トップ ニュース 【舞台裏】「自由はタダではない」米国の圧力に揺れる台湾野党 1.25兆台湾ドルの巨額軍事予算、国民党の苦悩と決断
【舞台裏】「自由はタダではない」米国の圧力に揺れる台湾野党 1.25兆台湾ドルの巨額軍事予算、国民党の苦悩と決断 米国は台湾が提出した1.25兆元の軍事購入特別予算に極めて高い関心を寄せている。写真はイメージ、屏東・九鵬基地での高機動ロケット砲システム「HIMARS(ハイマース)」の射撃。(写真/劉偉宏提供)
台湾の 中央政府総予算および1兆2500億台湾ドル(約5兆8000億円)規模の国防特別予算案が国会(立法院)で審議停止となる中、野党側は一部の新規予算のみ先行して執行を認める案を提出し、与野党の膠着(こうちゃく)状態が続いている。
これに対し、国防部(防衛省に相当)の徐斯人副部長は2026年1月22日、「国防部の公務予算5614億台湾ドル(約2.7兆円) のうち、人件費を除いた実質的な活動経費780億台湾ドル(約3.7億円) が影響を受けている」と批判した。徐氏は、「国防予算は総予算の21%を占めるが、国民党と民衆党が提出した案で議論の対象となったのは、出産手当の増額(一律10万台湾ドルへ)のみだ。この項目は国防部予算ではわずか4000万台湾ドル(約1.9億円) 、影響を受ける780億ドル(約3.7億円) の0.05%に過ぎない。つまり、国防部の活動に必要な予算の99.95%が凍結され、動かせない状態にある」と窮状を訴えた。
同日、米国の対台湾窓口機関、米国在台協会(AIT)のレイモンド・グリーン処長(大使に相当)は、国防安全研究院での講演で「自由はタダではない(Freedom is not free)」と発言し、頼清徳政権が提出した国防特別予算への支持を改めて表明した。この発言は、1兆2500億台湾ドルの特別予算案を通過させるよう、野党側に決断を促す米国の強い圧力と受け止められている。
しかし、野党第二党の民衆党は独自の「軍事購入条例」を提案し、予算規模を1兆2500億から4000億台湾ドルへと大幅に削減する構えを見せている。これにより、米国の圧力の矛先は、国会で多数議席を握る最大野党・国民党へと向けられた。国民党は「軍事購入そのものには反対していない」「支払いを拒否しているわけではない」と強調し続けているが、米国の強力な「極限圧力(マキシマム・プレッシャー)」にどう対峙し、最終的にどのような着地点を見出すのか、難しい舵取りを迫られている。
政府が提出した1.25兆元の国防特別予算を巡り、与野党間で激しい論争が起きている。写真は台湾軍の高機動ロケット砲システム(HIMARS)。(写真/張曜麟撮影)
米国が警告「自由はタダではない」、1.25兆予算の行方 国防部の計画によると、1兆2500億台湾ドルの特別予算は、精密砲撃システム、長距離精密打撃ミサイル、無人機(ドローン)および対ドローンシステム、防空・対弾道・対戦車ミサイル、AI支援型C5ISRシステム、継戦能力強化装備、そして米台共同開発・調達装備の7大項目に充てられる。 特に無人機分野では、「ALTIUS-700M」1554機、「ALTIUS-600ISR」478機に加え、沿岸監視型や攻撃型(自爆型含む)ドローン計20万機以上、無人艇1000隻以上の導入が計画されている。
(関連記事:
1.25兆台湾ドルの国防予算、対米武器購入は「一部のみ」か 台湾民衆党・黄国昌主席が明かす米側との協議内容
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グリーン処長は「米国は第一列島線のいかなる場所においても侵略を阻止することに尽力する」としながらも、「米国だけでこの重荷を背負うことはできないし、そうすべきでもない。米国は、同盟国やパートナーが自助努力を行う範囲内でのみ支援を提供する」と釘を刺した。その上で、頼政権の特別予算案は極めて重要であり、米国側も主要システムの早期引き渡しに尽力すると述べた。
AIT処長の谷立言氏が「自由はタダではない」と公言したことは、1.25兆元の特別予算通過に向けた野党への圧力と見られている。(写真/劉偉宏撮影)
黄国昌氏や鄭麗文氏では埒が明かず 米国は国民党立院会派と直接対話へ 実のところ、米国側は特別予算の早期成立に向け、水面下で活発な働きかけを行ってきた。当初、米国は民衆党の黄国昌・党主席に期待を寄せていたが、黄氏の訪米後の発言に困惑を隠せない様子だ。関係者によると、例えば高機動ロケット砲システム「HIMARS(ハイマース)」の購入について、米国と台湾が実需に基づき協議を重ねて数量を決定したにもかかわらず、黄氏が異議を唱えたことに、米国側は首をかしげているという。
