「関税男」の失墜と再起ーー最高裁がトランプ氏の“無制限関税権”を否決、より混乱する経済戦国時代の幕開けか

2026年2月20日、米連邦最高裁判所が大統領による『国際緊急経済権限法』に基づいた関税徴収を違憲と宣告した後、記者会見を開いたトランプ氏。反対した判事らを批判し、別の法的根拠を用いて徴税を行うと強調した。(AP通信)
2026年2月20日、米連邦最高裁判所が大統領による『国際緊急経済権限法』に基づいた関税徴収を違憲と宣告した後、記者会見を開いたトランプ氏。反対した判事らを批判し、別の法的根拠を用いて徴税を行うと強調した。(AP通信)

ジョン・ロバーツ最高裁長官率いる連邦最高裁判所が、トランプ氏の関税における「無制限の権限」に反対票を投じたことで、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく関税は消滅した。しかし、自らを「関税男(Tariff Man)」と称するトランプ氏が、これで諦めることはないようだ。

税率15%の新たな世界的関税を直ちに発表したことに加え、トランプ氏はより複雑な手法で議会や監視を回避し、世界に対する経済戦争を維持しようとするだろうとの見方が一般的だ。米紙『ワシントン・ポスト』は、判事たちがトランプ関税に打った終止符は一時的なものに過ぎず、年末の中間選挙が迫る中、トランプ関税が引き起こす不確実な局面が引き続き経済の重荷になると指摘している。

同紙は、最高裁の一枚の判決文がトランプ氏の緊急関税措置の無効を宣言し、経済の不確実性に終止符を打った一方で、新たな章の幕開けにもなったと指摘する。最高裁判事らは20日、大統領が世界のほぼ全ての国からの輸入品に対して関税を上乗せすることは、明らかに法的権限を逸脱していると認定した。それにもかかわらず、トランプ氏はホワイトハウスでの記者会見で、関税徴収を放棄しない姿勢を明確に示した。もっとも、トランプ氏の「プランB」の全貌はいまだ不透明であり、ウォール街やサプライチェーンの裏側では、数千億ドル規模の還付金をめぐる賭けが始まろうとしている。

ジョン・ロバーツ最高裁長官は判決文の中で、大統領が「想像上の権威」のみを頼りに、「いかなる国、いかなる製品に対し、いかなる税率で、いかなる時にも」関税を課すことはできないと明言した。しかしトランプ氏は当日、即座に行動を起こし、1974年通商法第122条に基づき全輸入品への10%の追加関税を命じ、この措置は24日午前0時1分に発効することとなった。さらに21日午前、トランプ氏は税率を15%に引き上げ、SNS「トゥルース・ソーシャル(Truth Social)」への投稿を通じてこれを宣言した。

2025年1月20日、宣誓就任後に連邦最高裁のロバーツ長官に挨拶するトランプ氏(AP通信)。
2025年1月20日、宣誓就任後に連邦最高裁のロバーツ長官に挨拶するトランプ氏(AP通信)。

最高裁とトランプ氏の対立、依然として残る不確実性

『ワシントン・ポスト』は、最高裁の判決はトランプ氏の独断専行を終わらせたかのように見えると報じた。もはや経済や国家安全保障、あるいは個人的な考えを理由に恣意的に関税を課すことはできず、たった1つの投稿で議会を迂回することもできない。しかし、トランプ氏は常に別の法的根拠を見つけ出し、再び世界各国に関税という名の「こん棒」を振りかざす可能性がある。さらに、今回の違憲判決は多くの疑問を残している。米国政府はすでに徴収した数千億ドルの違法関税を返還するのか? 返還するとして、どのような方法で、いつ実行するのか? 今回急遽打ち出された15%の世界的関税には、どのような新たな措置が含まれるのか? (関連記事: 米連邦最高裁、トランプ氏の関税政策を「違憲・無効」と判断 各国との貿易協定に広がる波紋と不透明感 関連記事をもっと読む

トランプ氏がホワイトハウスに復帰してからの1年余り、世界市場は同氏の「ツイッター政治」に苦しめられてきた。SNSで数文字打ち込むだけで、翌日にはある国の関税が倍増し、あるいは国家安全保障や地域安全保障を口実に、特定の産業がブラックリスト入りする。こうした「大人不在」の意思決定スタイルは、グローバルサプライチェーンの管理者たちを苦境に追い込む一方で、トランプ氏の熱烈な支持者たちを歓喜させてきた。最高裁が彼に対し「法の枠組みに戻って行動すること」を求めたとしても、EYパルテノンのチーフエコノミスト、グレゴリー・ダコ氏は、トランプ政権による関税の混乱はこれで終わらないと見ている。

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