台湾海峡で核軍拡が加速か? 米国防総省が警告:中国、100発超のICBMを実戦配備 2027年までの「台湾統一能力」獲得を目標に

2025-12-25 15:28
中国の「九三軍事パレード」で披露された、東風31A(DF-31A)長距離弾道ミサイル。(AP通信)
中国の「九三軍事パレード」で披露された、東風31A(DF-31A)長距離弾道ミサイル。(AP通信)

ロイター通信は、米国国防総省(ペンタゴン)の報告書草案の内容を独占的に報じた。それによると、中国は新たに建設された3カ所のミサイル基地のサイロに、100発を超える大陸間弾道ミサイル(ICBM)「DF-31」を配備した可能性があるという。報告書は、中国が世界最速のペースで核兵器を増強していると指摘。現在の核弾頭数は約600発強だが、2030年までに1000発を突破すると予測している。さらに、人民解放軍は2027年末までに「台湾海峡での紛争に勝利する能力」を確保することを目指しているという。

報告書草案は、中国が軍備管理や核軍縮交渉に対して「全く意欲を示していない」と強調した。これは、中国やロシアと共に非核化を推進したいとするドナルド・トランプ米大統領の最近の発言とは対照的な実態を浮き彫りにしている。専門誌『原子力科学者会報(Bulletin of the Atomic Scientists)』の評価によれば、中国の核武庫の拡張と近代化のスピードは全核保有国の中で最速である。一方、中国当局はこうした報告を一貫して否定しており、「中国を貶め、国際社会を誤導するものだ」と反論している。

中国・モンゴル国境に100発超の「 DF-31」を集結、実戦配備を米側が初確認

報告書は特に、中国・モンゴル国境に近い新設のサイロ群に、100発以上の固体燃料型ICBM「DF-31」が配備された可能性を指摘している。米国側がミサイルサイロの存在を確認するだけでなく、「実際にミサイルが装填されている数」を具体的に評価したのはこれが初めてだ。これまで米政府は、新設されたサイロの地理的な位置こそ公表してきたが、実戦配備の状況については明らかにしていなかった。

アメリカ国防総省の所在である五角大楼。(AP通信)
米国防総省が入るペンタゴン(五角形の建物)。(AP通信)

国防総省はこの草案についてのコメントを控えている。一方、在米中国大使館は、中国は「常に防御的な核戦略を堅持しており、核戦力を国家安全保障に必要な最低限の水準に維持し、核実験停止の約束を遵守している」と回答した。

弾頭数は現時点で600発超、2030年には1000発超へ

報告書草案によると、2024年時点での中国の核弾頭数は600発強にとどまっており、ここ数年の生産スピードは以前に比べてやや鈍化しているという。

しかし、報告書は同時に、中国の核軍拡そのものが止まったわけではないと強調。現在のペースが続けば、2030年には弾頭数が1000発を超え、世界の核バランスを根本から変える恐れがあると警告している。

これに対し中国政府は、「自衛的な核戦略」と「核の先制不使用」政策を遵守しているとの主張を繰り返している。 (関連記事: 中国有力学者「米国家安全戦略は両岸統一に反対」 対立含みで台湾海峡情勢はより危険に 関連記事をもっと読む

東風31甲改(DF-31AG)機動型大陸間弾道ミサイル9月25日全射程戦備試射実況。(提供者提供)
DF-31A改良型(DF-31AG)移動式ICBMの、9月25日に行われた「全射程」での戦備試射の様子。(筆者提供)

膠着する軍備管理交渉、新STARTの失効に募る不安

報告書が発表されたタイミングは、2010年に署名された「新戦略兵器削減条約(新START)」の期限まで、残り2カ月を切った時期にあたっている。同条約は、現在も米ロ間で有効な最後(唯一)の核軍備管理合意であり、双方の戦略核弾頭の配備数を最大1550発、運搬システムを700基までに制限している。

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