米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は12日、トランプ米政権が台湾との貿易協定締結に近づいていると報じた。台湾からの輸入品に対する関税を、日本や韓国と同水準の15%まで引き下げる見通しだ。その見返りとして、半導体受託生産最大手のTSMC(台湾積体電路製造)は、米アリゾナ州での半導体工場増設を確約したという。
TSMC、アリゾナに少なくとも5工場の追加建設へ
事情に詳しい関係者3人がNYTに明かしたところによると、数ヶ月にわたる交渉を経て、早ければ今月中に協定が発表される可能性がある。合意内容には、台湾製品への輸入関税を15%(昨年合意した日韓向け税率と同等)に引き下げることや、TSMCがアリゾナ州に少なくとも5棟の半導体工場を新たに建設することが含まれる。ただし、投資の具体的な時期は現時点で不明確であり、TSMC、米通商代表部(USTR)、米商務省はいずれも本件に関するコメントを控えている。
トランプ政権の交渉戦略と安全保障
NYTによれば、トランプ政権は昨年4月に対等関税の導入を宣言して以来、関税率の引き下げを交渉カードとして利用し、米国の国家安全保障上の優先事項に合致する投資や取引を相手国から引き出してきた。韓国や日本はすでに、造船、原子力、電子機器、重要鉱物などの分野で数千億ドル規模の対米投資を約束している。台湾に対しては、以前から半導体製造への投資拡大を求めていた経緯がある。
地政学的リスクとサプライチェーン
台湾は現在、世界の最先端半導体生産を主導している。しかし、中国政府は台湾を領土の一部と主張しており、テクノロジー業界にとって台湾依存のリスクは高まっている。特に中国による台湾周辺での実弾演習が常態化する中、各国政府や業界幹部は懸念を強めている。万一侵攻が発生すれば、電子機器、自動車、兵器などのグローバルサプライチェーンが寸断される恐れがあるためだ。
TSMCへの圧力と関税の脅威
TSMCは2020年以降、アリゾナ州ですでに第1工場を完工し、第2工場も2028年に稼働予定であるほか、今後数年間でさらに工場の増設を約束していた。今回の米台貿易交渉の枠組みにおいて、TSMCはこれに加え、少なくとも5棟の新工場建設に同意したとされる。
NYTは、半導体への潜在的な関税が台湾およびTSMCにとって直接的な脅威になっていると指摘する。半導体製品は台湾の輸出総額の3分の1以上を占め、中でも最も付加価値の高い先端チップは、世界各地にあるTSMCの20以上の工場で生産されている。
現在、米国政府は台湾からの輸入品に対して20%の関税を課しているが、半導体や多くの電子製品は免除されている。しかし、トランプ政権はこれらの産業に対し、米通商拡大法232条に基づく「国家安全保障上の関税」の適用を示唆してきた。商務省主導の232条調査は昨年開始される予定だったが、中国との貿易休戦協定への悪影響を懸念し、推進が見送られた。台湾側は232条およびTSMCの投資計画について商務省と協議を続けており、米国に投資する企業は232条関税の対象外になると主張しているが、その具体的な運用の仕組みは明らかになっていない。
最高裁判決と交渉の行方
ブルームバーグもその後、独自の情報源から本件を裏付けたが、米台政府は同様にコメントを避けている。同紙は、もし合意に至れば、台湾は日韓と同等の関税率を獲得し、トランプ氏はTSMCの投資確約によって交渉の勝利を再びアピールできると分析する。
しかし、協定の効果や早期合意の実現性には不透明感も残る。米連邦最高裁判所は早ければ14日にも、トランプ氏が進める世界的関税の合法性について判決を下す予定だ。もし最高裁が関税政策を覆せば、トランプ氏は貿易交渉における重要な「梃子(てこ)」を失うことになる。仮に米台が合意したとしても、TSMCが短期間で米国内の生産能力を大幅に拡大できるかどうかは不透明である。
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編集:梅木奈実














































