NVIDIA(エヌビディア)の最新AI半導体「H200」が、中国市場への本格投入に向けて動き出した。アリババ、バイトダンス、テンセントといった中国テック大手の需要を取り込む狙いがあり、関係者の間では、NVIDIAのジェンスン・フアンCEOが来年1月にも自ら訪中するとの見方が広がっている。H200は旧正月前にも中国で販売が始まる可能性があるとされる。中国サプライチェーンの情報によれば、H200の価格は、これまで輸出が認められていた「H20」と比べておよそ3割高にとどまる見通しだ。性能が大幅に向上していることを踏まえれば、この価格設定は導入のハードルを大きく下げるものとして、市場では「高明な価格戦略」と受け止められている。
米テック系メディアWccftechは、業界アナリストのJukan氏がX(旧ツイッター)に投稿した分析を引用し、H200の8基構成モジュールの価格は約140万人民元(約3,000万円)になると報じた。これはH20と比べて約3割の上昇にとどまり、「世代交代」で想定されていた価格差を大きく下回る。
また、中国の半導体コンサルティング会社「蓉和諮詢」の呉梓豪CEOは、「性能密度」(TPP)を指標にした場合、H200の運算価値は約1万5832人民元で、H20の約6.7倍に相当すると説明する。一方で価格は約1.3倍の上昇にとどまり、単純な価格差以上に性能面の開きが大きいという。TPPは実体レベルの性能をより客観的に映しやすく、TFLOPSのみで比較すると、算出方法の違いによる誤差が出やすいとも指摘した。
China-bound H200: China supply essentially confirmed, yet only ~1.3x pricier than the H20…
— Jukan (@jukan05)December 24, 2025
According to Chinese media reports, Nvidia’s H200 sales to China are said to be virtually confirmed.
Also, Nvidia CEO Jensen Huang (ジェンスン・フアン) is reportedly scheduled to visit China in…pic.twitter.com/OtMWhbSKQY
こうした一連の動きは、NVIDIAの販売戦略にとどまらず、米国の先端技術輸出政策の変化を映し出している。
「拒否優先」から「取引」へ揺らぐ米国の輸出管理
米シンクタンク「民主防衛基金会(FDD)」で中国問題を研究する上級研究員、ジャック・ベーハン氏は、米誌『ナショナル・インタレスト』に寄稿した論考「ワシントンが新型半導体の輸出を認める背景には、中国の台頭がある」で、米国が当初AI半導体に厳格な輸出規制を敷いた理由をこう分析している。米国の狙いは、AI分野の「チョークポイント(choke point)」(供給を握ることで相手の能力を制限できる重要技術)を押さえ、中国の軍事近代化を遅らせることにあった。時間を稼ぎ、自国の優位を拡大する防衛的措置だったという。
この思想は、すでに撤回された「AI拡散フレームワーク(AI Diffusion Framework」に結実し、「取引より拒否を優先する」という方針が柱とされていた。ベーハン氏は、当時の政策は利益ではなく、対抗相手を遅らせ戦略的縦深を確保することを目的としていたと指摘する。
しかし、中国のAI技術が戦場医療、後方支援計画、台湾海峡有事への備えなど、軍事分野に徐々に組み込まれていく中で、米国は輸出規制の効果に疑問を抱き始めた。ベーハン氏は、ワシントンがAI拡散フレームワークを撤回し、国内半導体企業への投資を進める一方で、H20の輸出を認め、さらにH200まで容認したことについて、実質的に「拒否」から「取引」へ舵を切ったと批判している。



















































