【張瀞文コラム】インテルとTSMCに大差がある中、なぜマスクは「テラファブ」を進めるのか

2026-04-10 19:11
米テスラ最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスク氏が主導する半導体工場「Terafab(テラファブ)」計画。同計画は、マスク氏が率いるスペースX、xAI、テスラと共同で年間1TBの演算能力推進を目指す。(写真:AP通信)
米テスラ最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスク氏が主導する半導体工場「Terafab(テラファブ)」計画。同計画は、マスク氏が率いるスペースX、xAI、テスラと共同で年間1TBの演算能力推進を目指す。(写真:AP通信)

4月7日、トランプ大統領とイランが激しい舌戦を繰り広げ、世界の耳目は世界経済の生命線である石油を握る中東・ホルムズ海峡に注がれていた。しかし、地球の反対側でも、さほど注目はされなかったが重大な出来事が起きていた。インテルが、テスラCEOのイーロン・マスク氏が主導する巨大ウェハファブ計画「Terafab(テラファブ)」への参画を表明したのだ。

このプロジェクトは、マスク氏傘下のSpaceX、xAI、テスラと共同で、AIやロボティクスの進化を見据えて年間1TB(テラバイト)の演算能力の実現を推進するものだ。このニュースを受け、台積電(TSMC)の株価は続伸し、インテルも4%以上の大幅高を記録した。

もっとも、多くの人々はマスク氏のこの動きを冷ややかに見ている。エヌビディア(NVIDIA)のジェンスン・ファンCEOも「工場建設は容易ではない」と断言する。そもそも半導体製造は現在の米国の強みではなく、製造コストも極めて高い。その上、インテルとTSMCの先端プロセスにおける技術格差はあまりにも巨大だ。この計画は、端から見れば「無謀な賭け」にしか映らない。

「合従」戦略 二番手を結集し、TSMCの覇権を切り崩す

​しかし、視点を少し高く移せば、全く異なる景色が見えてくる。

今回の動きは、マスク氏がTSMCに対して真っ向から「直球勝負」を挑んだというよりは、むしろ典型的な「合従(がっしょう)」戦術に近い。

中国の戦国時代、強大な「秦」に対し、弱小国が同盟を組んで対抗したのが「合従」であり、逆に強国が個々の弱小国を抱き込み、各個撃破を狙うのが「連衡(れんこう)」である。合従の本質は、「弱者が手を取り合い、最強の存在を削り取ること」にある。現代のファウンドリ(半導体受託製造)業界に当てはめるなら、TSMCこそがその「最強の秦」に他ならない。

ファウンドリ産業の二層構造 先端プロセスで独走するTSMC

​世界の半導体受託製造(ファウンドリ)市場の勢力図を広げると、大きく「先端プロセス」と「成熟プロセス」の二層に分かれる。このうち、AI(人工知能)に不可欠な「先端プロセス(7nm以下、さらには3nm級)」の領域で、実際に戦える企業は世界でわずか3〜5社に絞られる。

TSMCはこの分野において、市場シェア7割を超える圧倒的なリーダーであり、莫大な利益を享受している。サムスン電子(Samsung)がその後を追い、インテル・ファウンドリ(Intel Foundry Services)が猛追を試みているが、グローバルファウンドリーズ(GlobalFoundries)は既に最先端領域からの撤退を余儀なくされた。 (関連記事: AIが招く大量失職の危機、OpenAIが「富裕層課税」を提言 ビル・ゲイツ氏の「ロボット税」が再浮上 関連記事をもっと読む

一方、車載用IC、電源IC、MCU(マイコン)などの主流電子製品を支える「成熟プロセス(28nm、40nm、90nmなど)」の領域には、聯電(UMC)、中芯国際(SMIC)、華虹(Hua Hong)、タワーセミコンダクター(Tower Semiconductor)、力積電(PSMC)など約15〜25社がひしめき合っている。この層は市場規模こそ巨大だが、利益率は先端プロセスに遠く及ばない。

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