トップ ニュース ノーベル賞学者スティグリッツ氏が語る「台湾病」の正体 「高い住宅価格が若者の自由を奪う」
ノーベル賞学者スティグリッツ氏が語る「台湾病」の正体 「高い住宅価格が若者の自由を奪う」 1月13日、台湾大学で開催されたフォーラム「自由への道ー経済と理想の社会」の専門家対談において、司会の路怡珍氏の質問に答えるノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・スティグリッツ氏(左)。(写真/王秋燕撮影)
世界的な経済ガバナンスの動揺やテクノロジー、地政学の再編が進む中、かつて成功のモデルとされた台湾の経済発展パターンが新たな試練に直面している。
1月13日、国立台湾大学にて兪国華文教基金会主催のフォーラム「自由への道:経済と理想社会」が開催された。フォーラムにはノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・スティグリッツ(Joseph Stiglitz)氏と台湾の学者が登壇し、英誌『エコノミスト』が提唱した「台湾病(Taiwan disease)」という命題について、対談形式で再検証を行った。
議論の焦点は、台湾が成功したか否かではない。「台湾の奇跡」が積み上げられた今日において、なぜ多くの市民が成長による安心や希望を感じられなくなっているのか。特に若年層が直面する住居、賃金、そして将来の選択肢に対する圧力こそが、議論の中心となった。
既存の成長モデルは限界か フォーラムで最も注目を集めた対談セッションにおいて、 司会の 路怡珍 (ルー・イージェン) 氏は『エコノミスト』の特集記事を引用し、問題を提起した。台湾は長年、ハイテク産業主導の輸出志向型モデルで目覚ましい生産額と輸出データを記録してきたが、その裏で産業の集中、為替管理、資産価格の上昇といった副作用が浮き彫りになっている。
路氏は、成長の果実がテクノロジー分野や専門職のエリート層に集中する一方で、実質賃金は長期停滞し、購買力や生活の安心感が追いついていない現状を指摘。これは、既存の成長モデルが構造的なボトルネックに近づいていることを意味するのではないか、と問いかけた。その上で、政策顧問の視点から、台湾は産業構造の調整を優先すべきか、それともより積極的な公共投資を通じて分配と住居問題に対応すべきか、スティグリッツ氏に意見を求めた。
1月13日、ノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・スティグリッツ氏(右から3人目)、中央研究院経済研究所副所長の楊淑珺氏、台湾師範大学副学長の印永翔氏らが、俞国華文教基金会と風傳媒によるフォーラムに出席し、議論を交わした。(写真/柯承恵撮影)
低金利と住宅価格が「自由」を侵食する これに対しスティグリッツ氏は、まず台湾の過去の発展を肯定し、国家主導の発展モデルは歴史的に見ても成功した「奇跡」であると評した。しかし、現在の真の課題は成長の停滞ではなく、「成長の配当」が広く共有されていない点にあり、それが最終的に資産価格の不均衡として表れていると指摘した。
スティグリッツ氏は、長期間の低金利環境が企業の資金調達や輸出競争力を支えた一方で、大量の資金を不動産市場へ流入させ、地価と住宅価格を高騰させたと分析する。資産価格が賃金成長から長期的に乖離することで、社会的流動性は制限される。若年層は所得の大部分を住居費に充てざるを得ず、その結果、起業やキャリアチェンジ、リスクテイクといった「人生の選択肢」が圧迫されているのだ。
構造的な処方箋:地価税と公営住宅 政策提言として、スティグリッツ氏は19世紀の経済学者ヘンリー・ジョージ(Henry George)が提唱した「地価税(Land Value Tax)」の導入検討を挙げた。公共インフラや都市開発、社会投資によってもたらされた地価の増分(不労所得)を、税制を通じて社会に還元し、少数の資産保有者への集中を防ぐ仕組みだ。
【用語解説】ヘンリー・ジョージと「地価税」
米国の経済学者・政治家であり、土地制度改革運動家でもあるヘンリー・ジョージ(Henry George)が提唱した「地価税(ランド・バリュー・タックス)」の概要:
地価に対して単一税(シングル・タックス)を課すことで、社会の発展によって生じた「地代(エコノミック・レント)」を社会へ還元し、土地投機を抑制するとともに、政府の財源を確保しようとするもの。
(出典:中央研究院『人文及社会科学集刊』ウェブサイト)
さらに、オーストリア・ウィーンの事例を挙げ、政府が安定的かつ十分な規模の公営住宅ストックを提供することの重要性を説いた。これにより、過度な価格変動を抑制し、居住権を保障することで、住宅が若年層を圧迫する主因とならないようにする。こうした制度的なツールこそが、「台湾病」が露呈させた問題への長期的な解法になると述べた。
政府介入には「制度設計と説明責任」が不可欠 政府の役割について、中央研究院経済研究所副所長の楊淑珺氏は制度面から注意を促した。政府による市場介入の動機が善意に基づくものであっても、健全な経済分析や制度設計、そして説明責任(アカウンタビリティ)の仕組みが欠如していれば、逆効果となり、公共への信頼を損なう可能性があると指摘した。
また、国立台湾師範大学副学長の印永翔(イン・ヨンシアン) 氏は、「進歩的資本主義」の観点から発言。台湾の過去の公共投資が産業のアップグレードに成功したことを踏まえ、次のステップとして、その成長の果実をいかに具体的な「社会的安心感」へと転換し、若年層が抱える住居、雇用、尊厳に関わる構造的圧力に応えていくかが鍵であると述べた。
フォーラムの結びにスティグリッツ氏は、台湾の功績を称えつつも、いかなる成功モデルも時代の変化に合わせて調整されなければ、新たな不平等を温床になり得ると警鐘を鳴らした。そして、台湾が技術競争力を維持すると同時に、「台湾病」が示す構造的問題を直視し、税制改革と公共投資を通じて、経済成長を「多数の人々の自由と尊厳」へと転換させていくよう呼びかけた。
1月13日に台湾大学で開催されたフォーラム「自由への道:経済と理想社会」の登壇者ら。(左から)印永翔氏、楊淑珺氏、ジョセフ・スティグリッツ氏、張孝威氏、ウーヴェ・モラヴェッツ氏、張果軍氏。(写真/柯承恵撮影) 更多新聞請搜尋🔍風傳媒日文版
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