台湾の頼清徳総統は12月28日夜に放送された三立テレビの番組『話時代人物』の単独インタビューに応じ、中国人民解放軍(中国軍)の台湾侵攻能力や国内の政治情勢について語った。
米中央情報局(CIA)が「中国は2027年までに台湾侵攻能力を備える意図がある」と指摘している点について、頼総統は自らの分析を披露した。その上で、「もしその情報が事実であれば、逆に言えば現時点での中国軍の実力はまだ不足しているということであり、渡海作戦の難易度は極めて高い」と指摘。台湾は引き続き防衛のハードルを上げ続けるべきだと強調した。
一方で、野党陣営(国民党・民衆党)に対しては厳しい口調で批判を展開した。野党側がロシアのプーチン大統領を「独裁者ではない」と公然と称賛し、中国の習近平国家主席に歩み寄る姿勢を見せながら、台湾の民選総統に対しては弾劾を画策し、国防予算を阻み続けていることについて、「理解に苦しむ行動だ」と非難した。

「2027年準備」は現状の能力不足を露呈
頼総統はインタビューの中で、バーンズCIA長官の発言を引用し、「習近平氏が軍に対し2027年までに台湾侵攻の準備を完了するよう求めた」との情報について言及。「もしこれが事実なら、中国の実力が現時点では目標に達していないことを意味する」と分析した。
また、ロシア・ウクライナ戦争が陸続きの侵攻であるのに対し、中国が台湾を併合するには海を渡る必要があり、軍事的に巨大な難題であると指摘した。
頼総統は、「脅威を前にして慢心してはならない。唯一の選択肢は国防力の強化だ」と強調。自衛力の蓄積と国際協力を通じて、中国による侵攻の難易度を「永遠に達成不可能なレベル」まで引き上げ、国家の安全を確保するとの方針を示した。
さらに、「政府として中国を挑発することは絶対にない。かつての蒋介石・蒋経国時代のような『大陸反攻』を意図することもない」と明言する一方で、「万が一戦時となった場合、総統が『投降』するなどという情報は断じてデマであり、国民全員が背水の陣で戦う決意が必要だ」と訴えた。
野党の矛盾を痛烈批判 「プーチン擁護で総統弾劾」
国内政局と国防予算の停滞について、頼総統は野党への不信感を露わにした。野党連合が1兆2500億台湾ドル(約6兆円)に上る国防特別予算案を4度にわたり否決し、さらには総統弾劾を提案している現状を問題視した。
頼総統は「野党は戦争を仕掛けたプーチン氏を『独裁者ではない』と称え、習近平氏には友好的な態度をとる一方で、自国の民選総統に対しては激しい政治攻撃を仕掛けている。社会の公正な判断を仰ぎたい」と嘆いた。
また、国民党の鄭麗文主席が来年、中国を訪問し「鄭・習会談(鄭麗文氏と習近平氏の会談)」を行う可能性があるとの報道にも言及。国民党側は交換条件の存在を否定しているが、頼総統は「もし野党が理由もなく国防予算や国家安全法制を阻み続けるなら、その会談に『予算凍結・国安法廃止』などの前提条件がないとは誰も信じないだろう」と直言した。
「一中各表」から変質した野党の対中路線
頼総統はさらに、野党の対中路線に警告を発した。かつて国民党が主張していた「92年コンセンサス」は「一つの中国、解釈は各自(一中各表)」であったが、現在は「各表(解釈権)」について語らなくなり、実質的に「一中同表(中国側の解釈への同調)」に変質しており、中国人であることを誇りとする姿勢さえ見せていると批判した。
頼総統は現在中国が台湾に仕掛けている「5大脅威」として、以下を挙げた。
- 外交・法律戦による主権圧迫
- 国家アイデンティティの混乱
- 軍事浸透とスパイ活動
- 交流を利用した統一戦線工作
- 融合発展モデル区による台湾若者の取り込み
最後に頼総統は、「平和は実力によってのみ維持される。たとえ和睦を求めるにしても、実力という後ろ盾がなければ、それは単なる投降に過ぎない」と強調。野党に対し、中国の脅威を正視し、国防予算の実質審議に応じ、苦労して勝ち取った民主主義の成果を共に守るよう呼びかけた。
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編集:梅木奈実















































