高市早苗首相が「台湾有事論」を打ち出して以降、日中関係は急速に悪化の一途をたどっている。中国側は「斬首の脅し」とも受け取れる挑発的発言を繰り返し、中国国民に対しては日本への渡航自粛を呼びかけ、さらには経済報復を示唆するなど、対日圧力を強めてきた。最新の動きとしては、先週土曜日、中国軍戦闘機が航空自衛隊のF-15Jに対して火器管制レーダーを照射する事態にまで至り、日中両国はすでに軍事衝突の瀬戸際に立たされている。
こうした中、英紙『フィナンシャル・タイムズ』は、日本の山田茂夫駐米大使が、トランプ政権に対して日本への公の支持を一層強化するよう要請していたものの、米側から具体的な行動が示されておらず、高市政権が強い失望感を抱いていると報じた。
関係筋によると、山田駐米大使は緊急にトランプ陣営の中枢に接触し、より明確で強力な支持表明を米側に求めたという。しかし、東京に届いたのは、ジョージ・グラス(George Glass)駐日米大使によるメディア向け発言のみで、日本側が期待していたトランプ氏自身による声明(少なくともSNS上での発言)や、アメリカ国務長官による公式声明はついに出されなかった。結果として追加されたのは、米国務省副報道官がX(旧ツイッター)上に投稿した、型どおりの声明文だけだったという。
では、なぜ米国はここまで慎重な姿勢をとっているのか。『フィナンシャル・タイムズ』によれば、その最大の理由は、トランプ氏が側近たちに対し、「今年10月に習近平国家主席と合意した貿易協定を危険にさらすような行動は一切取るな」と、明確な「箝口令」を敷いている点にあるという。
トランプ氏にとって、この農産物の大規模購入や関税免除を含む貿易協定は、第2期政権の初期を飾る最重要の政治的成果であり、この合意を最優先事項として守るためであれば、地政学的問題は当面、二の次にされているのが実情だ。
ある日本政府高官は、公の場では冷静さを保ちながらも、私的には次のように認めたという。
「東京は、日米安保に基づく米国の防衛義務そのものが揺らいでいるとは考えていない。しかし、ワシントンからの公的な支持表明が著しく欠けている現状には、強い失望を抱いている」
皮肉な現実:「戦略的明確性」と「戦略的沈黙」が交錯する瞬間
こうした失望感は、米国の「知日派」コミュニティでも同様に広がっている。元ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)アジア担当上級官僚で、現在はコンサルティング会社「ザ・アジア・グループ(The Asia Group)」に所属するクリストファー・ジョンストン氏(Christopher Johnstone)は、米国が長年にわたり日本に対し、台湾海峡問題についてより明確な立場を示すよう求めてきたと指摘したうえで、次のように語った。 (関連記事: 杜宗熹のコラム:米国は「台湾有事」に冷淡?トランプ政権、日中対立よりウクライナ停戦とベネズエラ出兵を優先 | 関連記事をもっと読む )
「本来であれば、ワシントンが歓迎すべき瞬間だった。これは、日本の首相が台湾危機の際における対米義務について、これまでで最も明確な発言をした場面だったからだ。この発言が賢明だったかどうかはさておき、米国は声を大にして支持を表明すべきだった。しかし、大使館からの短いメッセージを除けば、ここはほとんど沈黙に包まれている」


















































