揭仲コラム:高市早苗首相発言で高まる対中緊張 中国の計算とは

2025-12-05 17:31
高市早苗首相の相次ぐ発言は日中関係に外交的な波紋を広げたが、その戦略的な焦点は台湾にあるとの見方も出ている。写真はドナルド・トランプ氏(左)と並ぶ高市首相(右)。(写真/ウォール・ストリート・ジャーナル提供)
高市早苗首相の相次ぐ発言は日中関係に外交的な波紋を広げたが、その戦略的な焦点は台湾にあるとの見方も出ている。写真はドナルド・トランプ氏(左)と並ぶ高市首相(右)。(写真/ウォール・ストリート・ジャーナル提供)

高市早苗首相が11月7日の衆院答弁で示した台湾情勢に関する発言が、「台湾有事は日本有事」との明確な立場表明だと受け取られ、日中間の外交摩擦が一気に激化した。中国政府と国営メディアは強く反発し、旅行警告、文化作品の公開停止、水産品の輸入禁止など、対日圧力を段階的に強めている。

高市首相、発言を二度修正するも中国の強い反発を招く

トランプ氏が習近平氏や高市早苗氏と相次いで電話会談を行った後、高市氏は11月26日の国会答弁で、11月7日の発言を「具体的な事態が発生した際には政府が総合的に判断する」と修正した。しかしその直後、『サンフランシスコ平和条約』に基づき、日本は「台湾の法的地位や性質を判断する権限を持たない」と述べたことで、中国のさらなる反発を招いた。

中国の呉江浩・駐日大使は11月30日付『人民日報』で、高市氏の発言を「情勢を誤判し、時代の潮流に逆行し、壁に衝突する破壊的行為」と厳しく批判した。自国の政府系メディアで、現職大使が駐在国の首相を名指しで非難するのは極めて異例であり、中国が高市氏の新たな発言を非常に否定的に受け止めていることを示している。

12月1日には『人民日報』第三版に、「鐘声(中国の声/警鐘)」の筆名で論評が掲載され、高市氏の11月26日の発言を「台湾地位未定論の鼓吹」と見出しで断定した。「鐘声」は中国が重大な外交案件に対する公式姿勢を示す際に使う筆名でもあり、中国の強い警戒感がうかがえる。

こうした緊張の高まりを受け、高市氏は12月3日、公明党議員から「台湾に関する日本政府の立場は、日中共同声明にある通り、全く変更がないという理解でよろしいのか」と問われ、「台湾に関する我が国政府の基本的立場は、1972年の日中共同声明の通りであり、この立場に一切の変更はございません。」と簡潔に回答した。

この発言は、中国が求めてきた立場表明の方向性に沿うもので、今回の外交摩擦の沈静化につながる可能性がある。ただし、11月26日の発言によって中国が受けた衝撃が大きかったことから、これで中国側が手を引くのか、あるいは日本政府に対しより明確な文書化や補足説明を要求するのか、今後の推移が注視される。

中国の対日圧力におけるボトムライン

11月7日以降、中国政府と国営メディアは日本に対し「間違った発言を速やかに撤回せよ」と求め続けてきた。しかし中国自身、国際政治の場で政府首脳が外交上の論争で「発言撤回」まで行うことが極めて稀であることを理解している。中国が本当に求めているのは、日本が「対中コミットメント」を明確な行動として示すこと、特に高市氏本人が中国の受容可能な文言を公式に表明することである。すなわち台湾独立反対の国際枠組みに資する、より明確なメッセージを日本側に求めていると言える。 (関連記事: 麻生氏「中国に言われる位でちょうどいい」 高市首相の台湾有事答弁支持 関連記事をもっと読む

2012年9月から2014年11月の尖閣諸島「国有化」をめぐる日中間の対立にも似ている。当初、中国外務省の楊潔篪外相や羅照輝アジア局長は日本に「購入撤回」を直接求めていたが、紛争が長期化すると、要求は「誤りを正すための実際の措置」という曖昧な表現へと移行し、状況に応じて柔軟に文言を変えていった。

