【台湾海軍】ベールに包まれた潜水艦部隊「256戦隊」 国産潜水艦「海鯤」を操るエリートたちの過酷な入隊試験

256戦隊は、自主建造潜水艦「海鯤」を運用する主力部隊である。(写真/顔麟宇撮影)
256戦隊は、自主建造潜水艦「海鯤」を運用する主力部隊である。(写真/顔麟宇撮影)

台湾軍が500億台湾元(約2500億円)を投じて建造した自主建造潜水艦(IDS)「海鯤号」は現在、海上公試(SAT)の段階にある。台湾国際造船(CSBC)や海外の技術者に加え、受領任務を負う「256戦隊」もまた、彼らと共に海鯤号の習熟に注力している。水上艦艦隊と比較して、256戦隊は台湾軍唯一の潜水艦部隊であるが、この「沈黙の艦隊」は潜水艦そのものと同様、外部にはほとんど知られていない。

実のところ、256戦隊は空軍のパイロットと同様、海軍における最優秀層の将兵である。最も厳格な一連の試験を通過し、「人員資格証明(PQS)」を取得して潜水艦き章(ドルフィンマーク)を着用して初めて、一人前の潜水艦乗組員と見なされる。しかし、256戦隊は海鯤号への対応以外にどのような任務を担っているのか。その歴史と現状はいかなるものか。そして潜水艦乗組員となるためには、どのような条件を満たす必要があるのだろうか。

20240226 - 海鯤号潜水艦が26日、海昌工場から中信8号浮ドックへ移動した。写真は現場で視察していたと思われる256戦隊のメンバー。(撮影・顔麟宇氏)
海鯤号潜水艦が初めて中信8号浮ドックへ移動し試験を行った際、現場で視察していたとされる256戦隊のメンバー。(写真/顔麟宇撮影)

256戦隊が抱く優越感と、想像を絶する厳格な試験

海軍256戦隊は、台湾軍において潜水艦作戦を執行する唯一の作戦部隊であり、戦隊長は少将が務める。隷下には実戦用の剣龍級潜水艦2隻、訓練用のガピー級潜水艦2隻を保有している。潜水艦出身の将兵は長期間水中にいるため、性格は「内向的」な者が多いとされるが、優秀かつ孤独に耐えうる資質を持つことから、一種の優越感を抱いている。

この優越感には根拠がある。ある潜水艦退役将官は、「海軍は部隊の純粋性を維持するため、256戦隊の士官はすべて海軍士官学校の正規課程卒業生で構成されている」と指摘する。専門士官班(専科)出身者はおらず、医官や政治将校を除き、全員が海軍士官学校卒であるという。

人員資格についても、海軍士官学校の卒業成績上位3分の1の者だけが志願資格を持つ。当時は約60人が受験し、最終的に選抜されるのはわずか8人であった。選抜過程は極めて厳格で、筆記試験(知能検査および適性検査)に加え、専用の機器を用いて高周波から低周波まで聞き取る特殊な聴力検査が行われる。最後に圧力タンク試験が行われ、人体の七孔(目、耳、鼻、口)が圧力に耐えられるかどうかが確認される。

これらを通過すると、最終面接が行われる。退役将官によれば、面接は試験官の心証に大きく左右されるという。例えば、面接室に入ると4本脚の椅子があるが、そのうち1本が折れている。座った瞬間の反応が、慌てふためくか、冷静沈着か、あるいは無反応かが観察され、慌てたり無反応であったりした場合は不合格となる。潜水艦内では、通常時であれ緊急時であれ、歩く速度一つで状況が判断されるため、緊急事態においても冷静沈着であることが必須条件となるからだ。 (関連記事: 台湾初の国産潜水艦「海鯤」、水中デコイ発射に成功 潜航試験の全容を初公開 関連記事をもっと読む

また、「面接には決まった質問がない」とも述べる。「野党系の市長についてどう思うか」と問われた際、答えに窮していたらその場で不合格になっていたという。これは主に応答能力を試すものである。

海軍官校。(取自海軍官校臉書)
海軍士官学校では、卒業成績が上位の者のみが潜水艦要員に志願できる。写真はイメージで、今回のニュースの事案とは関係ありません。(写真/海軍士官学校公式フェイスブック提供)

