トップ ニュース トランプ氏のイラン攻撃計画に米軍トップが懸念表明「弾薬庫は空に近い」 長期支援による備蓄枯渇と高リスクを指摘
トランプ氏のイラン攻撃計画に米軍トップが懸念表明「弾薬庫は空に近い」 長期支援による備蓄枯渇と高リスクを指摘 米軍のダン・ケイン統合参謀本部議長(左)とヘグセス国防長官(右)。(写真/AP通信提供)
トランプ米大統領がイランに対する致命的な軍事打撃を画策する中、米軍制服組トップがその前のめりな姿勢に「急ブレーキ」をかけた。米紙『ワシントン・ポスト 』は23日、米軍統合参謀本部議長のダン・ケイン(Dan Caine)大将が、トランプ氏に対し、現時点での開戦は米軍を「極めて高いリスク」にさらすと警告したと報じた。背景には、長期にわたるウクライナおよびイスラエルへの軍事支援による「弾薬不足」と、中東同盟国の協力拒否という冷徹な現実がある。
側近らの前で突きつけられた「兵站の限界」 ケイン氏は、中将で退役した後にトランプ氏によって異例の抜擢を受け、現役復帰とともに統合参謀本部議長(Chairman of the Joint Chiefs of Staff)に就任した経緯を持つ。しかし、いわば「トランプ氏の息がかかった」はずのケイン氏が、バンス副大統領、ルビオ国務長官、ヘグセス国防長官、ミラー白宮顧問ら政権中枢が顔を揃える会議の席で、極めて厄介な現実を直言した。
「大統領、弾薬が足りません。さらに、同盟国も協力に消極的です」
事情に詳しい関係者が同紙に語ったところによると、ケイン氏は、イランに対するいかなる大規模軍事行動も、甚大なロジスティクス(兵站)上のリスクに直面すると主張。米軍はイスラエル防衛(ハマスやヒズボラのロケット弾迎撃)と、ロシアの侵攻に抗うウクライナへの果てしない支援により、重要な弾薬備蓄が深刻な「オーバーエクステンション(過度な拡張・透支)」状態にあるという。
ミサイル在庫の「内憂」: 生産ラインのボトルネック シンクタンク「民主主義防衛財団(FDD)」のライアン・ブロブスト(Ryan Brobst)氏は、イランの弾道ミサイル迎撃に不可欠な「THAAD(サード)」や「パトリオット」ミサイルの在庫不足を指摘する。「米国の年間生産量はわずか数百発に留まり、実際の需要を遥かに下回っている」のが現状だ。
海上においても状況は深刻だ。紅海での商船保護やイスラエル支援のため、米海軍は「スタンダードミサイル(SM-2、SM-3、SM-6)」を大量に消費し続けている。アメリカ企業研究所(AEI)のマッケンジー・イーグレン(Mackenzie Eaglen)氏は、これらのミサイルの複雑な構造と生産ラインの制約により、「代替ミサイルの製造には1発あたり2年以上かかる」と述べる。速効性のある解決策はなく、開戦すれば米軍は「銃はあっても弾がない」窮地に陥りかねない。
湾岸諸国の「外患」:2026年、変わりゆく風向き ある湾岸諸国の高官は同紙に対し、「我々の基地をイラン攻撃のために利用させることは許可しない」と明言。領空通過権(オーバーフライト・ライツ)の付与さえも不透明な状況だという。
トランプ氏は報道を否定、食い違う主張 この独占記事に対し、トランプ氏は自身のSNSで猛反論 を展開した。ケイン氏が「開戦に反対した」とする報道を「完全に誤りだ」とし、同将軍は軍事衝突を望んではいないものの、もし起これば「容易に勝利できる戦争になると考えている」と主張。しかし、関係者によるケイン氏の発言の引用は、トランプ氏の楽観的な描写とは真っ向から対立している。
米ニュースサイト『アクシオス(Axios) 』によると、ケイン氏の見解がトランプ氏に重視される背景には、同氏が指揮した過去の「成功」がある。ケイン氏は昨夏のイラン核施設への攻撃や、今年1月に実施されたベネズエラのマドゥロ大統領拘束作戦において、目覚ましい成果を上げた実績を持つ。関係者は「ケイン氏は大統領のいかなる決定も支持する姿勢は崩していない」としながらも、軍事行動の規模は、トランプ氏が最終的に設定する「打撃目標」によって大きく左右されると指摘している。
仮にトランプ氏がイランの最高指導者ハメネイ師の体制転覆(レジーム・チェンジ)を企図した場合、打撃目標は数千カ所にまで拡大するとの見方がある。『ワシントン・ポスト』が引用した元国防総省高官の分析によれば、革命防衛隊の指揮統制センターや治安機関、ハメネイ師に近い重要施設がその対象となる。このような作戦は数週間から数ヶ月に及ぶ可能性があり、さらなる弾薬の消費はもちろん、米軍に対する激しい報復も避けられない状況となる。
「二正面作戦」への準備不足とトレードオフの懸念 最近まで国防総省に在籍していたカトー研究所の研究員、キャサリン・トンプソン(Katherine Thompson)氏は、現在の米軍の窮状を次のように分析する。「米国は、同時に発生する複数の紛争にリソースを供給する準備ができていない」。同氏は、イランとの長期的な紛争に突入すれば、より優先度の高い国益に対して「重大なトレードオフ(犠牲)」を強いることになると警鐘を鳴らしている。
現在、米国は中東に大規模な打撃戦力を集結させている。トランプ氏はイランに対し、ワシントンに有利な条件での核合意を飲ませるため、「限定的な打撃」も選択肢に入れているとされる。イラン側も合意達成には前向きな姿勢を見せているものの、ウラン濃縮能力を維持するか否かを巡る溝は深く、今週ジュネーブで開催される米イラン代表者による会談が、今後の展開を左右する極めて重要な局面となる。
「報復の連鎖」か「体制転覆」か 米政府内の葛藤 一方で、米政府内の一部当局者は限定的な打撃に対して否定的な見解を示している。中途半端な攻撃は「目には目を」の暴力の連鎖を招き、中東地域の米軍や外交官が報復にさらされるリスクを高めるだけだとの主張だ。彼らはむしろ、政権交代やイラン強硬派勢力の徹底的な制圧こそが理想的な選択肢だと考えている。
トランプ氏の中東特使、魏科夫(スティーブン・ウィトコフ)氏はFOXニュースに対し、差し迫った軍事打撃の脅威がある中で、大統領はなぜイランが未だに米国の要求に「屈服」しないのかを「不思議がっている」と語った。これに対し、イランのアラグチ外相はSNS上で次のように応酬した。
「なぜ我々が降伏しないのか知りたいか? それは、我々がイラン人だからだ」
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