ホルムズ海峡封鎖解除へ、米イラン合意が大筋妥結 世界金融と海運への影響
2026年5月6日、イランの首都テヘラン中心部の広場で、国旗を振り政府への支持を表明する男性。広場には、ホルムズ海峡と、唇を縫い合わされた米大統領のドナルド・トランプ氏が描かれた看板が設置されている。(写真/AP通信提供)
今年2月28日に米国とイスラエルが連携してイランへの軍事行動を開始して以来、中東情勢は急激に緊迫化し、世界のエネルギー供給や金融市場に重い圧力がのしかかっている。世界を巻き込むこの紛争が、ここへきてようやく転機を迎えようとしている。米大統領・トランプ氏が23日、「協議は大筋で合意に達した」「内容はホルムズ海峡の開放を含む」とSNSに投稿したことに続き、インドを訪問中の米国務長官・ルビオ氏も「数時間以内に良い知らせがあることを期待している。世界はもはやイランの核兵器を懸念する必要はない」と明言した。米経済メディア『ブルームバーグ』のコラムニスト、ハビエル・ブラス氏は、原油価格の高騰が世界にもたらす打撃が極めて大きいことから、業界内ではホルムズ海峡の再開は遅くとも7月には実現すると見られていると指摘した。
トランプ氏、協議は「大筋合意」と言及
トランプ氏が「イランとの合意が間近だ」と投稿した直後、イラン外務省の報道官も双方が「最終的な協議段階」に入ったことを事実として認めた。米『AP通信』によると、この覚書(MOU)には、ホルムズ海峡の段階的な再開、米国による対イラン全面封鎖の解除、および凍結されているイランの海外資産の解放といった核心的な内容が含まれる可能性がある。同覚書が順調に署名されれば、その後60日間にわたる正式な交渉が始まると見られている。
しかし、イランのメディアが発信する情報を見る限り、双方の認識のズレは依然として大きい。イランの半国営メディアは、ホルムズ海峡の航路設定および通航規制は引き続きイランのイスラム革命防衛隊(IRGC)が主導し、主権や安全保障の権限において譲歩することはないと強調している。言い換えれば、トランプ氏の言う「海峡の再開」とイランが主張する「条件付きの通航規制」との間には明確な隔たりがあり、今後の交渉の行方を注視する必要がある。
インドを訪問中のルビオ氏は、米イラン交渉は核問題で合意に達しており、今後はイランの核兵器に恐怖や懸念を抱く必要はないと述べた。ただし、同氏は「最終的な結論には至っていないものの、交渉は大きな進展を見せた」と述べる一方で、「数時間以内に良い知らせがあることを期待している」とも発言しており、実際の交渉の進捗状況については不透明な部分も残る。もっとも、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、カタール、パキスタン、トルコ、エジプト、ヨルダン、バーレーンの各国首脳は23日にトランプ氏と電話会談を行い、紛争の終結を求めている。また、英海軍の艦艇は、ホルムズ海峡に敷設された可能性のある機雷の除去を支援するため、すでに待機状態に入っている。ただし、専門家は機雷の完全な除去には数年を要する恐れがあると分析している。
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合意内容の輪郭が浮き彫りに
米『AP通信』の報道によると、米イランの停戦草案に詳しい中東の当局者2人は、この潜在的な合意にはイランが核兵器を開発しないという確約が含まれ、イラン政府は高濃縮ウランの備蓄放棄にも同意する見通しだと指摘している。ただし、イランがどのように高濃縮ウランを放棄するかについては、今後60日間のさらなる交渉における主要な議題となる。関係者によれば、一部が希釈され、残りがロシアなどの第三国へ移送される可能性があるという。国際原子力機関(IAEA)が昨年査察したデータによれば、イランは現在、純度60%に濃縮されたウランを440.9キログラム保有しており、兵器級である純度90%まであと一歩の段階にある。
イランが核兵器を開発しないと確約したことを受け、米国もイランの港湾に対する封鎖を終了する見込みだ。イラン側もホルムズ海峡の規制を解除し、世界の石油および液化天然ガス(LNG)輸送の5分の1を担うこの海上要衝も段階的に開放される。内情に詳しい別の当局者によれば、米国はイランによる石油販売も許可する方針であり、制裁解除や凍結資金の解放については今後60日間で協議される。さらに、合意草案にはイスラエルとレバノンの親イラン民兵組織ヒズボラとの戦闘終結、および中東諸国の内政に干渉しないという確約も含まれている。
しかしイスラエル側は、イランと同盟関係にあるヒズボラが、依然としてイスラエルにとって深刻な脅威になり得ると懸念している。報道によれば、イスラエル首相・ネタニヤフ氏はトランプ氏に対し、イスラエルは「レバノンを含むすべての戦場で、脅威に対して行動を起こす自由を引き続き保持する」と警告したという。これに対しトランプ氏は、イランが核開発計画を終了させ、すべての濃縮ウランを引き渡す意思を示さない限り、いかなる最終合意にも署名しないとネタニヤフ氏に伝えたとされる。
