トップ ニュース AIが招く大量失職の危機、OpenAIが「富裕層課税」を提言 ビル・ゲイツ氏の「ロボット税」が再浮上
AIが招く大量失職の危機、OpenAIが「富裕層課税」を提言 ビル・ゲイツ氏の「ロボット税」が再浮上 ポップコーンを作るテスラのヒューマノイドロボット。(AP通信)
対話型AI「ChatGPT」を開発する米OpenAIは、将来的なAI技術の普及に伴う大規模な失職危機の可能性を指摘し、各国政府が既存の税制を調整する必要があるとの見解を示した。具体的には、従来の個人所得税を中心とした体系から、富裕層への課税を中心とした仕組みへの転換を提言している。
英紙『テレグラフ』が報じたOpenAIの見解を引用し 、失業者の増大によって従来の個人所得税収入が著しく浸食された場合、政府は株式や不動産の売却益、および企業利益に対する課税を強化すべきだという。これにより既存の財源を確保し、国家財政の破綻を回避する狙いがある。同社はまた、自動化された労働力に対して課税する「ロボット税」の導入や、給与を維持したままでの「週4日勤務制」の導入についても検討を呼びかけている。
労働力への課税モデルが崩壊の危機に OpenAIが発表した政策白書では、「AIの発展は人類社会の労働と生産モデルを根本から再構築し、経済活動の構成に劇的な変化をもたらすだろう」と分析されている。同書によれば、今後、企業利益とキャピタルゲインが大幅に拡大する一方で、国家の労働所得や給与税への依存度は低下するという。
この転換は、初期段階において社会福祉プログラムを支える現在の税収基盤を浸食し、セーフティーネットを崩壊させるリスクを孕んでいる。そのため、「税制はこうしたシステムを長期的かつ持続可能なものにするために、時代に合わせて調整されなければならない」と強調している。
さらに同社は、政府が資本所得への依存度を高めることで税基盤を再構築することを提案している。例えば、富裕層に対するキャピタルゲイン税の引き上げや法人税の増税、あるいはAI駆動型の収益項目に特化した課税などが、新たな国家財政の財源として挙げられている。
米ボストンで2023年3月21日、パソコンの画面に表示されたChatGPTの回答と、その手前にあるスマートフォンに映し出されたOpenAIのロゴ。(AP通信)
英国の事例、労働課税への高い依存度 英国を例にとると、個人所得税と国民保険(National Insurance)の拠出金は政府の最大の収入源であり、総税収の42%を占める 。これに対し、株式や不動産の売却益に対する課税、印紙税、相続税の合計はわずか4%にとどまり、法人税や特定業種への課税を含む会社税も9.5%という構成になっている。
ここで言及されているキャピタルゲイン税(譲渡所得税)とは、資産を売却して利益が確定した際に課される税金 であり、その大部分は経済的に余裕のある市民が負担している。
OpenAIのサム・アルトマンCEOは、AIの急速な台頭により、既存の職種が完全に消滅する可能性を繰り返し警告してきた。競合他社であるアンソロピック(Anthropic)のダリオ・アモデイCEOも、今後5年以内にエントリーレベルのホワイトカラー職の最大半分が完全に淘汰される可能性があるとの見解を示している。
OpenAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)。 その一方で、AIブームの恩恵を受け、企業の時価総額は過去最高を更新し続けている。米S&P500指数は、過去1年間で30%もの大幅な上昇を記録した。
AI経済の「配当」を全市民で共有する構想 OpenAIは各国政府に対し、ノルウェーやサウジアラビアが運用する政府系ファンドをモデルとした「パブリックウェルスファンド(Public wealth funds) 」の設立を提案している。このファンド を通じてAI企業やそのサプライチェーンに投資することで、AIが駆動する経済成長の恩恵(配当)を、すべての国民が享受できるようにすべきだという考えだ。
また、引き続き雇用が維持される労働者については、企業がAI活用によって得た巨額な利益を「労働時間の短縮」や「福利厚生の改善」に充てるべきだとOpenAIは主張している 。
広がる不信感と電力消費への懸念 しかし、OpenAIの楽観的な提言とは裏腹に、雇用への脅威に加え、消費電力の大きいデータセンターが次々と建設されている現状を受け、大衆のAIに対する視線は警戒心と不信感を強めている。
政府の労働政策や米国の関税政策に抗議し、デモ行進を行う韓国の労働組合員ら=2025年11月8日。(AP通信) 英紙『テレグラフ』の調査によると、AIに対して肯定的な見解を持つ英国人はわずか25%にとどまり、38%が否定的な見解を示した。また米国では、50%の市民がAIに対して「期待よりも懸念が上回る」と回答しており、「懸念よりも期待が上回る」としたのはわずか10%にすぎなかった。
AIによる雇用ショックをどう緩和すべきか AIの普及による所得税収の減少を受け、付加価値税(VAT/消費税)などの消費課税が、各国の税収不足を補う主要な財源になる可能性が複数の研究で指摘されている 。
米バージニア大学が2025年に行った研究によれば、世界経済はまず「ポスト労働経済(post-labour economy)」へと移行するという。この段階では、個人所得税に代わり、付加価値税やデジタルサービス税が税収の柱となる。その後、さらに「汎用人工知能(AGI)」経済の時代へと進むと、データセンターやロボットそのものが主要な課税対象になると予測されている。
また、国際通貨基金(IMF)は、解雇の波を抑制するための施策として、労働者の税負担を軽減する「所得税控除」の導入や、人間を継続して雇用する企業に対する税額控除の提供などを提言している。
OpenAIが開発した生成AI「ChatGPT」のメインインターフェース。(AP通信)
再び脚光を浴びる「ロボット税」 実際、ロボットや自動化技術によって労働力を代替する企業への課税は、以前から政策立案者の間で議論されてきた。米マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツ氏は早くから「ロボット税」の構想を提唱していたが、2017年に欧州連合(EU)で否決された経緯がある。しかし、AIがかつてないほど高度化した2026年、このアイデアが再び現実的な議論として浮上している。
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