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【舞台裏】頼清徳総統が激賞した「龍潭の姉御」とは何者か 中国への情報漏洩を断ち切った、台湾女性捜査官の凄腕 近日、共産党スパイ事件の捜査における調査局の実績を受け、頼清徳総統(中央)は大いに満足した様子を見せた。(撮影:柯承恵)
中国国務院台湾事務弁公室(国台弁)は、台湾包囲軍事演習「正義使命-2025」の終了後間もない2026年1月7日、台湾に対する威圧的な宣伝戦を展開した。劉世芳(リュウ・セホウ)内政部長、鄭英耀(テイ・エイヨウ)教育部長を名指しで「頑迷な台湾独立分子」と認定し、さらに台湾高等検察署の陳舒怡検察官を「台湾独立の凶悪な共犯者」と呼び、この3名に対して生涯にわたり刑事責任を追及すると発表したのだ。
この中国の挑発に対し、卓栄泰行政院長(首相)と鄭銘謙法務部長は直ちに中国を非難し、強硬な姿勢を示した。頼清徳総統もその翌日、法務部調査局第62期調査官の修了式に出席し、国家安全会議の呉釗燮秘書長ら治安・検察幹部を前に、「反統一戦線、反浸透、反併合の工作を全うせよ」と訓示。中国の圧力に一歩も引かない姿勢を鮮明にした。
頼総統による不屈の宣言を受け、反浸透工作の主力部隊である検察・調査機関が直ちに動いた。国台弁が制裁リストを発表した3日後の2026年1月9日、橋頭地方検察署はまず、国家安全法および汚職治罪条例違反などの容疑で、海軍陸戦隊(海兵隊)の陳瑞勇・元軍曹ら現役・退役軍人7名を起訴した。さらにその1週間後の1月16日、検察・調査当局は憲兵隊および軍事安全総隊と連携し、同様に国家安全法違反の疑いで、全国の軍事基地など38カ所を一斉捜索し、関係者10名を事情聴取した。
中国による言論および武力による威嚇が続き、台湾当局者を「台独頑固分子」と名指しして責任追及を明言した後、総統・頼清徳氏(左から3人目)も対抗姿勢を示した。(陳品佑撮影)
中国の「生涯追及」に対し、台湾は「スパイ摘発」で対抗 軍事基地への捜索と10名の事情聴取を経て、検察当局は中天テレビ(CTI)のキャスター、「馬德」こと林宸佑(リン・シンユウ)容疑者および現役軍人5名の身柄を拘束した。中天テレビは中国に対して友好的な政治報道を行うことで知られ、台湾では「親中メディア」に分類されている。執政党である民進党にとっては「目の上のたんこぶ」のような存在だ。同局は2020年、放送免許の更新が認められず放送停止処分を受けており、当時「台湾の言論の自由は後退したのか」と議論を呼んだ経緯がある。
今回、検察当局が中天テレビのキャスターである林容疑者を共産党スパイ事件に関与したとして大々的に捜査したことに対し、民進党政権が司法を利用して再び特定のメディアに圧力をかけたのではないか、との見方も浮上している。
捜査関係者によると、陳瑞勇被告と林宸佑容疑者の事件は当初、南北で別々に捜査されていたが、手掛かりが交錯したことで、調査局は林宸佑氏(写真)の検挙に至った。(Facebookページ「馬德愛破音 中天林宸佑」より)
「台湾軍最大の恥辱」CH-47亡命未遂事件からの展開 検察関係者によると、台湾高等検察署は2023年5月から退役中佐・謝秉成による共産党スパイ事件の捜査に着手していた。この事件では現役・退役将校9名が関与し、台湾北・中・南・東部の各軍事基地や漢光軍事演習などの機密情報が漏洩したとされる。
中でも衝撃的だったのは、謝孟書中佐が1,500万米ドル(約22億円)の報酬と引き換えに、CH-47「チヌーク」輸送ヘリコプターを操縦して中国の空母「山東」に着艦させるという亡命計画を企てていたことだ。当時の邱国正国防部長(国防相)は、この件を「国軍にとって最大の恥辱となるスパイ事件」と断じた。この事件を摘発し、全台湾を震撼させたのが調査局桃園市調査処であった。
実は、桃園市調査処が掴んでいたのは謝秉成の事件だけではなかった。他の現役・退役軍人が関与する別のスパイ網の端緒も掴んでいたが、決定的な証拠を欠き、捜査を進展させられずにいた。
ある国家安全局関係者は、桃園市調査処の捜査状況を麻雀に例えて『風傳媒』にこう説明した。「桃園市調査処の手元にあった現役・退役軍人のリストは、言ってみれば『バラバラの配牌(悪手)』のようなものだった。一つひとつ整理して、テンパイ(あと1枚で上がれる状態)まで持っていくしかなかった」。この「手作り」には長い時間を要し、処長も李文義氏から許銘侑氏へ、そして現在の楊秋香氏へと2年以上にわたり引き継がれていった。