事故なら潜水艦は沈み、航空機は墜落——「高リスク・高報酬」の任務

選抜試験が厳格なだけでなく、潜水艦の訓練期間は水上艦よりもはるかに長い。水上艦の将校が大尉から少佐へ昇進するには15週間の訓練を受ける必要があるが、潜水艦は一つの基礎訓練だけで6か月を要する。

その間は基本的に教室での座学が中心で、修了日にのみ出航して航行を体験する。6か月の課程を終えると実際に乗艦し、その後、1年半から2年にわたる資格認定試験に臨み、電子通信の発信から主機関の起動、故障対応まで200項目以上を学ぶ。1年半から2年を経て「最終総合審査」が行われ、各部署の責任者からのあらゆる分野の質問にすべて答えられて初めて、PQS(要員資格認定)を取得できる。

実際のところ、潜水艦とパイロットの資格認定は、国軍の中でも最も取得が難しい。ひとたび故障に対応できなければ、潜水艦は沈没し、航空機は墜落するからだ。ある潜水艦将校は率直に「まさに命がけだ」と語る。その分、潜水艦乗員やパイロットの手当や給与は国軍の中でも上位に位置し、まさに高リスク・高報酬の任務である。

20170118-國軍春節加強戰備巡弋第二日,來到海軍左營基地。圖為現場展示海軍茄比級海豹潛艦。由於潛艦出海後,幾乎完全阻斷與外界聯繫,陽光、藍天變成為遙不可及接觸的一切。(蘇仲泓攝)
潜水艦の将兵は、通常部隊とは比べものにならないほど厳しい訓練を受けており、資格認定を取得するのも容易ではない。写真はチビ級潜水艦の内部。(写真/蘇仲泓撮影)

心身の極限状態に耐えてこそ艦長に 米国式訓練の導入

米国で訓練を受けた経験を持つ退役将官は、米海軍では艦長を選抜する際、最終段階では7日間連続でトラブルが発生する状況を想定し、極度のプレッシャーの下でも冷静に対処できてこそ合格できると語る。

台湾の潜水艦の資格制度はピラミッド型で、下級士官(大尉)から部門責任者(少佐)、さらに中佐、大佐と昇進するにつれてポストは減少し、最終的に艦長の座は4枠、戦隊長は1枠のみという狭き門になっている。

この退役将官によれば、台湾海軍の戦術編成は「艦・戦・分・小」、すなわち艦隊、戦隊、分隊、小隊という区分で構成される。2個以上の戦隊で構成されて初めて艦隊と呼ばれる。一方、行政上の編成は「部・支・区・分」と分けられ、例えば第62部隊の下に62.1支隊が置かれるなどの形を取る。これらはいずれも米国の制度を踏襲したものであり、潜水艦の訓練体系は米国式を全面的に移植したものだという。

2020環太平洋軍演的壯盛軍容。(美軍太平洋艦隊臉書)
潜水艦出身の退役将官は、台湾の潜水艦における訓練や戦術運用は、米軍の制度を全面的に踏襲していると指摘した。写真は2020年の環太平洋合同演習に参加した艦隊。(写真/米太平洋艦隊公式フェイスブック提供)

米国だけではない――南アフリカもかつて艦長の訓練に協力

興味深いのは、台米の軍事交流が長らく「公然の秘密」とされてきたが、台湾の潜水艦訓練には米国以外にも協力国があった。それが南アフリカだ。台湾と南アフリカが断交する前、同国は台湾向けに潜水艦艦長課程を開設しており、初期の台湾の潜水艦艦長は南アフリカで育成されていたという。現在では、一部の将校が米ロードアイランド州に派遣され訓練を受けている。

では、現在の米国が原子力潜水艦を運用している一方、台湾はディーゼル潜水艦である中で、何を学べるのか。退役将官は、海外交流の大きな目的は相手の長所を吸収することにあると説明する。たとえ米国が原子力潜水艦であっても、基本的な浮力調整や排水操作、損害管制といった基礎技術は共通して学ぶことができる。また、米国に派遣される将兵は、すでに台湾で資格を取得した者であり、現地では主に戦術面の専門能力をさらに強化するという。

