舞台裏》米軍の「ベネズエラ斬首作戦」は台湾でも再現可能か 台湾が真に警戒する中国軍の「新戦術」の正体

2026-01-19 14:25
米軍によるニコラス・マドゥロ氏の身柄拘束を受け、中台の政治指導者が「斬首」される可能性を巡る議論が巻き起こっている。中国人民解放軍(写真)がこの事例を模倣することを危惧する声も上がっている。(写真/AP通信提供)
米軍によるニコラス・マドゥロ氏の身柄拘束を受け、中台の政治指導者が「斬首」される可能性を巡る議論が巻き起こっている。中国人民解放軍(写真)がこの事例を模倣することを危惧する声も上がっている。(写真/AP通信提供)

2026年1月3日、米軍はコードネーム「絶対的決意」と名付けた軍事突襲を実施し、ベネズエラに対するいわゆる「準・斬首型」作戦を敢行した。デルタフォースを中心とする特殊部隊は、圧倒的な海空戦力の支援を受けて、短時間で同国の防空システムを無力化し、ニコラス・マドゥロ大統領(Nicolas Maduro)の警護部隊を殲滅。マドゥロ大統領夫妻を無傷のまま米国に連行し、裁判にかけた。作戦全体を通じて米軍側の人的損失はゼロだったとされ、世界最強と称される米軍の軍事力を改めて誇示する結果となった。

しかし、この米軍によるベネズエラ大統領への「準・斬首作戦」は、台湾海峡情勢との類比を呼び起こし、さまざまな議論を招いている。米国がこのような前例を作ったことで、中国人民解放軍(PLA)が同様の戦法を「参考事例」として台湾の指導部に対して模倣する口実を与えるのではないかと懸念する声もある。一方で、米軍が圧倒的な戦力差を見せつけたことで、実戦経験に乏しい中国軍にとっては強烈な抑止となり、むしろ中国の習近平国家主席こそが「第二のマドゥロ」になる可能性を心配すべきだという楽観的な見方も存在する。

これに対し、近ごろ中国側のネットユーザーの間では過剰な興奮が広がり、「米軍の行動を手本に、中国軍も台湾に対して同様の作戦を実行すべきだ」「台湾独立派の指導者を処理してしまえば、両岸統一は一気に実現する」といった声も少なくない。

一方、台湾の国家安全当局関係者や与党・民進党系の政治家の多くは、米軍の行動を一斉に称賛し、「米軍がベネズエラで見せた圧倒的な軍事行動は、中国政権に対する最も強力な警告だ」と評価している。さらに、「ベネズエラ軍の中国製兵器が米軍の前では紙同然だったことは、解放軍が見かけ倒しで恐れるに足らない存在であることを証明した」とする声もある。

しかし、『エコノミスト』誌などの海外メディアや国際軍事専門家の間では、より慎重な見方が主流となっている。彼らは、「中国軍が台湾海峡で米軍のような突襲作戦を再現できる能力を本当に備えているのか」という点を冷静に検証しており、多くの分析は「中国の指導部が一定の心理的な鼓舞を受ける可能性はあるが、現時点では台湾軍の反制を招かずに海峡を越えて行動する能力は、中国軍にはまだない」という結論に傾いている。

2025年12月10日。ベネズエラ大統領ニコラス・マドゥロ(Nicolas Maduro)氏が首都カラカスで集会に参加し、19世紀のベネズエラ連邦戦争中のサンタ・イネスの戦いを記念した。(AP)
2026年初頭、米国がベネズエラに対して軍事行動を開始し、当時のニコラス・マドゥロ大統領(中央)を「生け捕り」にしたニュースは世界に衝撃を与えた。(写真/共同通信・AP通信提供)

米軍のベネズエラ斬首作戦は台湾でも再現可能か

​実のところ、台湾軍にとって、中国軍が台湾に対して斬首型の突襲を仕掛ける可能性は、長年にわたって台海防衛作戦の重要な想定シナリオの一つとされてきた。台湾軍はこれまで綿密な対応計画を整備し、演習を通じて繰り返し検証している。台湾元首の安全確保を目的とする「万鈞計画」もその一環で、内容は継続的に強化されており、自爆型ドローンへの対抗手段としてレーザー兵器の導入も検討されているという。 (関連記事: TSMC米投資拡大は台湾の「シリコンの盾」を崩すか 米識者「米国の代替完了は2050年」 関連記事をもっと読む

ある軍関係者は、「米軍がマドゥロ夫妻の身柄を確保できたのは、単に技術が先進的で実戦経験が豊富だったからではない」と指摘する。実際には、ベネズエラ軍を事前に切り崩して抵抗させなかったことや、マドゥロ周辺の内部協力者を買収して正確な情報を入手したことなど、情報戦と政治工作の要素が極めて大きかった可能性が高いという。

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