トップ ニュース 松重豊、日本外国特派員協会で会見 『孤独のグルメ』15年と海外ロケへの意欲語る
松重豊、日本外国特派員協会で会見 『孤独のグルメ』15年と海外ロケへの意欲語る FCCJの記者会見で海外展開や業界の課題を語る松重豊。人気シリーズ15年の軌跡も詳細に明かした。(写真/黄信維撮影)
俳優、監督、脚本家としてマルチに活躍する松重豊が16日、東京の日本外国特派員協会(FCCJ)で記者会見を行った。会場にはテレビ各社を含む多くの報道陣が詰めかけ、国内外における同氏への注目度の高さが示された。
FCCJの記者会見で海外展開や業界の課題を語る松重豊。人気シリーズ15年の軌跡も詳細に明かした。(写真/黄信維撮影 ) 松重は会見の中で、 台湾ロケの実績や今後の海外展開への強い意欲を語ったほか、現在放送中の「シーズン11」に至るまでの過酷な撮影秘話、莫大な予算を誇る海外コンテンツと直面する日本の映像業界の課題、さらには自身の私生活に至るまで、15年に及ぶ番組の軌跡を明かした。
4月 16日(木)午前11時から行われた会見では、アンディ・シャープ氏が司会を務め、メアリー・ジョイス氏が通訳を担当した。松重は冒頭、かつてNHKのドラマで「外国人記者に囲まれて釈明する大学教授役」を演じた際、まさにこの場所でメアリー氏に通訳を担当してもらったエピソードを披露。ドラマの中の関係性が現実のものとなったことに、「まさかドラマの設定が現実になるとは思わなかった」と感慨深げに語った。
テレビ東京系で4月3日からスタートした『孤独のグルメ シーズン11』だが、15年前に深夜枠でひっそりと始まった当初は、これほどの反響を呼ぶとは予想だにしていなかったという。
FCCJの記者会見で海外展開や業界の課題を語る松重豊。人気シリーズ15年の軌跡も詳細に明かした。(写真/黄信維 撮影 ) アジア各地でこれほどの人気を博している理由を問われると、松重は約2年前に始まり、各国でリメイク版も制作された人気ドラマ『深夜食堂』にも言及。どちらの作品も「淡々と食事に向き合う姿」が描かれており、「一人でご飯を食べる文化」自体が存在しなかった韓国をはじめとする東アジア全体において、そのスタイルが新鮮に映ったのではないかと分析した。
また、一昨年に制作されたスピンオフ作品『それぞれの孤独のグルメ』では、若手とちゃんこ鍋を囲むわけではない、相撲の行司の孤独な食生活に焦点を当てた回なども紹介。これまで150軒から200軒近い店を訪れた中で「順位をつけるのは難しい」としながらも、自身は「基本的には中華料理に心を動かされることが多い」と、食の好みについても明かした。
海外展開への不変の意欲と、アジア・欧州への眼差し 今後の海外展開について松重は、これまでに台湾で2回、韓国で3回(ドラマおよび映画を含む)のロケを行った実績を改めて詳細に説明。以前から計画している中国での撮影が、未だ実現に至っていない現状を明かした。
さらに、番組が支持されているタイやシンガポールなどの地域にも触れ、「予算的な厳しさはあるものの、援助や招致の声があれば、世界中どこへでも行く覚悟がある」と述べ、台湾を含めた海外展開への強い意欲を示した。また、初めてヨーロッパの観客に向けてフランス・パリでロケを敢行した映画版についても報告した。
政治と「ロック」の精神性 記者からは、ホワイトハウスでX JAPANを歌い、韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領と共にドラムを叩き、他の政治家と会食せず「独り飯」を好むとされる高市早苗首相の政治スタイルは「ロックか」というユニークな質問が飛んだ。
これに対し松重は、「食事と音楽は別物」と前置きしつつも、映画化に際して、若き日にラーメン店で共にアルバイトをした盟友、ザ・クロマニヨンズの甲本ヒロトに主題歌を依頼したエピソードを披露。「生き方や骨格に関わる精神性がロックであり、やられている政治スタイルがロックであればそれはロックだと思う 」と持論を展開した。
FCCJの記者会見で海外展開や業界の課題を語る松重豊。人気シリーズ15年の軌跡も詳細に明かした。(写真/黄信維 撮影 )
