第一生命経済研・永濱利廣氏「2026年はデフレ脱却完遂の年」 実質賃金プラス定着、日経平均5.7万円も視野
永濱氏は2026年をデフレ脱却の完遂と位置づけ、供給力強化による成長戦略と実質賃金プラスの実現により、日本経済が新たなステージへ移行すると展望した。(写真/日本記者クラブ提供)
高市内閣の経済財政諮問会議で民間議員を務める第一生命経済研究所の永濱利廣首席エコノミストは30日、日本記者クラブで「2026年経済展望 インフレ経済がもたらす構造転換」と題して講演を行った。永濱氏は、2026年の日本経済について、長年続いたデフレからの脱却を完遂し、実質賃金が安定的にプラスとなる「構造転換の年」になるとの見通しを示した。
永濱氏は今年の経済見通しの最大のポイントとして「脱デフレの完遂」を挙げた。春闘の賃上げ率は3年連続で5%を超える可能性が高く、ボーナスを含めた名目賃金の伸びがインフレ率を上回ることで、家計の購買力が向上すると分析した。消費者物価指数(CPI)については、昨年の物価上昇の主因であった米類などの食料品価格の上昇が鈍化することに加え、政府の物価高対策の効果もあり、インフレ率は2%を下回る水準まで落ち着くと予測した。実質賃金のプラス転換により、個人消費は昨年以上に底堅く推移するとの見方を示した。
金融政策に関しては、日銀がすでに利上げ局面に入っているとし、現在0.75%の政策金利は、中立金利(1%〜2.5%と推計)に向けて年内に少なくとも1回以上の追加利上げが行われる公算が大きいと指摘した。為替相場については、日米金利差の縮小だけでは説明できない構造的な円売り需要(日本企業の対外直接投資など)が存在することを背景に、極端な円高には振れず、1ドル=150円台を中心としたレンジで推移すると予測した。また、過去のトランプ政権時の関税政策導入後の為替動向を例に挙げ、米国経済の減速や利下げ観測が高まらない限り、大幅なドル安円高は進みにくいとの見解を示した。
株式市場については、名目GDPの拡大と長期金利の上昇に基づき算出される理論株価から、日経平均株価は5万円台での値固めが進むと試算した。企業業績は、名目経済成長率が3%台半ばで推移すれば増益基調が維持されるとし、2026年度にかけて5万7000円台への上昇も視野に入るとの強気な見通しを示した。一方で、高市政権の財政運営に対する債券・為替市場の警戒感が一部にあることにも触れ、丁寧な情報発信と実績の積み上げが必要であるとした。
永濱氏は、高市政権が掲げる経済政策「サナエノミクス」について、アベノミクスが需要不足を解消するリフレ政策であったのに対し、サナエノミクスは「供給力不足の解消」を目指す政策であると明確に区別した。具体的には、AI・半導体、造船、宇宙、海洋など17分野への「成長投資・危機管理投資」を通じて国内の資本蓄積を促し、労働生産性を高めることが狙いだと解説した。財政規律については、単年度主義を排し、政府債務残高対GDP比の低下を目標とする「責任ある積極財政」であり、無秩序な拡張財政(エクスパンショナリー)ではなく、先制的(プロアクティブ)な投資を行うものだと強調した。
質疑応答で消費税減税の是非について問われた永濱氏は、かつては逆進性対策として食料品税率の引き下げを支持していたものの、現在は賃上げ基調や高市政権下での給付金や控除見直しなどの政策手段があるため、以前ほど減税の必要性は高くないとの認識を示した。また、仮に期限付きの減税を行う場合、財源の確保やシステム対応、期間終了後の税率引き上げの政治的ハードルが高いと指摘した。最後に永濱氏は、ゲストブックに「供給力強化」と記し、世界的な経済安全保障の潮流の中で、日本経済が成長を持続させるためには供給サイドの強化が不可欠であると結んだ。
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