ホルムズ海峡封鎖のインフレ影響、市場動態と輸送混乱の過小評価を指摘する金融界

戦争に伴うホルムズ海峡の封鎖が原油価格の大幅な高騰を引き起こした。(写真/AP通信提供)
戦争に伴うホルムズ海峡の封鎖が原油価格の大幅な高騰を引き起こした。(写真/AP通信提供)

米国とイランが「休戦」状態に入る中、米大統領・ドナルド・トランプ氏はホルムズ海峡を「恒久的に開放する」との意向を示し、中国もこれに対し「非常に満足している」と強調した。これにより、金融市場には再び安心感が広がった。また、米連邦準備制度理事会(FRB)傘下のダラス連邦準備銀行(ダラス連銀)は、ホルムズ海峡が3四半期にわたり封鎖されたとしても、長期的にはインフレへの影響は限定的であるとする報告書を発表した。これに対し金融関係者からは、米政府および外部は市場の動向や輸送網の寸断に伴う調達コストの増加を過小評価しているとして、疑問の声が上がっている。

海峡封鎖は物価に影響しないのか

ダラス連銀は4月、「2026年のイラン戦争が米国のインフレに与える影響:シナリオ分析(The Impact of the 2026 Iran War on U.S. Inflation: A Scenario Analysis)」と題するワーキングペーパーを発表した。同論文では、ホルムズ海峡の封鎖が3四半期続いたとしても、米国の長期的なインフレ期待には「ほとんど影響を与えない」と分析している。

しかし、グローバル・マクロ戦略を運用するヘッジファンドの元幹部は『風傳媒』の取材に対し、2026年のイラン戦争というシナリオにおいては、海上保険市場のメカニズムがすでに「質的変化」を遂げていると指摘した。そのため、ホルムズ海峡が実際に封鎖されるか、あるいはその脅威にさらされるかにかかわらず、「戦争リスクプレミアム(War Risk Premium)」が飛躍的に高騰することになり、「これは原油そのもののコストではなく、ペルシャ湾から目的地まで原油を輸送するための通行権のコストだ」と語った。

このような状況下において同氏は、このコスト増が原油価格を通じて直接ガソリン価格に波及するのではなく、現物原油の地域的価格差(スプレッド)の構造に直接反映されるとの見方を示した。さらに、ダラス連銀の報告書は、液化天然ガス(LNG)や石油製品の海上輸送における代替ルートのコストを軽視しているとも指摘している。

同氏は、2024年から2025年にかけてのフーシ派による攻撃以降、紅海ルートの利用はすでに制限され続けていると説明する。2026年にイラン戦争が勃発すれば、この状況はさらに悪化するという。喜望峰を迂回することで航海日数が10〜14日増加し、実質的な輸送能力が約15〜20%低下するためだ。「これらのコストは最終的に、ディーゼル油、船舶燃料、および鉱工業生産の投入コストに転嫁される。そのインフレ波及経路は、ガソリン価格という単一のルートよりもはるかに複雑である」と強調した。 (関連記事: イランがホルムズ海峡を再開放 原油価格急落、米株先物は上昇 関連記事をもっと読む

連邦準備制度理事会(FRB)議長・ジェローム・パウエル氏。(画像提供:AP通信)
連邦準備制度理事会(FRB)議長・ジェローム・パウエル氏。(画像/AP通信提供)

物価と原油価格は単純な相関関係にないのか

前出の元幹部は、ホルムズ海峡が実際に封鎖された場合、世界全体の約20%を占める原油供給は「価格が高騰する」のではなく、直接的に「調達不可能になる」と指摘する。また、各国が戦略石油備蓄(SPR)を放出したとしても現物市場への影響は極めて限定的であり、その備蓄規模では長期的な供給寸断をカバーするには不十分であるとの見方を示した。

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