【人物】中国が「終身追及」を宣言した台湾の女性検察官 調査局にも容赦ない、寡黙な「鉄の女」陳舒怡氏とは

2026-01-20 12:15
中国は台湾への圧力を強めており、台湾の検察官を「『台独』分子の加担者」と指名した。今回リストに掲載されたのは、台湾高等検察署の陳舒怡検察官。検察界に大きな衝撃が広がっている。(資料写真、柯承恵撮影)
中国は台湾への圧力を強めており、台湾の検察官を「『台独』分子の加担者」と指名した。今回リストに掲載されたのは、台湾高等検察署の陳舒怡検察官。検察界に大きな衝撃が広がっている。(資料写真、柯承恵撮影)

中台関係の緊張が極限に達する中、中国政府が異例の措置に出た。台湾政策を担う国務院台湾事務弁公室(国台弁)は2026年1月7日、台湾高等検察署(高検)の女性検察官・陳舒怡(チェン・シューイー)氏を「台湾独立の先兵」と名指しし、「終身にわたり法的責任を追及する」と発表したのだ。閣僚級ではなく、実務を担う検察官がターゲットにされたことは、台湾司法界に激震を走らせている。スパイ捜査の最前線に立ち、中国当局を苛立たせる陳舒怡氏とは一体何者なのか。

20251231-法務部長鄭銘謙31日於司法法制委員會備詢。(顏麟宇攝)
国台弁が台湾の検察官を「台独の加担者」と名指しし、終身追及を表明したことを受け、法務部長・鄭銘謙氏(写真)は厳正に非難した。(資料写真、顔麟宇撮影)

司法への恫喝、台湾当局は「断固拒否」

​今回のリストには、内政部長・劉世芳氏や教育部長・鄭英耀氏といった閣僚に加え、現場の検察官である陳氏が含まれたことが最大の特徴だ。台北地検や新北地検の検察官らに続き、陳氏が標的とされたことに対し、普段は温厚で知られる鄭銘謙・法務部長(法相)も沈黙を破った。「我が国の司法官に対する恫喝であり、断じて受け入れられない」と即座に反論し、中国側の圧力に屈しない姿勢を鮮明にした。

翌8日、頼清徳総統は法務部調査局(FBIに相当)の卒業式に出席。「我々は海外の敵対勢力による脅威に直面している」と述べ、中国による「越境鎮圧」の対象となった捜査員たちの勇気を称えた。頼政権発足後、中国を明確に「敵対勢力」と定義したことで、検察内部でも国家安全法違反(スパイ事件)の捜査がキャリアの要となっている。

20260108-總統賴清德8日出席「法務部調查局調查班第62期結業典禮」。(柯承惠攝)
第62期調査官結業式に出席し、反浸透工作に従事する捜査陣を激励する頼清徳総統。(資料写真、柯承恵撮影)

中国留学中の子供を人質に? 検察官を襲う「見えない圧力」

​「国家安全案件」の捜査は出世の近道である一方、諸刃の剣でもある。検察関係者は、ある衝撃的なエピソードを明かす。 かつて、ある主任検察官が、部下が作成した国家安全案件の書類への決裁を拒否したことがあった。理由は「自分の子供が中国の大学に留学しているから」だ。書類に署名することで中国当局にマークされ、子供が拘束や尋問を受けるリスクを恐れたのである。

中国が作成した「ブラックリスト」は、単なる渡航制限にとどまらず、検察官の家族生活にまで心理的な圧力をかけている。それでもなお、陳氏のような検察官が捜査を続ける背景には、強固な職業倫理がある。

20191219-新黨不分區立委候選人王炳忠19日召開「誰在製造『共諜』?民進黨最早引進大陸黨政軍監督台灣選舉!」記者會,並拿出賴清德前往大陸的合照。(顏麟宇攝)
「台独の加担者」とされた林俊廷検察官は、京華城事件だけでなく、かつて王炳忠氏(写真)が関与したスパイ事件の捜査も担当していた。(資料写真、顔麟宇撮影)

潜水艦機密から身内の不祥事まで「寡黙なスパイハンター」

​今回、中国から「終身追及」を宣告された陳舒怡氏は、台北大学法律学部卒の司法官第40期生。彼女の評判は一貫している。「とにかく口が堅い」。 メディアの憶測が飛び交う中でも沈黙を貫き、淡々と証拠を積み上げるスタイルで、上層部から絶対的な信頼を得てきた。その実力は、台湾初の国産潜水艦「海鯤(ハイクン)」を巡る機密漏洩事件など、国家の命運を左右する最重要案件を任されるほどだ。
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彼女の「容赦なさ」を示す有名な事件がある。調査局(情報機関)内部の不祥事を捜査した際、陳氏は調査局長が不在の隙を突き、検察事務官を率いて調査局本部に「ガサ入れ(家宅捜索)」を強行したのだ。身内の捜査機関であっても聖域を認めないその姿勢は、調査局のメンツを丸潰れにしたが、同時に「彼女には手加減が通じない」という畏怖と信頼を植え付けた。

台灣高等檢察署檢察官陳舒怡。(翻攝自青年日報)
検察官・陳舒怡氏(写真)は、高い捜査精度と秘匿性を併せ持ち、張顕耀氏の機密漏洩事件や調査局の自浄捜査など数々の重大案件を手掛けてきた。(資料写真、青年日報より)
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