京大、プロテスタント教理問答AI「カテキズムボット」を開発 聖書と教理書を基に対話型学習

京都大学は、キリスト教教義を学習データとする対話型AI「プロテスタント教理問答ボット(カテキズムボット)」を開発し、宗教多様性を踏まえたAI研究を本格化させた。(写真/京都大学提供)
京都大学は、キリスト教教義を学習データとする対話型AI「プロテスタント教理問答ボット(カテキズムボット)」を開発し、宗教多様性を踏まえたAI研究を本格化させた。(写真/京都大学提供)

プロテスタント教理問答ボット(カテキズムボット)を開発

国立大学法人京都大学は、キリスト教教義を学習・対話形式で提供するAI「プロテスタント教理問答ボット(通称:カテキズムボット)」の開発を開始した。京都大学人と社会の未来研究院の熊谷誠慈副研究院長・教授と、株式会社テラバース(CEO:古屋俊和)による研究開発グループが共同で取り組むもので、将来的なキリスト教AI創成に向けた出発点として位置付けられている。

同研究開発グループはこれまで、仏教チャットボットや仏教AR(拡張現実)など、複数の仏教AIプロダクトを開発してきた。宗教や哲学といった人類の知的遺産をAIによって継承・再構築する研究の一環として、今回新たにキリスト教分野へと開発領域を拡張した。

今回開発されたプロテスタント教理問答ボットは、「カテキズム」と呼ばれるキリスト教教義の入門的な概説書を基礎データとしている。カテキズムは、洗礼や堅信礼といった重要な通過儀礼の前に行われる教理教育や、質疑応答形式の問答を意味し、チャットボットの学習データとして適している点から、キリスト教AI開発の出発点として採用された。

学習データには、『新約聖書』に加え、宗教改革者マルティン・ルター(1483~1546年)による『小教理問答』、および17世紀に成立した『ウェストミンスター小教理問答』(1648年)が用いられている。

システム構造は、仏教対話AI「ブッダボットプラス」の枠組みを踏襲している。ユーザーからの質問に対し、『新約聖書』や各教理問答書の中から、AIが最も関連性が高いと判断した原典の文言を提示し、それをもとに大規模言語モデルを用いて解釈や補足説明を生成する仕組みを採用している。宗教的な教義に関する質問に加え、日常生活に関する問いについても、キリスト教の教えに基づいた回答や助言を行うことが可能としている。

キリスト教は日本国内では人口比約0.7%と少数派である一方、世界人口では約3割を占める宗教である。同ボットを通じて、キリスト教理解の入り口を提供することは、国際化が進む現代社会において宗教リテラシーの向上に寄与すると期待されている。

一方、生成AIを巡っては、情報の典拠不明確性、個人情報流出、著作権侵害などの課題が指摘されているほか、近年ではAIとの対話への過度な依存によるリスクも問題視されている。プロテスタント教理問答ボットでは、原典文献を明示的に機械学習させることで情報ソースの透明性を確保し、その他の課題についても段階的に対策を講じていく方針だ。

今後の展開先としては、国内のキリスト教系ミッション・スクールや神学校を想定しており、要望があれば英語圏を中心とした海外への導入も視野に入れている。学習データについても、ルター著『大教理問答』や『ウェストミンスター大教理問答』のほか、正教会、カトリック、聖公会、東方諸教会の重要文献を順次追加し、より包括的なキリスト教AIの構築を目指すとしている。

熊谷教授は「既存の仏教AIに加え、キリスト教AIを開発したことで、AI開発における宗教多様性を実現できた。今後も宗教や哲学とテクノロジーを融合した『伝統知テック』の開発を加速し、豊かなデジタル文化の創出に取り組んでいきたい」とコメントしている。

京都大学熊谷ラボと株式会社テラバースは今後も、人類史を代表する哲学者や宗教思想家の対話AIを順次開発し、デジタル空間における伝統知の再現と継承を進めていくとしている。

編集:小田菜々香

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