米国のシンクタンク「戦略国際問題研究所」(CSIS)が2023年初めに発表したシミュレーションによると、24の「台湾海峡衝突」シナリオの中で、中国が台湾を完全に占領することができるのは2つのケースだけである。しかし、米国国防総省や日本の元高官は、たとえ北京が最終的に台湾を奪えなくても、戦火は止まらず、第一列島線を越えて日本に直接影響を及ぼす可能性があり、極端な状況では核のリスクを引き起こす恐れがあると指摘している。
台湾有事は日本有事を引き起こすのか?
日本の『週刊新潮』はこの局面の拡大を「存亡危機事態」と形容し、北京が武力行動を起こした場合、戦火が台湾海峡を超えて東シナ海や日本の南西諸島に広がる可能性が高く、「台湾有事は日本有事を引き起こす」というのは空論ではなく、複数のシミュレーションが示す戦略的現実であると述べている。
解放軍が台湾を攻撃した場合、日本の西南境界は圧力を受ける
日本陸上自衛隊の退役大将で元陸上幕僚長の岩田清文氏によると、CSISのシミュレーションで中国が台湾を成功裏に占領するシナリオは、「米軍が日本に即時展開できない」あるいは「日本が後方支援および軍事支援を行わない」状況を伴うものである。これらの仮定は、日本が地域戦略において重要な役割を果たしていることを反映していると彼は述べている。
岩田氏は、台海で戦争が勃発した場合、尖閣諸島が即座に戦略の焦点となると強調している。中国の海警や民兵、武装漁民が混乱に乗じて侵入し、現状を変えようとする可能性があり、与那国島の周辺海域も瞬時に「戦闘空域」と定義される可能性がある。中国と台湾の航空機が激戦中に日本南部の防空識別区域を越える可能性も高い。
彼は警告し、日本自衛隊が空域侵犯により緊急発進を迫られた場合、「日本が直接巻き込まれるリスクが大幅に増大する」と述べた。さらに、国土が台湾からわずか百数十キロメートルしか離れていないため、紛争の境界がほとんど日本本土と重なるとしている。
米国防総省、極端なリスクを指摘
岩田氏はまた、米国防総省が昨年発表した『中国軍事力報告書』(CMPR)を引用し、「台湾での軍事行動が失敗し、共産党政権の存続が脅かされた場合、先制的に核兵器を使用する可能性がある」と明記されていると述べた。
この内容に彼は極めて懸念を抱いており、核兵器使用のハードルは非常に高いが、北京が政権の基盤が揺らいでいると判断した場合、核の威嚇や限定的な使用が「最後の選択肢」となる恐れがあり、日本本土や在日米軍基地がミサイル射程内にあると指摘した。日本政府は長年「台湾有事は日本有事」として国防の枠組みとしてきたが、この報告書で初めて「核の可能性」が極端なシナリオに含まれたことで、日本の安全保障界隈は再び警戒を強めている。
米日台の反制能力が圧力を形成する
前日本外務省官僚で皇學館大学副教授の村上政俊氏は、解放軍が台湾を攻撃しようとすれば、一般に想像されるよりもはるかに難しいと分析している。まず、解放軍の艦艇は米日台の反艦ミサイルの攻撃にさらされ、その後も補給線を維持しなければならず、「たとえ上陸に成功しても、部隊が持ちこたえるのは非常に困難である」と述べている。
しかし、CSISのシミュレーション結果に従えば、「中国が最終的に侵略に失敗したとしても」、日本が痛みを伴わないことはないと彼は強調している。兵棋演習の推算では、日本自衛隊が112機の航空機と26隻の艦艇を失う可能性があり、これは歴史上のほとんどの戦闘の単一損失を上回る規模であると述べている。
村上氏は、もし中国が在日米軍基地を攻撃することを選んだ場合、「この状況は集団的自衛権の範疇を超える」と指摘し、在日米軍基地への直接攻撃は日本に対する武力攻撃と見なされ、個別的自衛権の行使が可能な「武力攻撃事態」に該当することになると述べている。つまり、日本はただ巻き込まれるだけではなく、第一線の戦区と見なされる可能性がある。 (関連記事: 日中、武力衝突寸前か 中国軍が自衛隊機に照射、日本は抗議 中国「遼寧への悪質追尾」主張 | 関連記事をもっと読む )
編集:佐野華美
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