欧米メディアはなぜ『台湾漫遊鉄道のふたり』を絶賛したのか 食と「作中作」で描く植民地支配の記憶

国際ブッカー賞の舞台に立ち「私たちがやり遂げた」と語る楊双子氏。長編小説『台湾漫遊鉄道のふたり』の著者である台湾人作家の楊双子氏(左)と英訳者の金翎氏(右)が19日、国際的文学賞「国際ブッカー賞」を受賞した。楊氏は「私たちがやり遂げた」と喜びを語った。(中央社記者・陳韻聿ロンドン撮影、2026年5月20日)
国際ブッカー賞の舞台に立ち「私たちがやり遂げた」と語る楊双子氏。長編小説『台湾漫遊鉄道のふたり』の著者である台湾人作家の楊双子氏(左)と英訳者の金翎氏(右)が19日、国際的文学賞「国際ブッカー賞」を受賞した。楊氏は「私たちがやり遂げた」と喜びを語った。(中央社記者・陳韻聿ロンドン撮影、2026年5月20日)


先日、国際ブッカー賞の受賞作が発表され、台湾文学の歴史に新たな1ページが刻まれた。台湾の作家、楊双子(ヤン・シュアンズ)の著書で、台湾系米国人の翻訳家、金翎(リン・キング)が英訳を手がけた『台湾漫遊録』(台湾漫遊鉄道のふたり)が、国際的文学賞の最高峰ともいえる同賞の栄冠に輝いたのである。繁体字中国語から英訳された小説として初の受賞となるだけでなく、台湾籍および台湾系米国人の受賞も同賞史上初という二重の快挙を果たした。すでに世界十数カ国で翻訳権が売れている本作は、英国の独立系出版社「And Other Stories」に2年連続で同賞をもたらす結果ともなった。

『台湾漫遊録』はなぜ評価されたのか:審査委員会の視点

国際ブッカー賞は、英国で授与される文学賞の中でも最高峰に位置づけられるものだ。2005年の創設当初は、国籍を問わず存命の作家の「持続的な創造性と発展、そして世界の小説に対する全体的な貢献」を評価する生涯功労賞的な色彩が強かった。しかし、制度の変遷を経て、現在では世界中で出版された優れた翻訳文学を対象とする、文学界において最も影響力のある年次賞となっている。

世界中の競合作品の中から『台湾漫遊録』が選ばれた理由について、同賞のナターシャ・ブラウン審査委員長は極めて高い評価を与えている。ブラウン氏は、本作が1930年代の日本統治下の台湾を舞台に、「愛は権力の非対称性を克服できるか」という本質的な問いを精緻に描き出している点を指摘する。さらに特筆すべきは、その卓越したメタフィクション構造である。作中では、序文や脚注、後記といった伝統的なテキストの体裁が大胆に駆使されており、中心となる恋愛譚の外側に、読者を引き込むメタ的な階層が幾重にも張り巡らされている。そして、金氏の精緻な翻訳が、物語の多様な語り口の機微を余すところなく伝えている点も受賞の決定打となった。

審査委員会は同作を、「抑制の効いた洗練さと、比類なき重層性を備えた傑作であり、ロマンス小説としての魅力と、鋭いポストコロニアル的思索を両立させるという驚異的な離れ業をやってのけた」と絶賛している。 (関連記事: 『台湾漫遊鉄道のふたり』がブッカー国際賞受賞 台湾文学初、中国語作品でも初 関連記事をもっと読む

国際ブッカー賞審査委員長が「台湾漫遊録」を絶賛 台湾の作家・楊双子が創作し、金翎が英訳した長編小説「台湾漫遊録」がロンドンで国際文学大賞「国際ブッカー賞」を受賞した。ナターシャ・ブラウン審査委員長(中)は、本作を人々を魅了し、創意に満ちた小説であると述べた。(ブッカー賞財団提供)中央社
国際ブッカー賞審査委員長が「台湾漫遊録」を絶賛 台湾の作家・楊双子(右)が創作し、金翎(左)が英訳した長編小説「台湾漫遊録」がロンドンで国際文学大賞「国際ブッカー賞」を受賞した。ナターシャ・ブラウン審査委員長(中)は、本作を人々を魅了し、創意に満ちた小説であると述べた。(ブッカー賞財団提供)中央社

メタフィクションとは、作品自体の「虚構性」を意図的に強調する創作手法である。著者は叙述の中で様々な技巧を用い、これが「作り話」であることを読者に絶えず認識させる。それにより、伝統的な物語のリアリティを解体し、読者を虚構と現実の境界を巡る思索へと導くのだ。

甘くほろ苦い時空の旅:『台湾漫遊録』の物語構造

この記念碑的な作品は、どのような物語を紡いでいるのか。舞台は1938年の初夏。日本の裕福な家庭に生まれた若き女性作家・青山千鶴子が、自身の半自伝的小説の映画化と台湾での公開を機に、講演旅行のために来台する。帝国主義的な政治宣伝には一切関心を持たず、専ら食欲旺盛な彼女の目的は、南の島のローカルな生活を味わい尽くすことだった。そこで、地元の婦人団体が彼女の通訳として雇ったのが、台湾の有力一族の庶子であり、元公学校(小学校)教師の若い台湾人女性・王千鶴である。職業人としての自立を渇望する二人の女性は意気投合し、結婚前の束の間の自由な時間を謳歌すべく、台湾を縦貫する鉄道と美食の旅へと出発する。

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