トップ ニュース 米軍はイランを攻撃しないのか? トランプ氏「テヘランは処刑を止めつつある」と主張も、軍事オプションの放棄は明言せず
米軍はイランを攻撃しないのか? トランプ氏「テヘランは処刑を止めつつある」と主張も、軍事オプションの放棄は明言せず 2026年1月14日、ホワイトハウスの大統領執務室で談話を発表するドナルド・トランプ米大統領(AP通信)
イラン全土で反政府デモが激化し、米軍の長距離爆撃機が待機状態に入るなか、ドナルド・トランプ米大統領は突如として「一時停止ボタン」を押した。トランプ氏は、イラン側から「抗議デモ参加者の処刑を停止する」との保証を得たと宣言し、これを受けて原油価格は大幅に下落した。
テキサス産軽質原油(WTI)と北海ブレント原油の価格が戦争への懸念から激しく乱高下するなか、トランプ氏は14日、ホワイトハウスの執務室で衝撃的な事実を公表した。同氏は数日前の「援助は向かっている」という強硬な姿勢を一変させ、メディアに対し「相手側の極めて重要な情報筋」から、イラン政権がデモ参加者への殺害を停止したことを「確認した」との保証を得たと強調した。また、現時点では「処刑の計画はない」とも述べた。この発言により、米軍によるイランへの武力行使という観測は沈静化に向かったが、一方でテヘランの街頭で抗議を続ける人々の間には戸惑いが広がっている。
執務室での「謎の保証」:トランプ氏の急旋回 トランプ氏はホワイトハウスで、「我々はイラン国内での処刑が停止されつつあり、すでに停止したとの情報を得た。現在、処刑の計画はなく、執行も行われていない。我々はこの事実を確認していくつもりだ」と述べた。しかし、トランプ氏はその「相手側の極めて重要な情報筋」の正体については明言を避けた。わずか1日前、トランプ氏は自身のSNS「Truth Social」で「援助は向かっている(HELP IS ON ITS WAY)」と投稿し、米軍の介入が間近に迫っていることを示唆していた。また、テヘラン当局が拘束者を処刑しているとし、米国は「非常に強力な行動」をとると宣言していたばかりだった。
2026年1月14日、ドイツ・ベルリンの示威行進で、イラン反政府抗議デモへの連帯を示す参加者が、イラン最高指導者ハメネイ師の肖像が燃える写真でタバコに火をつける様子。(AP)
1月2日にイランで1979年以来最大規模とされる反政府デモが発生して以降、人権団体は鎮圧過程ですでに3000人以上のデモ参加者が殺害されたと伝えている。そのため、トランプ氏のこれまでの強硬姿勢は、各方面で米軍介入への期待を抱かせていた。しかし、14日のトランプ氏は、何らかの秘密協定を結んだ商人のような振る舞いを見せた。軍事的な選択肢が排除されたのかという問いに対し、同氏は含みを持たせつつも、「今後の推移を注視する。だが、我々は内情を知る人物から極めて価値のある声明を受け取った」と語った。
米軍がカタールから撤収、イランは飛行禁止区域を発表 トランプ氏のテヘランに対する口調は明らかに軟化したものの、米軍の部隊移動と配備状況は事態の険しさを物語っている。英紙『フィナンシャル・タイムズ』によると、トランプ氏の発言に先立ち、米軍はカタールのアル・ウデイド空軍基地から非必要要員の撤収を密かに開始していた。現地の当局者は、危機が高まった際、米軍がイランの報復射程圏内から逃れるため、一部の空軍資産を域外に移動させたと明かした。一方でイラン側も、何の説明もないまま、15日午前に領空閉鎖と民間機の飛行禁止命令を延長した。
2026年1月14日、イスラエルでイラン反政府抗議デモに連帯を示すデモ参加者。イスラエル国旗を掲げ、背後には旧イラン国旗が見える。(AP)
