タイのピパット・ラチャキットプラカーン(Phipat Ratchakitprakarn)副首相兼運輸相はこのほど、タイ政府が東部経済回廊(EEC)におけるディズニーランド建設を計画していると明らかにした。実現すれば年間1,000万人の観光客誘致と1,500億バーツ(約6,300億円)超の収入が見込まれるとし、「絵空事ではない」と強調したことで、国内外で波紋を広げている。
しかし、現地事情に詳しい台湾系ビジネスマンは、取材に対し懐疑的な見方を示す。タイでは2月8日に総選挙が控えており、この構想は「選挙用の観測気球」に過ぎない可能性が高いという。さらに現地では今、夢の国(ディズニー)の話よりも、隣国カンボジアとの軍事衝突リスクの方に、国民の関心が集中しているというのだ。

タイは本当にディズニーランドを建設するのか
タイの英字紙『バンコク・ポスト』によると、ピパット副首相の発言は、在ワシントン・タイ大使館がFacebookで発信した「タイは東南アジア初のディズニーランド誘致における主要な競争相手としての地位を確立しつつある」という投稿を受けたものだ。
ピパット氏は、タイの強みは市場規模だけでなく、国際空港、高速鉄道システム、深水港、道路網などのインフラにあると指摘。「世界規模のプロジェクトを誘致しても、十分な観光客を収容できる」と自信を見せた。
現在、アジアのディズニーリゾートは東京、香港、上海にあり、実現すればアジアで4地域目、5つ目のパークとなる。しかし、このタイミングでの発表に対し、前出の台湾系ビジネスマンは『風傳媒』に対しこう語る。「ピパット氏が所属する『タイ誇り党(Bhumjaithai)』は連立与党の一角だが、選挙戦は厳しい。まずは当選しなければ話にならないため、票集めのパフォーマンスだろう」

ディズニーよりも「対カンボジア」の緊張
同氏はさらに、タイ国民のリアルな関心事は別にあると指摘する。それは「カンボジアとの武力衝突」が再燃するかどうかだ。現地では「タイ軍がカンボジアへの爆撃を計画している」との情報が流れており、驚くべきことに世論の多くはこれを支持しているという。「軍にはカンボジアを『懲らしめて』ほしい」と望む声さえ聞かれるほどだ。
背景には、両国間の根深い対立がある。カンボジア側は前回の衝突時、タイからの先制攻撃を国際社会に訴えたが、タイ国民の認識は異なる。「実際に民間人の犠牲者が出たのはタイ側であり、カンボジアはラオスにまで砲撃を加えるなど、周辺国全体に好戦的な態度をとっている」というのが、タイ側の一般的な見方だ。

トランプ氏の介入も効果限定的か
この地域情勢には、米国のドナルド・トランプ大統領も関与している。トランプ氏は昨年、両国の軍事衝突に対し仲介に入り、「戦争を継続するなら36%の追加関税を課す」と警告。当時は双方が停戦に合意し、トランプ氏も「偉大な平和協定」と自賛したが、その後も小規模な軍事行動は続いている。
前出のビジネスマンは、現在のタイ国内の空気をこう分析する。「タイ軍の装備、特に空軍力はカンボジアを圧倒している。現政権の経済政策には不満も多いが、安全保障面での頼もしさから、主流派の民意は政府支持に傾いている。東南アジアという小国がひしめく地域では、やはり軍事力という『筋肉』を誇示することが重要視されるのだ」
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編集:柄澤南


















































