米中和解でも「最大の戦場はインド太平洋」 パパロ米司令官が警告、尖閣・台湾への圧力懸念

印パ空中戦で一躍有名となった中国人民解放軍の戦闘機「J-10C」。 (写真/中国国防部公式サイトより)
印パ空中戦で一躍有名となった中国人民解放軍の戦闘機「J-10C」。 (写真/中国国防部公式サイトより)

米インド太平洋軍のサミュエル・パパロ司令官は11日、ホノルルで開催された防衛フォーラムで講演し、米中間の政治的関係が安定に向かっているにもかかわらず、中国政府による地域諸国への軍事圧力が依然として続いていると指摘した。ワシントンと北京の緊張緩和は、台湾海峡や南シナ海における人民解放軍の強硬姿勢を和らげるには至っていない。パパロ氏は、インド太平洋地域こそが米国にとって「最大の脅威となる戦場」であり、引き続き最優先地域であると強調した。

米中和解でも止まない中国の圧力

英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙によると、昨年10月に韓国で行われたトランプ大統領と習近平国家主席の会談以降、米中関係は安定化の兆しを見せている。トランプ氏は閣僚に対し、対中政策の目標を両国関係の安定性重視に転換するよう明確に指示したという。

しかし、パパロ氏は「それが南シナ海や対台湾政策における人民解放軍の軟化を意味するか」と問われると、否定的な見解を示した。「我々は、中国がASEAN加盟国に対して圧力をかけ続けているのを目の当たりにしている」

パパロ氏は「戦略的安定性が米中関係を定義し始めているとはいえ、その安定性は試され続けている。だからこそ、パートナー国との結束が極めて重要だ」と語った。特定の東南アジア諸国を名指しすることは避けたものの、FT紙は、人民解放軍が最近、スカボロー礁(黄岩島)周辺でフィリピンに対し強硬な行動をとっていること、さらに日本の高市早苗首相による「台湾有事」発言が波紋を呼んだ後、尖閣諸島周辺での活動を活発化させていることを強調している。

またFT紙は、中国による日本への圧力に対し、トランプ政権が東京を十分に支援していないとして、高市政権が不満を抱いているとも報じた。

トランプ政権の新戦略と同盟国の懸念

​トランプ政権が昨年12月に発表した新「国家安全保障戦略」では、中国の脅威への関心が低下し、軸足が西半球に移ったかのような印象を与え、一部の同盟国の間で懸念が広がっていた。

これに対しパパロ氏は、ピート・ヘグセス国防長官が「インド太平洋地域は依然として米国の優先事項である」と明言しているとし、同地域が米国にとって「最大の脅威」となり得る戦場であるとの認識を示した。また、米軍によるベネズエラやイランでの軍事行動が、インド太平洋軍の抑止力に影響を与えることはないと強調した。

「そうした作戦によって実際に兵力が引き抜かれたわけではなく、インド太平洋地域で戦い、勝利する我々の能力には実質的な影響は全くない」とパパロ氏は断言した。

バイデン政権時代の高官は「安定重視」に警鐘

​一方で、トランプ氏が強調する米中関係の安定性については、バイデン政権時代の国防当局者から異論も出ている。

元国防次官補(インド太平洋安全保障担当)であり、現在はワシントンのシンクタンク「マラソン・イニシアチブ」に在籍するイーライ・ラトナー氏は、安定性の重視は誤りだと指摘する。

ラトナー氏は次のように警鐘を鳴らした。「中国の戦略は明確だ。米中協力という約束で米国を牽制し、ワシントンと同盟国の間に亀裂を生じさせ、地域を屈服させようとしている。同盟関係よりも米中関係を優先することは、中国に利することになる」

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