グリーン処長は国民党の鄭麗文主席とも面会しているが、これは米国が野党に対し、予算案への同意を強く求めていることの表れだ。情報筋によると、国民党立法院党団(議員団)は2025年8月25日にAITを訪問し、グリーン処長と国防予算について意見交換を行った。その際、国民党側は「軍人の給与引き上げ」を予算に盛り込むよう提案したが、グリーン氏はこれに対し明確な反応を示さなかったという。 国民党関係者は、「あの場にいた全員が察した。米国が求めているのはあくまで武器購入であり、軍人の待遇改善は彼らの関心事ではないのだ。しかし問題は、どれほど装備を買っても、兵士がいなければ誰も操作できないということだ。それで本当に意味があるのか」と漏らす。
国民党団は2025年8月にAITと会談し、米台防衛協力について協議した。当時から米国側の武器調達問題への関心の高さがうかがえた。(写真/AIT Facebook提供)
民衆党の「4000億案」に国民党は冷ややか 独自の方針で事態打開へ 一方、民衆党は独自の国防特別予算案を提示したが、国民党内部の反応は冷ややかだ。主な理由は、野党である民衆党には行政経験がなく、政府運営の実態を把握していないため、「(対案を)出すとしても机上の空論にならざるを得ない」という見方が支配的だからだ。それでも民衆党は、1兆2500億台湾ドル( 約6兆円 ) から4000億台湾ドル(約1.9兆円 ) へと大幅に削減する案を堅持している。
情報筋によると、国民党は「米国が真に求めているのはFMSの成立であり、そこさえ通れば他の部分には強く干渉しないだろう」と踏んでいる。そのためFMSには同意する一方で、例えば20万機の無人機調達のような項目には異論を唱えている。技術革新のサイクルが早いドローンを一括購入すれば、半年や1年で性能が陳腐化し、敵国に劣る恐れがあるためだ。国民党は、これらは一度に計上するのではなく、通常の年度予算で段階的に調達すべきだと主張しており、商用販売部分について国防部にさらなる説明を求めている。
民衆党主席・黄国昌氏は独自の国防特別予算案を提示したが、国民党はこれに同調する姿勢を見せていない。(写真/顔麟宇撮影)
「納期遅延」を警告する国防部、国民党は「脅し」と反発 2026年1月26日、立法院外交国防委員会の馬文君・召集委員(委員長に相当)は、顧立雄国防部長(防衛相)を招致し、「ライフサイクルコストと防衛産業チェーン構築から見る武器調達戦略および国防予算(公務・基金・特別予算)編成の適切性」に関する報告と質疑を行う予定だ。
この報告の狙いは、調達における問題点を国防部に説明させることにある。国防部は最近、メディアを通じて野党に予算承認を強く訴えているが、一部の国民党議員やベテラン幕僚はこれに不快感を示している。例えば、国防部戦略規画司長の黄文啓中将が「予算審議が遅れれば、他国の注文に割り込まれ、納期が年単位で遅れる恐れがある」と公言したことなどが火種となっている。
これに対し、国民党関係者は「行政部門が国会の支持を求めるのに、脅しのような手法を使うのは極めて不適切だ。軍事調達の仕組みを知らない人々を欺く行為だ」と批判を強めている。
国防予算に関する意思疎通のため、国防部長・顧立雄氏(写真)は頻繁に立法院を訪れている。(写真/顔麟宇撮影)
米国の「号令」で動き出す国防部、SNS攻勢も 他方で、米国の圧力は確実に強まっている。AITの代表団が立法院を訪れ、国民党へのロビー活動を行ったのも、予算通過を後押しするためだ。しかし、現状では「儀礼的な挨拶と平行線の議論」に終始しており、膠着状態の打開には至っていない。
米国は立法院だけでなく、台湾軍に対しても「もっと積極的に対外説明を行うべきだ」と明確に求めている。これを受け、国防部はSNSでの発信を強化。「国防への投資は平和への投資」というメッセージをFacebookに投稿したり、幹部の発言をショート動画にまとめたり、7大項目の予算内容を図解化したりと、米国の意向を反映した広報活動を展開している。
米国側は野党への圧力だけでなく、軍に対しても武器購入予算の必要性を積極的に説明するよう求めている。イメージ図。(写真/柯承恵撮影)
議論は平行線、顧部長と馬議員が激しい応酬 広報活動に加え、軍部は立法院へのロビー活動も活発化させている。多くの将官や上級参謀が立法院を頻繁に訪れ、顧立雄部長自らも黄文啓中将を伴い、お忍びで議員会館を訪問している。しかし、軍関係者が各議員の部屋を回っても、国民党議員の中には「詳細な特別予算資料や説明がない」として、対話を拒否する者もいる。
米国の圧力は高まり、グリーン処長までもが「自由はタダではない」と声を上げる中、国会では顧立雄部長と馬文君議員が互いに「ごまかしだ」「聞く耳を持たない」と非難し合う場面も見られた。時間は刻一刻と過ぎ、国防予算を巡る緊張は高まる一方だ。早ければ2026年3月にも特別条例の審議が始まる見通しだが、それまでの間、米国と軍部がいかにして立法院と向き合い、合意形成を図るかが、最大の焦点となる。
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