【印永翔コラム】原油高騰の背景:2つの戦争から読み解く異なる経済ロジック

2026-04-09 19:37
高騰を続ける原油価格を背景に、ガソリンスタンドに殺到し燃料を買いだめするパキスタンのオートバイ運転手ら(資料写真、AP通信)
高騰を続ける原油価格を背景に、ガソリンスタンドに殺到し燃料を買いだめするパキスタンのオートバイ運転手ら(資料写真、AP通信)

本稿では、2022年のロシアによるウクライナ侵攻と2026年に想定される米イラン衝突を比較し、原油価格高騰の背後にある二つの異なるメカニズムを解説する。前者は制裁に伴う供給の再配分であり、ロシア産原油が中国やインドへシフトすることで市場は調整を経て徐々に安定を取り戻した。一方、後者はペルシャ湾の輸送リスクに起因し、原油高が高止まりする構造となっている。理論上、原油価格は市場の先行き不透明感を反映するだけでなく、すでに実体経済への影響を及ぼし始めている可能性が指摘されている。インフレ率が高止まりし、政策余地が限られる中、原油価格が下落しなければ経済的圧力は次第に蓄積していくとみられる。

世界で日量1億バレルを消費、鍵を握る「限界的な変動」

世界経済を維持するためには、毎日約1億バレルの原油が必要だ。そのうち米国が約20%、中国が約15%、欧州が10~15%を占めている。規模から見れば極めて巨大な市場であり、1日の現物取引額は約100億ドルに上る。

しかし、実際の原油価格を決定づけるのは、この総量ではなく「限界的な変動(マージナルな変化)」である。これほど巨大な基数を持つシステムにおいては、需給にわずか1~2%の変動が生じるだけで日量数百万バレルの不足または供給過剰となり、価格の急激な乱高下を引き起こす。そのため、原油価格の変動は往々にして線形ではなく、リスクや不確実性に対する急速な反応として表れる。

二つの紛争、異なる価格推移

2022年のロシアによるウクライナ侵攻と、2026年に想定される米国とイランの軍事衝突を比較すると、重要な差異が浮かび上がる。いずれも原油価格の上昇を招いているが、市場の反応メカニズムは異なる。ウクライナ侵攻勃発後、原油価格は1バレル=101.29ドルから1カ月で115.59ドルへと約14%上昇した(図の第1グレー部分)。短期的な変動は激しかったものの、その後約4カ月かけて徐々に安定した。これは市場が動揺を経たのち、供給網の再編を通じて新たな均衡点を見出したことを反映している。

対照的に、2026年の米イラン衝突では、わずか1カ月で原油価格が71.32ドルから121.88ドルへと高騰し、その上昇率は71%に達した。現時点でも明確な下落傾向は見られない(図の第2グレー部分)。初期の上昇率を比較すると、2022年の初月が2割未満であったのに対し、2026年は7割を超えており、市場がリスクと不確実性に対してより激しく反応していることが伺える。 (関連記事: トランプ氏「ヒズボラは停戦対象外」 イラン反発、ホルムズ海峡の通航停止を警告 関連記事をもっと読む

国立台湾師範大学・印永翔教授作成(出所:米セントルイス連邦準備銀行)
国立台湾師範大学・印永翔教授作成(出所:米セントルイス連邦準備銀行)

決定的な違い:原油が「出ない」か、「行き先が変わる」か

両紛争の根本的な違いは、供給ショックの震源にある。ロシアは世界トップ3の産油国であり、2022年のウクライナ侵攻は典型的な「供給国ショック」であった。欧米は制裁下でロシア産原油の輸入を停止したが、原油自体が市場から消失したわけではなく、割引価格で中国やインドへと振り向けられた。同時に、欧州は中東や米国からのエネルギー輸入へと切り替えた。これはグローバルなエネルギー供給網の再配置であり、原油高の主な要因は移行過程における摩擦と不確実性にあった。