2月28日に米国とイスラエルがイランを攻撃して以来、この戦争はイランの最高指導者を含む政府高官の命を奪い、1年足らずの間に米イラン間の核交渉を2度にわたって中断させた。一方のイランはホルムズ海峡を封鎖し、イスラエルおよび米軍が駐留する周辺国に向けて攻撃を行った。これにより、中東において比較的安全と自負していた湾岸諸国も戦火の被害を受けることとなった。米国とイランは4月7日以降、名目上は停戦を維持しており(イスラエルとヒズボラは4月17日より名目上の停戦)、しかしイランは依然として断続的に周辺国への攻撃を続けているほか、ホルムズ海峡を継続的に閉鎖し、域内の石油や天然ガス、その他の重要物資を運ぶ船舶の航行を妨げている。
世界経済に重圧、27カ国が危機対応資金を緊急調達
これら27カ国は、あらかじめ用意された融資ツールを利用できる101カ国に含まれており、そのうち54カ国は未使用の融資枠の最大10%を利用できる「迅速対応オプション(Rapid Response Option)」に参加している。ケニアとイラクの当局者は、世銀に迅速な金融支援を要請していることを公に認めた。ケニアが直面している主要な問題は燃料価格の急騰であり、イラクは石油収入の激減である。注目すべきは、世銀の内部文書にはこれら27カ国の完全なリストは記載されておらず、要請される可能性のある資金の総額も明らかにされていない点だ。
欧亜航路、喜望峰への迂回を余儀なくされる
海運業界においても、この戦争がもたらした連鎖的な衝撃は明らかである。米イラン開戦の前夜、マースク、MSC、CMA CGM、ハパックロイドなど欧州の主要な海運会社は紅海への直行便を全面的に停止し、アフリカ大陸の喜望峰を迂回するルートへ変更すると発表した。現在、アジア・欧州航路の貨物船は100%が迂回状態にある。例えば、上海からロッテルダムまでの航路は、本来スエズ運河を通過すれば28〜30日で済むが、喜望峰を迂回することで35〜38日に延び、7〜10日の航海日数が追加された。燃料価格の面でも、戦争勃発前に1トンあたり約505ドルだったシンガポール市場の船舶用低硫黄燃料油は、一時最高で1200ドルまで急騰した。全体として、迂回航行と燃料高騰により、海運会社の運営コストは約5割増加している。
業界関係者は、米イランの和平合意が順調に実現し、イランが支援するイエメンの親イラン武装組織フーシ派が紅海海域での攻撃を停止すれば、ホルムズ海峡と紅海の双方が通航を再開し、サプライチェーン全体への圧力は大幅に軽減されると指摘している。しかし、ある海運大手の元幹部は、停戦が成立すればペルシャ湾に足止めされていた船舶が一斉に動き出し、短期間で大量の輸送能力が市場に放出されるため、運賃相場に小さからぬ打撃を与え、さらには港湾の混雑問題を引き起こす可能性があると分析しており、多方面にわたる影響がどのように推移するかは依然として不透明だ。
ばら積み船市場に目を向けると、ケープサイズ型(Capesize)の5月13日のスポット市場での1日あたりの用船料は4万8433ドルに達し、2023年12月以来の高値を記録し、5月としては2008年以来最強の相場となった。業界内では、戦闘が継続すれば運賃は高止まりし、仮に停戦しても需要は鈍化する可能性があるものの、船舶の供給が限られている上に戦後復興の需要も残るため、運賃が極端に急落することはないとの見方が大勢を占めている。
ホルムズ海峡が再開されなかった場合はどうなるか
トランプ氏は自信満々に語っているが、米イラン戦争において同氏の発言が反故にされた回数は数え切れない。米イランが合意を発表するまでは、ホルムズ海峡が本当に再開されると確信できる者はいない。ブラス氏は「もしホルムズ海峡が再開されなかった場合、何が起きるのか」と問いを投げかけている。同氏の指摘によれば、業界のコンセンサスとしては来月か7月にホルムズ海峡が再開されると予測しているが、仮に長期閉鎖が現実となれば(1967年からスエズ運河が8年間閉鎖されたように)、深刻な経済的打撃とさらなるエネルギー価格の高騰という結果を招くことになる。
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ブラス氏によれば、1967年にエジプトとイスラエルで戦争が勃発し、スエズ運河が閉鎖された際、運河内には15隻の船が取り残され、敵対行為の停止を待つしかなかった。この「第三次中東戦争(六日戦争)」自体はすぐに終結したが、運河の閉鎖状態はその後8年間も続いた。これらの船が1975年にようやく出航を許可された時、かろうじて航行可能だったのはわずか2隻のみで、残りの船は深刻な腐食に見舞われていた。ブラス氏は、歴史の繰り返しを望む者は誰もいないが、ホルムズ海峡がすでに3カ月間封鎖されている事実を踏まえれば、万が一の事態を想定しておく価値は十分にあると述べている。
