【舞台裏】頼清徳総統が激賞した「龍潭の姉御」とは何者か 中国への情報漏洩を断ち切った、台湾女性捜査官の凄腕

2026-02-07 09:31
近日、共産党スパイ事件の捜査における調査局の実績を受け、頼清徳総統(中央)は大いに満足した様子を見せた。(撮影:柯承恵)
近日、共産党スパイ事件の捜査における調査局の実績を受け、頼清徳総統(中央)は大いに満足した様子を見せた。(撮影:柯承恵)

中国国務院台湾事務弁公室(国台弁)は、台湾包囲軍事演習「正義使命-2025」の終了後間もない2026年1月7日、台湾に対する威圧的な宣伝戦を展開した。劉世芳(リュウ・セホウ)内政部長、鄭英耀(テイ・エイヨウ)教育部長を名指しで「頑迷な台湾独立分子」と認定し、さらに台湾高等検察署の陳舒怡検察官を「台湾独立の凶悪な共犯者」と呼び、この3名に対して生涯にわたり刑事責任を追及すると発表したのだ。

この中国の挑発に対し、卓栄泰行政院長(首相)と鄭銘謙法務部長は直ちに中国を非難し、強硬な姿勢を示した。頼清徳総統もその翌日、法務部調査局第62期調査官の修了式に出席し、国家安全会議の呉釗燮秘書長ら治安・検察幹部を前に、「反統一戦線、反浸透、反併合の工作を全うせよ」と訓示。中国の圧力に一歩も引かない姿勢を鮮明にした。

頼総統による不屈の宣言を受け、反浸透工作の主力部隊である検察・調査機関が直ちに動いた。国台弁が制裁リストを発表した3日後の2026年1月9日、橋頭地方検察署はまず、国家安全法および汚職治罪条例違反などの容疑で、海軍陸戦隊(海兵隊)の陳瑞勇・元軍曹ら現役・退役軍人7名を起訴した。さらにその1週間後の1月16日、検察・調査当局は憲兵隊および軍事安全総隊と連携し、同様に国家安全法違反の疑いで、全国の軍事基地など38カ所を一斉捜索し、関係者10名を事情聴取した。

20260130-賴清德總統春節勗勉花蓮地區部隊。(陳品佑攝)
中国による言論および武力による威嚇が続き、台湾当局者を「台独頑固分子」と名指しして責任追及を明言した後、総統・頼清徳氏(左から3人目)も対抗姿勢を示した。(陳品佑撮影)

中国の「生涯追及」に対し、台湾は「スパイ摘発」で対抗

​軍事基地への捜索と10名の事情聴取を経て、検察当局は中天テレビ(CTI)のキャスター、「馬德」こと林宸佑(リン・シンユウ)容疑者および現役軍人5名の身柄を拘束した。中天テレビは中国に対して友好的な政治報道を行うことで知られ、台湾では「親中メディア」に分類されている。執政党である民進党にとっては「目の上のたんこぶ」のような存在だ。同局は2020年、放送免許の更新が認められず放送停止処分を受けており、当時「台湾の言論の自由は後退したのか」と議論を呼んだ経緯がある。

今回、検察当局が中天テレビのキャスターである林容疑者を共産党スパイ事件に関与したとして大々的に捜査したことに対し、民進党政権が司法を利用して再び特定のメディアに圧力をかけたのではないか、との見方も浮上している。

橋頭地方検察署が1週間で矢継ぎ早に手を打った背景について、検察関係者はこう明かす。もともと調査局高雄市調査処が海兵隊の陳瑞勇の案件を、桃園市調査処が林宸佑の案件をそれぞれ捜査していた。南と北で別々に進んでいたこの2つの事件の線がつながり、林容疑者の事件の全貌が浮き彫りになったことで、一網打尽にするタイミングが訪れたのだという。 (関連記事: 「福建省の空軍基地が射程に」習近平氏がトランプ氏に警告した「300キロミサイル」の正体 関連記事をもっと読む

20250117-中天記者林宸佑(左)疑涉國安法,高雄橋頭地院裁定收押禁見。(取自「馬德愛破音 中天林宸佑」臉書)
捜査関係者によると、陳瑞勇被告と林宸佑容疑者の事件は当初、南北で別々に捜査されていたが、手掛かりが交錯したことで、調査局は林宸佑氏(写真)の検挙に至った。(Facebookページ「馬德愛破音 中天林宸佑」より)

「台湾軍最大の恥辱」CH-47亡命未遂事件からの展開

​検察関係者によると、台湾高等検察署は2023年5月から退役中佐・謝秉成による共産党スパイ事件の捜査に着手していた。この事件では現役・退役将校9名が関与し、台湾北・中・南・東部の各軍事基地や漢光軍事演習などの機密情報が漏洩したとされる。

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