米マケイン研究所「セドナ・フォーラム」初の東京開催、シュライバー氏はトランプ政権の「戦略的曖昧さ」回帰を指摘

セドナ・フォーラム東京で日米の論客は、トランプ流の戦略的曖昧さと日本の殺傷兵器輸出解禁を視野に、台湾海峡の安定に向けた新たな役割分担を提示した。(写真/黃信維撮影)
セドナ・フォーラム東京で日米の論客は、トランプ流の戦略的曖昧さと日本の殺傷兵器輸出解禁を視野に、台湾海峡の安定に向けた新たな役割分担を提示した。(写真/黃信維撮影)

公益財団法人国際文化会館と米マケイン研究所は2026年1月15日、都内で「セドナ・フォーラム東京」を開催し、米国・日本・台湾の安全保障専門家や政治家が集結して「中国と台湾:地域秩序の将来」をテーマに議論を行った。本会合では、第2次トランプ政権下の台湾政策の変化や、高市早苗政権下で進む日本の防衛政策の転換点について、登壇者から極めて具体的な分析が相次いだ。

セドナ・フォーラム東京で日米の論客は、トランプ流の戦略的曖昧さと日本の殺傷兵器輸出解禁を視野に、台湾海峡の安定に向けた新たな役割分担を提示した。黃信維
セドナ・フォーラム東京で日米の論客は、トランプ流の戦略的曖昧さと日本の殺傷兵器輸出解禁を視野に、台湾海峡の安定に向けた新たな役割分担を提示した。(写真/黃信維撮影)

パネルセッションには、自民党の松川るい参議院議員、元米国防次官補のランダル・シュライバー氏(インド太平洋安全保障研究所理事長)、慶應義塾大学の森聡教授が登壇し、共同通信の太田昌克編集委員の司会のもと、緊迫する台湾海峡情勢への対処方針について認識を共有した。

セドナ・フォーラム東京で日米の論客は、トランプ流の戦略的曖昧さと日本の殺傷兵器輸出解禁を視野に、台湾海峡の安定に向けた新たな役割分担を提示した。黃信維
セドナ・フォーラム東京で日米の論客は、トランプ流の戦略的曖昧さと日本の殺傷兵器輸出解禁を視野に、台湾海峡の安定に向けた新たな役割分担を提示した。(写真/黃信維撮影)

シュライバー氏は、トランプ政権下の対台湾政策について、バイデン前政権の明確な防衛コミットメントから転換し、現在は予測不可能性を帯びた「トランプ流の特質を帯びた戦略的曖昧さ(strategic ambiguity with a Trumpian flavor)」に回帰しているとの分析を披露した。同氏は、現在の米国の対台湾軍事支援が「D-Day(全面侵攻)」への対処に偏重しすぎていると懸念を示し、中国が日常的に行っている現状変更の試み、いわゆる「サラミスライス戦術」やグレーゾーン事態に対抗する必要性を強調。台湾がマルチドメイン(多領域)での対応能力を持つべきだとし、米国は台湾に不足している能力について「隙間を埋める(fill the gaps)」覚悟を持つべきだと訴えた。

セドナ・フォーラム東京で日米の論客は、トランプ流の戦略的曖昧さと日本の殺傷兵器輸出解禁を視野に、台湾海峡の安定に向けた新たな役割分担を提示した。黃信維
セドナ・フォーラム東京で日米の論客は、トランプ流の戦略的曖昧さと日本の殺傷兵器輸出解禁を視野に、台湾海峡の安定に向けた新たな役割分担を提示した。(写真/黃信維撮影)

また、シュライバー氏は、高市首相が国会答辯において「台湾有事」が日本の「存立危機事態」になり得ると述べたことに対し、中国側が猛反発している件について、「中国は発言を口実に圧力を強めているに過ぎず、発言を撤回すべきではない」と断言。一方で、米国政府の初期対応について「極めて温温(tepid response)」であり、同盟国を強力に擁護する姿勢が不足していたと批判した。同氏は、トランプ政権が現在は対中関税交渉を見据えた「休戦期」にあるため「多弁を避け実行に重きを置く(do more, say less)」傾向にあると分析しつつも、最近通報された110億ドル(約1兆7000億円)規模の対台軍事売却など、実質的な支援は継続していると説明した。

また、シュライバー氏は、外交・行政レベルにおける台湾との意思疎通が著しく不足していると指摘した。同氏は具体例として、米政府が頼清徳総統の米国通過(トランジット)に対して不必要な制限を数多く課している現状を挙げ、中国側の反応を過度に恐れ、回避しようとする慎重すぎる姿勢が、かえって中国側に誤ったシグナルを送り、圧力強化を助長させているとの懸念を示した。

さらに、シュライバー氏は中台間の通信チャネルが機能不全に陥っていることの深刻さを強調した。同氏は、2016年に蔡英文(さい・えいぶん)氏が総統に就任して以来、蔡氏および頼清徳氏の両総統は、中国側と公式かつ実質的な対話を行うことができていないと指摘。この9~10年に及ぶ「対話の空白」こそが、中国が台湾への圧力を軍事的手段へとシフトさせた重要な要因であるとの分析を示した。その上で、米台間においても行政レベルでの対話が欠如しており、米国は国会議員の訪台だけでなく、台湾政府との直接的な対話を強化すべきだと訴えた。

一方、日本側の対応について松川るい氏は、防衛装備移転三原則の運用指針見直しに触れ、フィリピンへのフリゲート艦の供与を例に、現行ルールでは弾薬や防衛機能を外さなければならない状況を「不合理(absurd)」と断じ、殺傷能力を持つ装備品の輸出解禁に向けた議論が「最終段階」にあることを明らかにした。また、松川氏は日中間で戦略的コミュニケーションが欠如しているリスクを指摘。党の公式決定ではないと断った上で、誤算を防ぐための「ガードレール」として、総選挙後に自民党議員団を中国へ派遣し、日本の平和維持の意思を直接伝えるべきだとの個人的な見解を表明した。

森聡教授は、日本が反撃能力の保有や統合作戦司令部(JJOC)の設置を進めることで、自衛隊が「盾」としての役割を強化し、米軍が台湾周辺への戦力投射により集中できるようになるという、新たな機能的役割分担の重要性を説いた。

編集:小田菜々香

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