興味深いことに、UAEはホルムズ海峡を迂回する第2パイプラインの建設計画を加速させており、2027年の稼働を目指している。これは最悪のシナリオを想定した慎重な計画であり、アブダビがこの水路を多くの人が予想する以上に危険だと見なしていることを強く示している。また、ブラス氏は、トランプ氏が「合意は間近だ」と宣言しているものの、その合意がわずか1ページの覚書にとどまり、その他の詳細が今後のさらなる交渉に委ねられるのであれば、ホルムズ海峡が直ちに完全開放されることはないだろうと警鐘を鳴らしている。
ブラス氏によれば、コモディティ市場や金融業界の多数派は、ホルムズ海峡が遅くとも来月、最悪の場合でも7月には再開されると考えている。その理由は、海峡の閉鎖によるエネルギー価格の劇的な上昇と深刻な経済的打撃が、あまりにも苦痛であり受け入れがたいからだ。米国の経済学者、ハーバート・スタイン氏は1980年代、「永遠に続かないものは、いずれ終わる」という有名な法則を提唱した。現在のウォール街は、このスタインの法則の改良版、すなわち「ホルムズ海峡の閉鎖は永遠には続かない。過大すぎる経済的打撃をもたらすため、必ず再開される」という考えに依存している。
両者とも「痛み」の限界に達しておらず、長期化の可能性も
問題は、ホルムズ海峡の封鎖が米国とイランの双方にとって、まだ十分な経済的打撃を与えていないことだ。それゆえに妥協へのインセンティブが不足している。トランプ氏にとって、これまでのところこの戦争の代償は比較的安く済んでいる。少なくとも同氏が最も重視する金融市場においてはそうだ。S&P500種株価指数は過去最高値付近で推移しており、開戦以来10%近く上昇している。原油価格は上昇したものの、2022年の記録的な高値は下回っており、さらに米国経済が相対的な好況にあることから、第2四半期の成長率予測は現在も4%と高い水準を維持している。
米イランの合意成立の可能性について、UAEのある外交官は即時合意に至る確率を「五分五分」と評価しており、ルビオ氏も交渉について「わずかな進展」があったと述べるにとどめている。双方が自国の立場を固守しているため、ブラス氏は、結果が不完全なものであっても、双方が初期段階の合意に達することができればそれが最善の結果であると考えている。もしその段階にさえ至っていないのであれば、経済的代償が耐え難いレベルに達するまで待つしかない。幸いなことに、開戦前は市場が供給過多であったことや、サウジアラビアとUAEが陸上のパイプラインを利用して一部の石油輸出を継続していること、富裕国が戦略石油備蓄を放出し、米国も自国の備蓄の一部を海外へ輸出していることが功を奏している。また同時期に、中国がなぜか石油輸入を大幅に削減したほか、価格が貧困国の負担能力を超えたことで需要自体も縮小傾向にある。
ブラス氏は、市場はホルムズ海峡封鎖によって失われた2000万バレルの石油を短期間で消化したものの、日が経つにつれて世界の備蓄は徐々に底をつきつつあると指摘している。
もしホルムズ海峡が再開されなければ、価格は明らかに大幅上昇を余儀なくされる。開戦当初にトレーダーが予測した1バレル=200ドルという原油価格は誤りであったことが証明されたが、もしホルムズ海峡の閉鎖が2026年末、あるいは2027年まで続いた場合はどうなるか。あるいは、海峡が部分的に開放されるのみで、イランが依然として大部分の支配権を握り続けるとしたらどうか。また、いずれかの側が膠着状態を打破するために戦闘を再開する可能性もある。しかし現時点を見る限り、双方にその意思はない。イランは、同盟国からの圧力で交戦を避けたい米国政府を疲弊させることができると見積もっているようだが、一方でトランプ氏も敗北を認めるほどの経済的苦痛を感じていない。まさにこの膠着状態ゆえに、封鎖は継続される可能性が高いのだ。
ブラス氏は、世界はホルムズ海峡が担う約10%から15%の石油供給がなくても確実に生存できるが、その代償は極めて甚大なものになると指摘している。中東の産油国はさらなる迂回パイプラインを建設し、中東以外の地域でも増産が進むだろうが、それには数年を要する。2027年までには、UAEが同海峡を迂回する輸出能力を倍増させる可能性が高い一方で、サウジアラビア、クウェート、イラクが同様の体制を整えるにはさらに長い時間が必要になるかもしれない。しかしカタールに関しては、ホルムズ海峡に依存する以外にLNGを輸出する手段がない。これほど大規模な消費を恒久的に削減しようとすれば、最も可能性の高い結果として世界的な景気後退が引き起こされ、その規模は1973年と1979年の2度のオイルショックに匹敵する恐れがある。
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