「食」というキーワードで繋ぐ相互理解と、独自の演出論 松重は、「政治的にギクシャクした関係があっても、食べるというキーワードで国と国の相互理解をつなげていきたい 」と語った。
また、演技・演出面においては、スマートフォン等の小さな画面向けに「パッと見て状況が分かりやすい作り方」を追求する昨今の日本のドラマの風潮に異を唱えた。セリフを極力減らし、モノローグ(独白)の力を借りながらも、わずかな表情やシグナルから視聴者に想像して楽しんでもらうことを重視していると強調。「食は物語である」と断言し、店の佇まいやのれんの表情、経営者 がその味に辿り着いた経緯を想像することが、味の向上につながると語った。
「完食」と「断食」の舞台裏、そしてインフレの影 司会者の子供から託された「ドラマの食事は本当に完食しているのか」という素朴な疑問に対し、松重は「きれいに食べきっている」と明言した。編集で順番を入れ替えるなどの誤魔化しは一切せず、ドキュメンタリーのように頭からきれいに食べていく 「順撮り」を徹底しているという。
過酷な体型維持についても明かした。 撮影前日の夜から食事を制限し、当日の朝も抜いて本番に臨む。帰宅後も食べないため、3日間の平均摂取カロリーは普段より少なく、シーズン中は徐々に痩せていくという。
現在放送中の「シーズン11」における最大の課題として挙げたのは「激しいインフレ」だ。飲食費用が3〜4年前の1.5倍以上に高騰するなか、「個人事業主である主人公が夕食に4,000円〜5,000円もかけられるのか。夢と現実がかけ離れていく」と、リアリティの維持に対する懸念を示した。
映像業界の課題と「アジアの中での停滞」 また、韓国での映画撮影時のエピソードを披露。共演した俳優ユ・ジェミョン氏が、安い宿や質素な食事という過酷な環境下で朝から晩まで努力する日本のスタッフに感動し 、夕食を振る舞ってくれたという。松重は「30年前にイギリスで芝居をした頃と比べ、日本が経済力でお金のことでもアジアの中で置いていかれていると痛感している 」と語り、スタッフの金銭的な待遇や現場環境をアジア周辺国と遜色のないレベルまで引き上げるため、先輩世代が声を上げなければならないと強く訴えかけた。
出汁の文化と「いいとこ取り」の美學 「自慢できる食文化がない」というオランダなど欧州からの視点に対し、日本の食文化の魅力を問われた松重は、フランス・パリでの経験を交えながら「出汁(だし)」の文化を挙げた。エビや肉といった主役の具材だけでなく、何から出汁をとっているかという「隠された部分の豊かさ」こそが日本の食を支えていると説明。ニンニクや唐辛子を多用しない日本人が、駅前に多く見られるカレー店のように、海外のスパイス文化を「いいとこ取り」して独自の文化へと昇華させる感覚は素晴らしいと語った。
私生活での苦悩と、五郎の「マージン」の謎 私生活の食事について問われると、以前は一人で飲食店に入るのが好きだったが、現在は気づかれて 過剰なサービスを受けることが多いため、顔を隠して行くのも恥ずかしく、 「夫婦二人で美味しいものを食べ歩くことが唯一の楽しみだ」と苦笑まじりに明かした。
また、主人公・五郎の収入源についても言及。先週放送の西麻布の回を例に、「電気屋のおじさんから孫のおもちゃを運ぶ仕事を頼まれただけだったが、そのマージンであの夕食が食べられるのかは私自身も謎」と笑いを誘いつつ、「個人貿易商として、たまに大きな仕事を取ってきていると想像するしかない」と語った。
2代目への継承と「ハリウッド版」へのジョーク 将来の番組の引き継ぎについては、体を壊さない方法を若手スタッフと模索しながら 、「次の2代目に譲る道筋を作らなければならない」と言及。もしハリウッド版を制作するなら、「ニコラス・ケイジが断った場合は、ジョージ・クルーニーにお願いしたい」と冗談を飛ばした。
最後に、シーズン12があればFCCJのメインバーや寿司店でのロケも検討したいと意欲を見せ、詰めかけた記者の前で10秒間だけ井之頭五郎に戻り、お馴染みの名セリフ「腹が減った」を披露し、 会見を締めくくった。
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