李忠謙コラム:中国の武力挑発は再燃したが、米国の武器は「届かない」 台湾が抱える防衛のジレンマ

2025年12月29日、解放軍東部戦区は「正義使命-2025」を展開し、海空の戦備パトロール、制空・制海などの制圧権奪取、重要港湾・要衝の封鎖と統制、「外線」での立体的な威嚇などを重点項目として実施した。台湾周辺の複数方向から接近し、各軍種が連携した訓練を通じて、戦区部隊の統合作戦能力を検証したとしている。(写真/環球時報より)
2025年12月29日、解放軍東部戦区は「正義使命-2025」を展開し、海空の戦備パトロール、制空・制海などの制圧権奪取、重要港湾・要衝の封鎖と統制、「外線」での立体的な威嚇などを重点項目として実施した。台湾周辺の複数方向から接近し、各軍種が連携した訓練を通じて、戦区部隊の統合作戦能力を検証したとしている。(写真/環球時報より)

中国人民解放軍は2025年12月29日、台湾周辺での大規模な軍事演習「正義使命-2025」を突如として発表し、翌30日には実弾射撃を実施した。この事態は、台湾の危機管理能力を再び試すものであると同時に、米国の対台湾防衛戦略における最も致命的な矛盾を露呈させた。ワシントンは台湾に対し、外敵を寄せ付けない「ヤマアラシ」や「ハリネズミ」へと変貌させるための武器提供を約束している。しかし、米国の軍事産業基盤の停滞により、それらの約束は「空手形」と化しているのが実情だ。

国国防総省は12月17日、総額110億ドル(約1.7兆円)を超える計8件という歴史的な対台湾武器売却案を発表した。この売却案の規模は、トランプ氏の就任以降で最大であるばかりか、バイデン氏の任期全体の合計額をも上回る異例のものとなった。

売却内容の多くは、台湾が掲げる「非対称防衛」戦略のニーズを満たすものである。具体的には、82セットの「高機動ロケット砲システム(HIMARS)」、420発の「陸軍戦術ミサイルシステム(ATACMS)」、60セットの自走砲システム、さらに対戦車ミサイル、対艦ミサイルシステム、関連ソフトウェアが含まれる。これらのラインナップは、台湾の防衛思想が、戦闘機や軍艦といった従来の「プラットフォーム指向」から、機動性が高く破壊されにくい「非対称兵器」へと転換したことを示している。こうした兵器は、上陸を試みる侵攻者に対して甚大な損害を与えることを目的としている。

米中首脳会談が優先か

かし、書面上では極めて印象的なこの売却案について、ワシントンのシンクタンク「外交評議会(CFR)」のデヴィッド・サックス氏は次のように指摘する。「今回の売却案の規模を考えれば、こうした中国側の反応(軍事演習)は予想された通りだ」。さらに同氏は『ニューヨーク・タイムズ』に対し、「習近平氏は、トランプ氏からの反撃を招くことなく圧力をかけられると確信しているようだ」と語っている。

サックス氏の判断は、現在の不安な戦略的現実を浮き彫りにしている。中国側は、トランプ政権が台湾問題の処理において「抑制的」であると見ている可能性があるのだ。特に、トランプ氏が2026年4月に中国を訪問し、米中首脳会談を行うのを前にして、その傾向は顕著である。 (関連記事: 舞台裏》中国軍なぜ今、台湾包囲演習なのか?米軍「ハイマース」を意識した標的訓練 台湾当局が分析する「4つの真の狙い」 関連記事をもっと読む

トランプ氏は10月の習近平氏との会談後、台湾について「話題にも上らなかった。実際には議論されなかった」と明言した。これは、必要とあらば米軍を投入して台湾を守ると何度も公言してきたバイデン政権とは鮮やかな対比をなしている。トランプ氏は台湾問題に対して明確な「戦略的曖昧さ」を保っており、それは「戦略的冷淡」とも呼べるほどだ。こうした背景の下で行われる中国の軍事演習は、単なる武器売却への抗議にとどまらず、トランプ政権が本当に台湾のために中国と対抗する意思があるのかを探る試金石となっている。

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