最新ニュース
中国、「サンフランシスコ講和条約」拒否を表明 ネットユーザー「台湾の日本復帰おめでとう!」と反応
中国「サンフランシスコ平和条約は無効」発言が波紋 下関条約と台湾の法的地位めぐり日台SNSで議論活発化
ホンジュラス大統領選、トランプ氏の「支持表明」影響浮上 開票率84%で1ポイント差
GREEN×EXPO 2027公式グッズに新商品5種 うちわ・巾着・ナップザックも登場
日本新聞協会・中村史郎会長「生成AIの無断利用が報道を脅かす」 法整備の必要性を訴え
台湾・民衆党党首の黄國昌氏への批判が急増 柯文哲氏「鄭麗文氏よりも各番組が激しく黄氏を叩いている」
東ハト、12月の新商品を発表 受験生応援「カナエルコーン」と開運デザイン菓子が登場
単独インタビュー》台湾1.25兆台湾ドルの国防予算、米国はどう評価しているのか RAND専門家が解説
Nothing、世界のクリエイターと共創する「Phone (3a) Community Edition」を発表 12月9日公開
日本橋三越で「2025年報道写真展」12月10日開幕 東京写真記者協会賞2025作品含む約300点を展示へ
日本のデータセンター建設が進まない謎 クラウド大手が殺到しても建てられない、人手不足と旧態プロセスでゼネコンの予定は数年先まで埋まる
「中国版エヌビディア」摩爾線程(Moore Threads)が上場 初値468%高 創業者はNVIDIA出身
台湾、中国アプリ「小紅書(RED)」を1年間遮断 詐欺1700件超と情報セキュリティ不適合が理由
生成AI悪用か、快活CLUBで会員情報700万件超流出 17歳男子高校生を不正アクセス容疑で逮捕、警視庁発表
独占インタビュー》トランプ政権の「予測不能」は戦略か 元トランプ選挙対策責任者が語る米国の同盟観と対中・対日・対台姿勢
台湾大学で結核感染事例発生! 学生が「感染拡大の兆候」と噂、保健局が症例調査範囲の拡大示唆
台湾はトランプ氏を誤解? 台湾保証実施法案の裏にある「それでも米国の国益優先」 米シンクタンク「短期的に中国を刺激することはない」
石破茂氏、「李登輝氏は日本を最も理解している」と講演 日台中関係の複雑化を強調
麻生氏「中国に言われる位でちょうどいい」 高市首相の台湾有事答弁支持
米「台湾保証法案」成立で中国が猛反発 台湾外交部「覇権主義」と応酬
「力で平和を守る」台湾・頼清徳総統がNYTサミット登壇 習近平氏に「戦争より民生を」と異例の訴え
台湾の頼清徳総統、米NYTサミットで発言 「力による平和維持」を強調、民主陣営との結束の重要性訴え
中国人観光客、台湾パスポート風カバーで訪日か 台湾SNSで反発広がる
理想化された「配達員生活」に反発噴出 中国官製動画「現実とかけ離れている」と批判殺到、公開直後に削除
映画『アフター・オール・ディーズ・イヤーズ』15年ぶり公開 主演・大塚匡将とリム・カーワイ監督が舞台挨拶
資生堂が苦境に立たされる中、花王は逆風を乗り越えて成長する理由 日本の2大百年コスメブランドの運命を分けた3つのポイント
マレーシア航空MH370便の行方不明から11年、再捜索を決定!「約1085億円の報奨金」で航空史最大の謎解明を目指す
舞台裏》蔡英文時代の評価されなかった人物が賴清德時代に復活!法務部長の強い意志が反映された検察システムの激変
小田急ホテルセンチュリーサザンタワー、「ストロベリーアフタヌーンティー」期間限定開催 苺スイーツが主役の華やかティータイム
夢は美容師だった――ノーベル平和賞受賞者ナディア・ムラド氏、台湾・中央研究院で語った「ISによる性被害と生還」
アジア版「循環型都市宣言制度」が始動 横浜市が第1号都市に、国際枠組み本格化
中国の対日規制が強化 林佳龍外相、台湾有事めぐる緊張は「年単位」との見通し示す 日本への支持も表明
東京2025世界陸上、日本開催に好意的65.2% 電通調査で観戦熱とメディア効果が判明
静岡市で「ホビー×クリスマス」一体型イベント 模型・クラフト・マーケット横断の大型フェスタ12月開催
「GREEN×EXPO 2027」公式商品に新展開 サンリオコラボ第1弾に追加アイテム、12月5日発売へ
東急プラザ銀座、「GinzaNovo」に改称 2025年12月、新ブランドとして再始動
ファミマ、大谷翔平の「最優秀おむすびパーソン」受賞記念で4万人に無料クーポン配布へ
東京コミコン2025限定 Happyくじ「ムジョルニア&ストームブレイカーみくじ」発売へ MARVEL歴代デザインが集結
AKB48、6年ぶり紅白復帰 20周年記念で前田敦子・高橋みなみらOG8人集結 「第76回NHK紅白歌合戦」出演へ
Netflix『ストレンジャー・シングス』最終章記念 「STRANGER THINGS HOUSE」原宿V.A.で期間限定オープン
森美術館、2026年度の展覧会予定を発表 ロン・ミュエク、森万里子の大型個展を開催へ
ソフトバンク、台湾最速級158キロ右腕・徐若熙の獲得が決定的 日米争奪戦を制し先発補強の大本命に
Googleの次世代TPUに台湾MediaTekが参画 NVIDIAに包囲網、収益40億ドル規模の試算
TSMCの米国進出でもアジア依存は続く?インテル前CEO「供給構造は簡単に変わらない」
AI投資は「現代のゴールドラッシュ」か 49年ラッシュに重なる熱狂とバブルの影
韓国戒厳令から1年 尹錫悦氏が残した政治的混乱、韓国は深刻な対立に直面
高市首相「対台湾政策は不変」 「1972年日中共同声明に基づく」を重ねて強調
日中関係の悪化回避を模索 日本の商工団体、日中友好議員連盟幹部が中国大使と会談
高市政権、衆院議席削減試算を公表へ 旧姓使用の法制化も本格始動
『ウォール・ストリート』が注目する投資はポケモンカード?利益率3800%急騰、専門家は「ポケカバブル」に警告