2021年2月2日,美軍俄亥俄號核動力潛艦來到沖繩,與駐守當地的陸戰隊第三遠征軍共同進行演習。(美國海軍)
米海軍は原子力潜水艦を運用しており、ディーゼル電気潜水艦である「海鯤」号とは異なるものの、基礎技術には学ぶべき点がある。写真は米海軍のオハイオ級原子力潜水艦。(写真/米海軍提供)

海外技術者が全行程に同行。「海鯤号」の運用を習得する日々

では、現在の「海鯤」号はどうか。造船を担う海昌工廠の技術者とともに艦を見守るだけでなく、どのような訓練を行っているのか。

関係者によれば、第256戦隊が艦の受領要員にあたり、海外の技術協力チームとはいわば師弟関係にある。まず教室での課程を修了した後、シミュレーター訓練を重ね、最後に実艦での操作訓練に進む。海外の技術協力者が全行程に同行し、体系的な訓練が行われているという。艦長も含め、出航のたびに第256戦隊の将兵はこの艦の運用方法を学び続けている。

水上艦であれば、同型艦のシステムに大きな違いはないため早期に受領する必要はない。しかし潜水艦は、専門訓練課程を修了しなければ運用できない。「海鯤」号の現行要員は実際に運用にあたる部隊であり、夜間も当直に就いて艦の状況を確認している。

海軍には長年「潜水艦の夢」があった。多くの海軍関係者は、潜水艦を欠く海軍は「片脚を失ったようなもの」だと語る。潜水艦の訓練はパイロット同様に厳しいが、華やかなイメージとは異なり、第256戦隊は静かに「海鯤」号のすべてを探り続けている。地政学的緊張が高まる中、彼らは自らのやり方で台湾を守ろうとしている。

