トップ ニュース トランプ流「最大限の圧力」が奏功か インドがロシア産原油放棄、関税18%と引き換えに5000億ドルの「買い物」約束
トランプ流「最大限の圧力」が奏功か インドがロシア産原油放棄、関税18%と引き換えに5000億ドルの「買い物」約束 2025年2月13日、ホワイトハウスのイーストルームで共同記者会見を行う米国のドナルド・トランプ大統領とインドのナレンドラ・モディ首相。(写真/AP通信提供)
トランプ米大統領はインドに対する懲罰的関税を50%から18%へと大幅に引き下げると発表した。これに対し、インドのモディ政権はロシア産原油への依存を断ち切り、米国およびベネズエラ産のエネルギー購入へと舵を切ることに同意した。「戦略的自律」と「米国第一主義(アメリカ・ファースト)」の間で揺れ動いたモディ首相のバランス外交は、ここにきて地政学上の重大な転換点を迎え、世界のエネルギー供給網(サプライチェーン)を再編しようとしている。しかし、5000億ドル(約75兆円)にも及ぶ巨額の調達公約は、果たして「ウィンウィン」の経済協力なのか、それとも糖衣に包まれた政治的脅迫なのだろうか。
50%の関税障壁と「踏み絵」 数ヶ月にわたる一触即発の貿易摩擦と外交的駆け引きの末、ドナルド・トランプ米大統領とインドのナレンドラ・モディ首相は2日、ついに手打ち式を行った。SNSを通じて発表されたこの大型貿易協定は、トランプ氏の地政学ゲームにおける新たな「取引(ディール)的」勝利を象徴している。米国はインドに課していた高額な懲罰的関税を撤回し、税率を50%から18%へ引き下げることに同意した。その交換条件としてニューデリーが差し出した「踏み絵」は、クレムリンの戦争遂行能力を支えてきたロシア産原油の購入停止である。
トランプ氏は自身のSNSプラットフォーム「トゥルース・ソーシャル(Truth Social)」で、インドが米国産エネルギーの購入に転換することを高らかに宣言した。その対象には、米軍の軍事介入により政変が起きたベネズエラ産の原油も含まれる。 「モディ首相への友情と敬意を表し、また彼の要請に応え、我々は米印間の貿易協定に即時合意した。米国は引き下げられた『相互関税(Reciprocal Tariff)』を適用し、税率を25%から18%へと変更する」
「親友」から「搾取者」へ、急変した対印姿勢
ロシア産原油の「安値買い」に終止符 あるホワイトハウス高官がロイターに語ったところによると、今回の合意の核心は、ロシア産原油購入に対する報復措置であった25%の懲罰的関税の撤廃にある。50%から18%への引き下げは大幅な譲歩に見えるが、トランプ氏就任前の2024年時点での平均関税率がわずか2〜3%程度であったことを鑑みれば、インドは依然として著しく高い貿易ハードルに直面していることになる。
これまでインドは、ロシア産海上輸送原油の最大顧客として、西側の制裁による値引きを利用し、国内需要の90%を賄う安価なエネルギーを調達してきた。しかし、この「全方位外交(等距離外交)」的な戦略は、西側諸国からはウラジーミル・プーチンの戦争機械への資金提供に他ならないと見なされてきた。
マドゥロ拘束後のベネズエラ石油、供給網へ再統合 合意に基づき、インドはエネルギー調達先を米国へと切り替える。ここで興味深いのは、トランプ氏が特に「ベネズエラ」に言及した点だ。今年1月、米軍がベネズエラの独裁者ニコラス・マドゥロ氏を拘束したことで、カリブ海のエネルギー情勢は劇的に変化した。コンサルティング会社クリアビュー・エナジー・パートナーズのケビン・ブック氏はFTに対し、「合意文書の詳細が不明なため慎重を要するが、『潜在的(potentially)』にベネズエラ産石油を購入するという表現には、政治的な操作の余地が多分に含まれている」と分析する。
ワシントンは現在、インドがロシア産原油を手放した後の供給ギャップを埋めるため、米国主導のサプライチェーンにベネズエラの石油生産能力を再統合しようと試みている。実際、ロイター通信のデータによれば、インドはすでに対露調達の縮小を開始している。今年1月の日量約120万バレルから、2月には100万バレル、3月には80万バレルまで減少する見通しだ。