最新ニュース
米・イスラエルがイランに勝てぬ理由、専門家が指摘するトランプ氏の傲慢と常識の欠如
AIによる職業消失! OpenAI、政府に富裕層資本への増税を提案。ビル・ゲイツの「ロボット税」が再び注目される。
HY結成25周年記念ライブの東京ガーデンシアター公演、U-NEXTで4月12日に独占配信決定
藤原さくら、初の日本武道館公演をU-NEXTで独占配信決定 デビュー10周年の集大成を3月29日に公開
「最もフェス感のあるラン」が味の素スタジアムに!「TOKYO ROKUTAI FES 2026」10月開催決定
「音の交差点」を六本木で体験 STUTSがオーガナイザーを務めるフリーライブ『TOKYO M.A.P.S』がGWに幕開け
充電の不安から地球人を解放せよ!「ChargeSPOT」初の公式キャラクター「Chapopo(チャポポ)」が誕生
「酷暑」を制する者が勝利を制す スポーツ界の喫緊課題に応える「第1回 熱中症・暑さ対策ワールド」が初開催
オークウッド大井町トラックス東京、2026年6月に開業へ 30泊以上の長期滞在に特化
日本初「ヒューマノイドロボット EXPO」が始動 次世代技術の総合展「NexTech Week 2026 春」4月15日より開幕
トランプ氏「ヒズボラは停戦対象外」 イラン反発、ホルムズ海峡の通航停止を警告
第28回インターフェックスWeek東京、5月に幕張メッセで開催決定 新設展を含む過去最大規模へ
森のビアガーデンが4月22日オープン!クラフトビール4種&本格BBQを楽しむプレミアムプランに注目
六本木ヒルズのGW恒例フリーライブ「TOKYO M.A.P.S」開催決定 オーガナイザーはSTUTSに
トランプ米大統領、イランへの兵器供給国に50%関税を表明
U-NEXT、TWICE国立競技場公演の独占生配信を記念し、会場チケットが当たるプレゼントキャンペーンを開始
パリ・サンジェルマン、渋谷に体験型ポップアップを限定オープン 「パリ×東京」が融合した没入型空間
信義房屋不動産、愛犬との暮らしをサポートする「渋谷区版 Google マイマップ」を公開
ロイヤルホスト デリ、母の日に「ゆっくり過ごす時間」を贈る限定ギフトセットを4月14日より発売
中国が黄海で実弾射撃 国民党・鄭麗文主席の訪中に水差す、民進党は「実力なき平和は幻想」
ムーミン アラビア、新サマーコレクション「リビエラ」始動!第一章「ホリデーラッシュ」5月6日より世界限定発売 日本限定マグも登場
訪中の国民党・鄭麗文氏、上海市党委員会書記の陳吉寧氏と会談 「国家統一」にも言及
世界最大級のヒト型ロボット国際会議「Humanoids Summit Tokyo 2026」が高輪で5月開催決定 アジア初上陸へ
CRAFT SAKE WEEK 2026、幻のチョコ「YOIYO × 黒龍酒造」が会場限定で復活
「ひこにゃん」誕生20周年を「トゥンクトゥンク」がお祝い!公式コラボ決定、商品販売やイベントも
東京駅グランスタ店長101人が選ぶ「ガチ推し弁当」ベスト10発表 1位はロケ弁の王道「オーベルジーヌ」
三菱地所、スマートホーム事業「HOMETACT」を分社化 「住みごこちDX」で不動産価値の向上へ
米・イラン停戦、パキスタン協議を前に暗雲 レバノン猛爆で「認識のズレ」露呈、ホルムズ海峡の封鎖続く
菅田将暉、1月のガーデンシアター公演をU-NEXTで独占配信 「虹」「さよならエレジー」など代表曲も
【独占インタビュー】AIが人類の思考を支配するか ノーベル賞エドバルド・モーザー教授が示す2つのシナリオ
台湾・頼総統、海軍計画処長に宋振亜氏を抜擢 米軍との実務に通じた将官
【2026年4月施行開始】不動産登記の新制度に注意 住所・氏名変更の未申請で5万円の過料も
台湾発便、モバイルバッテリー持ち込みを2個までに制限 機内充電禁止、違反に罰金も
トランプ氏は「黄金時代」、イランは「米国敗北」主張 停戦下で激化する認知戦
【深層】米軍、イラン山岳地帯でF-15E搭乗員を救出 1980年「イーグルクロー作戦」の記憶再び
麻布台ヒルズ、GWイベント「FAMILY GREEN アトリエ 特別編」を開催 中央広場で「100のあそびと表現」を体験
2026年「第26回 マーケティング Week 春」東京ビッグサイトで開催へ 生成AIやVTuber活用など300社が集結
国民党・鄭麗文主席、南京の中山陵を参拝 「民国」年号で「平和の種」への思い語る
【独占】2度のバイアウトを経てFIRE達成、台湾出身のシリアルアントレプレナー・Vanessa Pan氏が語る「日本で起業するリアル」
JR東日本クロスステーションと千代田区、地域経済活性化に向けた基本協定を締結
宋濤氏、鄭麗文氏訪中初日に歓迎夕食会 3つの期待提示も「統一」言及せず
プロダンスチームSEGA SAMMY LUX直営「STUDIO LUX」4月1日にグランドオープン
西武鉄道、新型レストラン列車「vies」を2028年3月より運行開始 名称とロゴデザインを発表
渋谷に沖縄の「結」が誕生 創作沖縄料理店「ゆいゆいさ~」がオープン
東京駅に「福島の地酒」を五感で楽しむBARが登場 漫画で巡る酒蔵体験や希少銘柄の直売も
次世代戦闘機GCAP、英国の予算遅延に日本側が懸念表明 開発資金枯渇の恐れも
鄭麗文・国民党主席が訪中 同行の元国家安全会議秘書長、民進党の対立路線を批判