トップ ニュース マスク氏の「テラファブ」構想、TSMCへの挑戦となるか テスラが台湾で半導体人材の採用強化
マスク氏の「テラファブ」構想、TSMCへの挑戦となるか テスラが台湾で半導体人材の採用強化 16日の決算説明会で好業績を発表したTSMC。(写真/中央社提供)
米EV大手テスラのイーロン・マスク氏が構想するとされる大規模半導体プロジェクト「テラファブ(Terafab)」が、半導体受託製造(ファウンドリ)最大手TSMCにとって新たな競争要因となるのか、市場の関心が高まっている。テスラが台湾で先端半導体人材の採用を進めていることも、その動きを裏付ける材料として注目されている。
台湾の著名な経済評論家で、財信伝媒グループ会長の謝金河氏は16日夜、自身のフェイスブックに「技術の定着には長期にわたる鍛錬が必要」と題する投稿を掲載した。TSMCの好調な決算を分析したうえで、同社の成功は決して一朝一夕に築かれたものではないと強調。そのうえで、テスラの「テラファブ」構想がTSMCにもたらす可能性のある挑戦についても言及した。
「テラファブ」とは何か テスラは台湾で採用強化 「テラファブ(Terafab) 」は、テスラやスペースXが関与するとされる大規模な半導体製造構想だ。米テキサス州で、半導体の設計から製造、パッケージング、テストまでを一貫して手がける垂直統合型工場の建設を目指す構想とされ、一部ではインテルの関与も取り沙汰されている。
マスク氏は今年3月、AI、ロボット、自動運転、宇宙開発向けの計算需要に対応するため、年間1テラワット(TW)級の演算能力を供給する目標を掲げた。
注目されているのが、テスラが台湾でエンジニア採用を強化している点だ。半導体や先端プロセス分野の人材が対象とみられ、「テラファブ」構想に向けた布石との見方も出ている。テスラの採用情報や海外報道によると、台北市や新竹地区で、シリコンチップのプロセス統合エンジニアやモジュール・プロセス・エンジニアなど、複数の重要職種を募集している。一部の職種では、7ナノメートル(nm)以下、さらには2ナノ世代の経験を求めており、先端工程の経験者を強く意識した募集内容となっている。
テスラは台湾で半導体専門人材の採用を開始した。(写真:AP通信)
TSMC会長は「近道はない」と冷静姿勢 謝氏は投稿の中で、TSMCが発表した2026年1〜3月期決算について、純利益5724.8億台湾ドル、1株当たり利益(EPS)22.08台湾ドル、粗利益率66.4%と高水準の内容だったと評価した。また、通年ベースでEPS100台湾ドルに到達する可能性もあるとの見方を示した。さらに、同社の魏哲家(C.C. Wei)会長が米誌『TIME』の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれたことにも触れた。
一方で謝氏は、マスク氏が2ナノ世代の半導体工場でもハンバーガーを食べたり葉巻を吸ったりできるといった趣旨の発言をしている点に触れ、従来のクリーンルームの常識を覆そうとする発想にも映ると分析。そのうえで、マスク氏は創造性に富む人物であり、そうした可能性を完全に否定することはできないとも述べた。
専門家は慎重姿勢 「実現には時間が必要」 もっとも、謝氏は専門家の見解を引きながら、短期的な実現可能性には慎重な見方を示した。半導体技術の専門家である曲建仲博士は「実現は不可能に近い」と指摘し、比較的楽観的な専門家であっても「相当な時間が必要」との見解を示しているという。
こうしたマスク氏の大胆な構想について、謝氏は日本のRapidus(ラピダス)の小池淳義CEOが打ち出した「月面でのチップ生産」構想にも言及し、いずれも実現には長い時間を要するとの見方を示した。
TSMCの強さは一朝一夕では築けない 謝氏は最後に、TSMCの現在の競争力は、数十年にわたる地道な積み重ねと、先人たちの絶え間ない努力の結果だと総括した。それは、アップル創業者のスティーブ・ジョブズ氏が築いた基盤がなければ、今日のアップルの優位もなかったのと同じだと指摘した。
また、テラファブ構想をめぐる期待感を背景にインテル株が上昇したことについて、少なくともインテルがTSMCの背中を視界に捉え始めたとの見方も示した。ただし、マスク氏の半導体工場が短期間で完成することはないだろうとし、今年の焦点はスペースXにあり、今後予定されるIPOをめぐってマスク氏は多忙になるとの見通しを示した。その中で、台湾サプライヤーも重要な役割を担うことになるだろうと締めくくった。
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