『新戦略兵器削減条約』本日失効 英エコノミスト誌が警告する「破滅的誤算」と世界平和への脅威

中国・北京の天安門広場で9月3日に行われた軍事パレードに登場した、最大10発の核弾頭を搭載可能な地上発射型大陸間弾道ミサイル「東風5C(DF-5C)」。(写真/AP通信提供)
中国・北京の天安門広場で9月3日に行われた軍事パレードに登場した、最大10発の核弾頭を搭載可能な地上発射型大陸間弾道ミサイル「東風5C(DF-5C)」。(写真/AP通信提供)

冷戦後の核の安定を支えてきた最後の砦が、音を立てて崩れようとしている。米露間の核軍備管理を定めた「新戦略兵器削減条約(新START)」が期限を迎える中、米国に更新の意思はなく、中国は冷戦のピーク時以来という猛烈なスピードで核戦力を増強している。かつての米露対立の構図は今、「同じ瓶に閉じ込められた3匹のサソリ」という極めてリスクの高い局面へと変貌した。

英誌『エコノミスト』は2月3日、軍備管理メカニズムの機能不全と中国の核戦力向上、そして米国の対応余地の欠如が重なり、世界は核拡散のリスクと、破滅的な誤算がより起こりやすい「危険な新時代」へと突き進んでいると警鐘を鳴らした。

瓶の中の「3匹目のサソリ」 中国の台頭

​冷戦後の核管理秩序を象徴してきた「新戦略兵器削減条約(新START)」は、2月5日に失効する。代替案は存在しない。この条約は長年にわたり、米露という世界で最も危険な核保有国が保有する戦略核弾頭の数を制限し、暴走を防ぐ役割を果たしてきた。

条約が失効する今、米国の態度は冷ややかであり、更新する意思は見られない。一方、ロシアは核の制限解除は「全人類への警告」であるべきだと主張し、双方が自主的に1年間延長することを提案した。これに対し、ドナルド・トランプ氏は先月、「期限が切れるなら、それまでだ」と一蹴している。

「二正面作戦」への焦り

​『エコノミスト』によれば、ワシントンの戦略立案者たちが真に懸念しているのは、将来的に中国とロシアという二つの核大国と「同時に」戦うシナリオだ。 米国の最新の「国防戦略(NDS)」には、「米国は、異なる地域で複数の敵対勢力が連携、あるいは混乱に乗じて同時に攻撃を仕掛けてくる事態に備えなければならない」と明記されている。米議会の超党派委員会も、これは米国にとって準備が追いついていない「存亡に関わる挑戦」であると率直に認めている。

かつて、米国の核戦略は主にロシアの抑止を目的としており、中国は長らく二次的な脅威と見なされてきた。冷戦時代、「原爆の父」J・ロバート・オッペンハイマーは、米ソの核対立を「瓶の中に閉じ込められた2匹のサソリ」に例えた。互いに相手を殺せるが、自分も死ぬ。その危険な均衡は、軍備管理協定によって瓶が割れるのを防いできたことで保たれてきた。

しかし今、その瓶の中に「3匹目のサソリ」である中国が加わり、急速に巨大化している。 同誌は、中露関係がかつてないほど緊密化していると指摘する。両国は機微技術を交換し、合同軍事演習を行い、核兵器搭載可能な長距離爆撃機を共同で飛行させている。同時に、中国の核戦力拡張のペースは冷戦のピーク時以来、世界最速である。 この現実は、米国にリスク計算の根本的な見直しを迫っており、新たな核軍拡競争の足音が近づいている。 (関連記事: 「トランプ氏の言葉は字面でなく『ビジネスロジック』で読め」林佳龍外相が語る、台湾防衛と対米交渉の核心 関連記事をもっと読む

2025年10月:各国の核弾頭数推定。(『エコノミスト』)
2025年10月:各国の核弾頭数推定。(『エコノミスト』)

「自制」を掲げながらの「爆走」 中国核戦力の不気味な実態

​中国の核軍拡のスピードは、一体どれほど凄まじいものなのか。 習近平氏が政権の座に就いた2012年当時、中国が保有する核弾頭は約240発に過ぎなかった。これは、新START条約下で米露が配備可能な各1,550発という上限を大きく下回る数字だ。当時、米軍内では「仮に核戦争が起きても、米国はその圧倒的な核戦力で、ほぼあらゆるシナリオにおいて優位に立てる」というのが一般的な見方だった。

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