5000億ドルの約束と「ゼロ関税」の夢 トランプ氏は声明の中で、モディ氏がロシア産原油の購入停止に加え、「バイ・アメリカン(米国製品購入)」政策をより高い水準で実行することに同意したと興奮気味に発表した。その規模は、エネルギー(石炭含む)、テクノロジー、農産物を含め5000億ドル(約75兆円)超に達するとされる。さらにトランプ氏は、インドが対米関税および非関税障壁を将来的に「ゼロ」に引き下げることに尽力すると豪語したが、経済専門家からはこれらの数字に対し、強い疑念の声が上がっている。
シンクタンク「ブリッジ・インディア」創設者のプラティック・ダッタニ氏は英フィナンシャル・タイムズ(FT)に対し、この数字は誇張どころか「天方夜譚(アラビアンナイトのようなおとぎ話)」だと断じた。2024年の米印二国間貿易総額はわずか2120億ドルであり、そのうちインドによる米国製品購入額は415億ドルに過ぎない。「トランプ氏が物品貿易のみを指しているのであれば、この数字が5000億ドルに急増することはあり得ない」とダッタニ氏は指摘する。
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パリのジャック・ドロール研究所の通商・経済安全保障顧問、ニコラス・ケーラー・スズキ氏もまた、「ゼロ関税」は実現不可能だと見る。「ドーハ・ラウンド以来のインドの一貫した保護主義的な立場、特に慎重な扱いを要する農産品分野を考慮すれば、インドが関税撤廃に同意する可能性は極めて低い」と分析した。
インド市場は沸騰、モディ氏も「親愛なる友」と称賛 専門家の冷ややかな視線をよそに、関税戦争に苦しんできたインド市場にとって、このニュースが強力なカンフル剤となったことは間違いない。合意の報を受け、米国市場に上場するインド関連株(ADR)は全面高となった。IT大手インフォシスは4.3%、ウィプロは6.8%、HDFC銀行は4.4%上昇し、iシェアーズMSCIインドETFも3%値を上げた。
モディ氏はX(旧Twitter)で即座に反応した。「今日、親愛なる友人トランプ大統領と話せて嬉しい……14億人のインド国民を代表し、トランプ大統領に最大限の感謝を捧げる」。インドのピユシュ・ゴヤル商工相も、この協定がインド企業に米国技術をもたらす「かつてない機会」を解き放つものだと手放しで称賛した。
エムケイ・グローバル(Emkay Global)のエコノミスト、マドハヴィ・アロラ氏は、この取引によってインドの関税率(15〜19%)がアジアの競合国と「概ね一致」する水準になり、輸出競争力やルピー相場への重石を取り除く助けになると指摘する。アジア・グループの常務理事バサント・サンゲラ氏は「インドの忍耐が報われた。少なくとも今のところは」とコメントした。
米産業界の分断 大企業の楽観、中小企業の苦境 一方、米国内ではこの合意に対し、賛否が真っ二つに割れている。 自由貿易を長期にわたり提唱してきた全米商工会議所(USCC)はこれを歓迎した。スザンヌ・クラークCEOは声明で「包括的貿易協定に向けた第一歩であり、さらなる民間部門の協力を解き放つものだと楽観している」と述べた。
しかし、輸入品に依存する米国の中小企業にとっては、別の形の悪夢の始まりだ。800社からなる中小企業連合「ウィー・ペイ・ザ・タリフス(関税を払うのは我々だ)」は、この合意を祝うべきではないと国民に厳しい警告を発した。 同団体は、2024年以前の平均関税率がわずか2〜3%であったことと比較し、今回の合意(18%固定)は実質的に、米国企業に対する「600%の増税」であると主張する。彼らは、本来低かった関税が18%で固定化された上に、もしインドがロシアとの関係を完全に断ち切れなかった場合、この税率がいつでも再び引き上げられるリスクを孕んでいると強調した。
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