国安案件のプロ・陳白立局長が送り込んだ「盟友」たち 国家安全局関係者によると、現在の調査局長である陳白立氏は国家安全案件の捜査畑出身であり、かつて桃園市調査処で国安課長を務めた経験がある。桃園市調査処の管轄内には、中山科学研究院(ミサイル開発等の中枢)、陸軍航空特戦指揮部、陸軍司令部といった重要軍事拠点が集中している。陳局長は、謝秉成事件に関連するスパイ網を一刻も早く一掃しなければ、将来に大きな禍根を残すと判断していた。
そのため、李文義処長の後任として、手腕に定評のある許銘侑氏、続いて楊秋香氏というエース級の人材を相次いで投入したのだ。調査班第27期の許氏と第29期の楊氏は、陳局長が国家安全維護処国安ステーション時代に肩を並べて戦った、最も信頼する盟友たちであった。
台湾高等検察署が2023年5月に捜査した退役中佐・謝秉成被告のスパイ事件では、謝孟書中佐が1500万米ドルの報奨金目当てにCH-47チヌークヘリコプターで中国空母「山東」への着艦を画策していたことが判明。当時の国防部長・邱國正氏(写真)は「国軍にとって最も恥ずべきスパイ事件」と非難した。(柯承惠撮影)
行き詰まった捜査を突破した「龍潭の姉御」、頼清徳総統も「よくやった」と絶賛 ある調査官によると、楊処長はかつて張顕耀・元大陸委員会副委員長の機密漏洩疑惑を捜査した経験があるほか、調査班第29期をトップの成績で修了した「女状元(女性トップ合格者)」でもある。彼女はかつて桃園県調査ステーションの拠点調査員として、重要軍事基地が集中し「龍潭虎穴(危険な場所)」と呼ばれる龍潭地区を担当していた。当時のベテラン調査官たちは、彼女が管轄内の動向を深く把握し、果敢に飛び込んでいく姿を振り返り、敬意を込めて「龍潭の姉御」と呼んでいたという。
検察関係者によると、許氏と楊氏は共に国家安全維護処(国安ステーション)の出身であり、捜査の手法や枠組みは似ているが、楊氏は分析能力において特に秀でているという。楊氏が桃園市調査処長に着任し、事件を引き継いだ当初、スパイ網の資金の流れを特定できず、捜査は暗礁に乗り上げていた。万策尽きたかと思われたその時、楊氏は大胆な決断を下す。過去数年間に調査局が摘発した共産党スパイ事件の資金ネットワークをすべて洗い直すことにしたのだ。その中には、高雄市調査処が担当していた陳瑞勇の事件も含まれていた。
執念の捜査は実を結んだ。楊氏は陳瑞勇事件と林宸佑事件の資金の流れにいくつかの重複点があることを突き止めた。これを突破口に、林宸佑事件で既に拘束されていた陸軍航空特戦指揮部の鍾姓上等兵から証言を引き出し、そこから芋づる式に林宸佑ら主犯格へとたどり着いたのである。
軍・検察・憲兵が連携、一網打尽に 2026年1月16日、検察・調査局・憲兵隊は連携して林宸佑事件の捜査網を絞り込み、翌17日には林宸佑、海兵隊の頼姓下士官、陸軍軍官学校の洪姓女性下士官、陸軍航空特戦指揮部の鍾姓上等兵、および第10軍団ミサイル中隊の楊姓、陳姓下士官ら計6名に対し、橋頭地方裁判所へ接見禁止付きの勾留を請求し、認められた。検察当局は10日足らずの間に陳瑞勇事件を起訴し、さらに林宸佑事件を摘発するという早業を見せた。これは、劉世芳内政部長らを「終身追及」すると脅した中国国台弁に対し、強烈なカウンターパンチを見舞う形となった。
桃園市調査処長の楊秋香氏(2列目右から14人目)は、中天テレビアンカーの林宸佑氏が関与したスパイ事件を摘発し、頼清徳総統から称賛を受けた。(資料写真、調査局提供)
頼清徳総統の「よくやった」、現場の士気を高める 中国に対する迅速かつ効果的な反撃は、民進党政権上層部の注目を集めた。国家安全局関係者によると、2026年1月23日に行われた調査局内部の国家安全に関する重要業務会議において、陳白立調査局長は幹部に対し、頼清徳総統の言葉を伝えたという。頼総統は、中天テレビのキャスター・林宸佑が関与した共産党スパイ事件の摘発について、「調査局は反統一戦線、反浸透の任務をしっかりと遂行した」と高く評価したそうだ。
頼総統が記者会見などの公の場で、中国との情報戦における勝利を称賛することはなかった。しかし、陳局長が非公開の会議で伝えた総統からの「よくやった」という言葉は、現場に大きな高揚感をもたらした。陳局長自身も興奮を隠しきれず、会議に参加していた楊秋香処長を大いに称え、出席した調査官たちに「気を緩めず、さらに励むように」と鼓舞したという。
中台関係が「戦争の危機」にある中、中国は硝煙のない情報戦争を激化させている。頼清徳総統による「非公式な称賛」は、最前線で戦う調査機関にとって、何よりの強心剤となったようだ。
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