると確信している」と自信をのぞかせた。
同社のロードマップはすでに2028年まで確定しており、現在進行中のプロジェクトが2028年以降の新たな収益の波を形成する見通しだ。これは、メディアテックのクラウドAI分野における受注競争力が、単発ではなく長期的な持続性を備えていることを示唆している。
市場規模700億ドルの大波を狙う シェア15%を標榜
アナリストとの質疑応答では、ターゲット市場(TAM)の規模に注目が集まった。蔡CEOは、2028年に向けた暫定的な試算として、クラウドASICの市場規模が従来の予測(500億ドル)から上振れし、500億ドル〜700億ドル(約7.5兆円〜10.5兆円)に達する可能性があるとの見解を示した。
激化する競争環境において、同社は10%〜15%の市場シェア獲得を現実的な目標に掲げている。「我々の強みは、高度な柔軟性と『ハイブリッド・ビジネスモデル』にある。クラウド・サービス・プロバイダー(CSP)と相互補完的な関係を築き、設計価値を最大化するWin-Winの体制を構築していく」と蔡氏は述べた。
TSMC 2nmプロセスを先行確保 HPC技術への集中投資
この大規模な事業転換を支えるのが、最先端の技術ポートフォリオだ。メディアテックは業界に先駆け、TSMCの2nmプロセスを採用したSoCの設計完了(テープアウト)を間近に控えている数少ない企業の一つである。
同社は現在、以下の次世代技術への投資を加速させている。
- 高速400G SerDes: データ転送効率の劇的向上
- CPO(共同封装光デバイス):光通信技術の統合
- 3.5Dパッケージング:高度な立体封装技術
- カスタムHBM(高帯域幅メモリー):AI処理のボトルネック解消
「データセンター顧客の信頼できるパートナーとしての地位を固めるため、主要な技術領域への投資を強化している」と蔡CEOは強調。内部リソースを再編し、AIシステムアーキテクチャやIP開発、先端プロセスに関わる高度な技術人材を積極的に採用することで、PPA(電力・性能・面積)の圧倒的な改善を顧客に提供する構えだ。
スマホチップメーカーからの脱皮
NVIDIAと共同開発したHPC向けチップ「GB10」が収益に貢献し始めたことで、メディアテックはAIスーパーコンピュータ分野での実戦能力を証明した。今回の決算説明会は、同社が「モバイル専門」という従来の枠組みを完全に突き破り、世界のAIインフラを支える不可欠なプレイヤーへと進化したことを告げる、歴史的な分水嶺となるだろう。
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編輯:丁勤紜 (関連記事: 【メディアテック決算説明会②】蔡CEO「2026年は艱難な年に」メモリ高騰の逆風下、ASP向上でフラッグシップの利益死守へ | 関連記事をもっと読む )


















