アル・ウデイド基地は、中東を管轄する米中央軍(CENTCOM)の神経中枢であり、1万人以上の米兵が駐留している。撤収行動それ自体が重要な警告といえる。なぜなら、一度開戦すれば、同基地はイランの弾道ミサイルによる報復の第一標的となるからだ。実際、昨年イスラエルがイランに対して「12日間戦争」を仕掛け、米軍がイラン核施設への空爆を支援した際、テヘラン側は同基地へのミサイル一斉射撃で報復している。
航空母艦セオドア・ルーズベルト。(AP)
しかし、米軍当局者はトランプ氏の最新の表明を受け、国防総省が部隊を基地に戻す準備を進めていると述べた。高度な警戒態勢にあり、いつでも第二次打撃を実行できる状態にあった長距離爆撃機部隊も、行動を停止した模様だ。『フィナンシャル・タイムズ』は、昨年6月の対イラン攻撃作戦終了後、現地での米軍配備は大幅に縮小されており、現在は地域全体で4万人足らずの駐留にとどまっていると指摘している。さらに重要なのは、強力な抑止力を誇る空母「ジェラルド・R・フォード」打撃群が昨年末にカリブ海へ移動している点だ。
米紙『ニューヨーク・タイムズ』によると、現在ペルシャ湾と紅海を巡航している米海軍の艦艇は3隻のミサイル駆逐艦のみだ。軍当局者が15日に明らかにしたところでは、これには最近紅海に入った「セオドア・ルーズベルト」が含まれる。国防総省関係者は、同海域には少なくともミサイル潜水艦も配備されているとしている。これらの艦艇はトマホークミサイルを装備しているものの、空母打撃群のような持続的な制圧力に欠けており、イランに対して本格的な全面攻撃を仕掛けるには火力が不足しているとの懸念もある。
テヘランの羅生門:3000人の遺体と「絞首刑の否定」 トランプ氏が柔軟な姿勢を見せる一方で、イランのアッバス・アラグチ外相は米テレビ局「FOXニュース」に対し、「絞首刑が行われるという話は聞いていない。今日、明日、あるいは将来においても、絞首刑の計画は一切存在しない」と断言した。同氏はさらに、現在の一連の混乱はイスラエルの陰謀であると主張した。しかし、「絞首刑がない」という言葉は、イランの抗議者が流血を止めたことを意味するわけではない。
イラン政府が全土でインターネットを遮断しているため、当局による異議申し立て者への鎮圧の全容を外部から把握することは困難を極めている。しかし、イラン保健省の高官が匿名で海外メディアに語ったところによると、全国の死者数は3000人に達しているという。欧州に亡命中のイラン人権活動家は「これは虐殺だ。彼らは今、単にミュートボタンを押したに過ぎない」と形容した。一方で、イラン最高指導者の顧問であるアリ・シャムハニ氏はSNS上で強硬な姿勢を示し、昨年のアル・ウデイド基地への攻撃を忘れるなとトランプ氏を挑発。「あれはイランの反撃の意志と能力を現実的に認識させる助けになったはずだ」と皮肉った。
2026年1月13日、英国の国会議事堂前でデモを行う参加者。イランの亡命皇太子、レザ・パフラヴィー氏の肖像が描かれたプラカードを掲げている。(AP)
この地政学的な駆け引きのなかで、影の薄い存在となっているのが、長年米国に亡命しているイラン最後の国王の息子、レザ・パフラヴィー氏だ。この元皇太子は自らを反対派の結集軸として位置づけているが、トランプ氏は「彼は見栄えは良いが、自国でどのように振る舞うかは分からない」「彼らが望むなら喜ばしいことだが、我々はまだその段階には至っていない」と述べ、パフラヴィー氏のイラン国内での影響力に疑念を呈した。むしろトランプ氏は、現在のテヘラン政権と何らかの取引を行うことを優先しているようにも見受けられる。
トランプ氏はホワイトハウスで、「テヘランが崩壊するかどうかにかかわらず、これは非常に興味深い時期になるだろう」と語った。
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