台湾ニュースをもっと深く⇒風傳媒日本語版X:@stormmedia_jp

編集:柄澤南

中国語関連記事

最新ニュース
都心最大級110万平米の開発「TOKYO CROSS PARK構想」が本格始動 NTT日比谷タワーや帝国ホテル新本館など順次建設へ
TVアニメ『名探偵コナン』30周年記念展が開幕!青山剛昌氏が明かす「光彦」の裏話や、高山みなみ・山口勝平ら豪華陣が制作秘話を語る
米最高裁の「関税違憲」判決にトランプ氏が猛反発 EUやアジアなど貿易協定国へ「小細工するな」と引き上げ警告
【台湾・潜水艦部隊の舞台裏】知られざる「256戦隊」の実態 謎に包まれた過酷な訓練と、新型艦「海鯤」に懸ける期待
トランプ氏、軍事圧力でイランを交渉の席へ──英誌が描く「協議決裂時」の3つの軍事シナリオと双方の譲れない一線
台湾立法院、約5.8兆円の国防特別予算案が前進 頼総統の「国政報告」実現に向けた与野党協議も
日・太平洋島嶼国国防大臣会合で小泉防衛相が基調講演、「3つの危機」克服へ太平洋島嶼国との多層的ネットワーク構築を提唱
台湾国安局、戒厳令下の機密文書5万件を「黒塗りなし」で全面公開 未解決の「林宅血案」など暗黒の歴史、真相解明なるか
【李忠謙コラム】トランプは「ベネズエラ斬首作戦」を再現し、テヘランでイラン神権体制を打倒するのか?
【2026 WBC】公式ストアが東京ドームシティでプレオープン!観戦チケットなしでもグッズ購入が可能
台湾・頼清徳総統、立法院での国政報告に同意 韓国瑜院長「一括質疑・一括答弁」方式で礼遇へ
陸自オスプレイの沖縄飛来中止、「要請による自粛ではない」と強調 日米共同訓練「アイアン・フィスト」が本格化
【論評】「唯一無二」を自負する頼清徳総統 立法院での国情報告は与野党融和の糸口となるか
深夜の品川で3300トンの巨大橋桁が宙を動く 京急線高架化に向けた難工事「送り出し作業」が本格化
日本政府、2028年度に電子渡航認証「JESTA」導入へ 乗り継ぎ客も対象、在留手数料は最大30万円への大幅値上げを検討
東京スター銀行、在留外国人特化の「ORANGEPORT支店」を開設 7言語対応で「金融包摂」を推進
ジップロック×ビームス クチュールの人気コラボが刷新!雪下まゆ起用で「ギフト」に使える新デザイン登場
「関税男」の失墜と再起ーー最高裁がトランプ氏の“無制限関税権”を否決、より混乱する経済戦国時代の幕開けか
「フジロック '26」第1弾アーティスト発表、藤井風やXGも初登場!お得な先行チケットの販売もスタート
留学生・就労者は転職・退学から14日以内に届出を 入管庁が推奨するオンライン手続きと最新ルール
在留申請オンラインシステムが全面刷新 追加資料エラーや通知遅延が発生中、最終日の申請不可にも注意
『ハイキュー!!』コラボも!日本製鉄堺ブレイザーズ、ビール片手に楽しむ「平日ナイトゲーム」で新たな観戦スタイルを提案
台湾・信義房屋グループ約800名が研修旅行で来日へ 世界遺産・二条城での貸切イベントやUSJを訪問
【日米拡大抑止協議】中国の核増強に強い懸念、トランプ・高市政権下で「核の傘」含む同盟の抑止力強化で一致
ロイヤルホストがグランドメニューを刷新、「洋食」の原点回帰で看板ハンバーグやドリアを改良
フェアモント東京、パリと東京の春をテーマにした2種の「桜アフタヌーンティー」を3月1日より提供開始
ギネス認定の都庁プロジェクションマッピング、2026年新作品「東京変容紀」が公開 ポップな和の世界観を表現
米連邦最高裁、トランプ氏の関税政策を「違憲・無効」と判断 各国との貿易協定に広がる波紋と不透明感
トランプ氏、イランに「10日以内の核合意」最後通告か 拒否なら軍事攻撃の可能性も――テヘラン「権力の空白」という懸念
最高裁「関税違憲」でトランプ関税網が崩壊 日本や台湾など合意を急いだアジア同盟国の「戦略的誤算」
【自民】麻生派が60人に急増し過去最多へ 党内唯一の存続派閥、新人ら18人加入で影響力拡大
大阪・中之島に46階建てタワマン完成、最高6億円含め竣工前に全戸完売 新線開業で一変するエリア価値
大阪・関西万博の記憶を次世代へ 吉村知事や伊原六花らが記念行事に出席、ミャクミャク像は万博記念公園の新たなシンボルに
政府、特別国会に61法案提出へ 「国家情報局」新設や「年収178万円の壁」是正など
外国にルーツを持つ子供の支援を強化へ 文科省、日本語指導補助者らを法令上の「正規職員」に規定
東かがわ市、伝統の「引田ひなまつり」にAIアートが融合!東京藝大・香川大連携プロジェクトが2月27日より開幕
スノーピーク、吉野ヶ里歴史公園に体験型複合施設を開業 弥生時代をモチーフにした宿泊体験も
「関税は効果的だ」トランプ氏、台湾による半導体事業「窃盗」を再主張 TSMC米進出は関税の成果と強調
【解説】米最高裁、トランプ関税を「違憲」と判断する激震 1700億ドルの還付巡り混乱必至、政権は「プランB」で対抗へ
トランプ米政権、全輸入品に「10%臨時関税」を発動へ 最高裁の違憲判決直後に「プランB」、2月24日から適用
米中戦闘機が空中で一時対峙か 在韓米軍F-16が“敏感区域”付近で演習、中国が戦闘機を緊急発進し対応
【静岡ベストシェフアワード】初代大賞は「手打ち蕎麦たがた」の田形治氏!地元食材で静岡の魅力を発信
ムーミン アラビア、「Haru」コレクションに新作 フィンランドの自然と日本の美学が融合、トゥーティッキら新キャラも登場
イエローハット、渋谷で「猫パンチ募金」開催中 万博級「3兆円規模」のネコノミクスを背景に保護猫支援
【入場無料】『転スラ』特別企画展がアニメ東京ステーションで2月21日開幕!劇場版第2弾に向けた「予習」にファン必見
【2026 WBC】「大谷グッズは十分な在庫を」公式ストア囲み取材で川﨑宗則・牧野真莉愛らが大会への熱量語る
【2026 WBC】公式ストア「グッズ在庫は前回の2倍以上」、運営の宇平氏が台湾ファンへ熱烈歓迎のメッセージ