日本のデータセンター建設が進まない謎 クラウド大手が殺到しても建てられない、人手不足と旧態プロセスでゼネコンの予定は数年先まで埋まる

2025-12-05 16:04
データセンターのイメージ。米バージニア州北部でVantage Data Centersが計画する3番目のキャンパス「VA3」の完成予想図。(AP通信)
データセンターのイメージ。米バージニア州北部でVantage Data Centersが計画する3番目のキャンパス「VA3」の完成予想図。(AP通信)

世界各地でデータセンター建設が加速する中、多くの国では電力確保が最大の課題となっている。しかし日本では、より根本的なボトルネックが「建物そのもの」だと指摘されている。『日経アジア』は3日付で、労働力不足や旧来の建設プロセス、そしてコスト上昇が重なり、世界のクラウド大手や中国系テック企業が日本での拠点確保を求めても、建設できる枠が確保できない状況が続いていると報じた。こうした逼迫は、日本のAI競争力を押し下げかねないという。

アイルランド系コンサルティング会社 Linesight の日本統括責任者である湯家武彥氏は、今年8月に東京オフィスへ移転したばかりだ。湯家氏のもとには、米国の大手クラウド事業者、シンガポールの投資家、オーストラリアの運営企業などから毎週のように問い合わせが寄せられる。日本で新規データセンター案件を検討するためだ。中には、主施工業者が決まる前に先に土地だけを押さえる投資家もいるという。

湯家氏は『日経アジア』に対し、日本でのデータセンター需要が急拡大していると指摘し、「この勢いがすぐに落ち着くようには見えない」と語った。

ただ、相談を受けた計画がそのまま案件化するとは限らない。大林組で幹部を務めた経験を持つ湯家氏によれば、開発側が建設を依頼できる施工会社を確保できず、契約に至らない例が相次いでいるという。

日本の建設業界は長年、深刻な労働力不足とデジタル建設技術の導入遅れに直面してきた。加えて、近年は中国系テック企業が米国の半導体規制でデータセンター向けサーバーの調達が難しくなったことから、日本で計算資源を確保しようとする動きが強まり、市場の逼迫を一段と加速させている。

建設供給の逼迫がAI競争力の足かせに

高市早苗首相はAIを成長の柱に据え、ソフトバンクや富士通なども国家主体の「主権AI」構築を掲げる。しかし『日経アジア』は、こうした戦略が、アナログ時代の慣行が残る建設プロセスと逼迫する施工能力によって「立ち上がりを阻害する可能性がある」と分析する。

2025年11月23日、日本首相高市早苗が南アフリカ・ヨハネスブルグでG20サミットに出席(美聯社)
2025年11月23日、南アフリカ・ヨハネスブルクで開かれたG20サミットに出席する高市早苗首相。(AP通信)

鹿島建設、大成建設、大林組といった大手ゼネコンは、今期の利益が過去最高を見込む状況にある。それでも建設枠の逼迫は深刻で、データセンター開発企業や建設関係者によれば、これら大手は少なくとも2028年まで新規案件を受注できない状態だという。電力設備を担当する一部の下請け企業では、2029年以降まで予定が埋まっているケースもある。

大成建設の相川善郎社長は11日の決算説明会で、「データセンターへの投資が継続的に強い」うえ、半導体・製薬関連プロジェクトが活発であることから、建設供給の逼迫は続くとの見方を示した。

この状況は、巨大な演算需要を抱えるハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)にとって大きな課題となる。AI用データセンターには高度な冷却システムや高密度の設備構成が必須だ。Nvidia(エヌビディア)の最新GPUを搭載するサーバーを導入する際も、施設側の仕様が適合していることが出荷条件になるという。

最新ニュース
台湾・民衆党党首の黄國昌氏への批判が急増 柯文哲氏「鄭麗文氏よりも各番組が激しく黄氏を叩いている」
東ハト、12月の新商品を発表 受験生応援「カナエルコーン」と開運デザイン菓子が登場
単独インタビュー》台湾1.25兆台湾ドルの国防予算、米国はどう評価しているのか RAND専門家が解説
Nothing、世界のクリエイターと共創する「Phone (3a) Community Edition」を発表 12月9日公開
日本橋三越で「2025年報道写真展」12月10日開幕 東京写真記者協会賞2025作品含む約300点を展示へ
「中国版エヌビディア」摩爾線程(Moore Threads)が上場 初値468%高 創業者はNVIDIA出身
台湾、中国アプリ「小紅書(RED)」を1年間遮断 詐欺1700件超と情報セキュリティ不適合が理由
生成AI悪用か、快活CLUBで会員情報700万件超流出 17歳男子高校生を不正アクセス容疑で逮捕、警視庁発表
独占インタビュー》トランプ政権の「予測不能」は戦略か 元トランプ選挙対策責任者が語る米国の同盟観と対中・対日・対台姿勢
台湾大学で結核感染事例発生! 学生が「感染拡大の兆候」と噂、保健局が症例調査範囲の拡大示唆
台湾はトランプ氏を誤解? 台湾保証実施法案の裏にある「それでも米国の国益優先」 米シンクタンク「短期的に中国を刺激することはない」
石破茂氏、「李登輝氏は日本を最も理解している」と講演 日台中関係の複雑化を強調
麻生氏「中国に言われる位でちょうどいい」 高市首相の台湾有事答弁支持
米「台湾保証法案」成立で中国が猛反発 台湾外交部「覇権主義」と応酬
「力で平和を守る」台湾・頼清徳総統がNYTサミット登壇 習近平氏に「戦争より民生を」と異例の訴え
台湾の頼清徳総統、米NYTサミットで発言 「力による平和維持」を強調、民主陣営との結束の重要性訴え
中国人観光客、台湾パスポート風カバーで訪日か 台湾SNSで反発広がる
理想化された「配達員生活」に反発噴出 中国官製動画「現実とかけ離れている」と批判殺到、公開直後に削除
映画『アフター・オール・ディーズ・イヤーズ』15年ぶり公開 主演・大塚匡将とリム・カーワイ監督が舞台挨拶
資生堂が苦境に立たされる中、花王は逆風を乗り越えて成長する理由 日本の2大百年コスメブランドの運命を分けた3つのポイント
マレーシア航空MH370便の行方不明から11年、再捜索を決定!「約1085億円の報奨金」で航空史最大の謎解明を目指す
舞台裏》蔡英文時代の評価されなかった人物が賴清德時代に復活!法務部長の強い意志が反映された検察システムの激変
小田急ホテルセンチュリーサザンタワー、「ストロベリーアフタヌーンティー」期間限定開催 苺スイーツが主役の華やかティータイム
夢は美容師だった――ノーベル平和賞受賞者ナディア・ムラド氏、台湾・中央研究院で語った「ISによる性被害と生還」
アジア版「循環型都市宣言制度」が始動 横浜市が第1号都市に、国際枠組み本格化
中国の対日規制が強化 林佳龍外相、台湾有事めぐる緊張は「年単位」との見通し示す 日本への支持も表明
東京2025世界陸上、日本開催に好意的65.2% 電通調査で観戦熱とメディア効果が判明
静岡市で「ホビー×クリスマス」一体型イベント 模型・クラフト・マーケット横断の大型フェスタ12月開催
「GREEN×EXPO 2027」公式商品に新展開 サンリオコラボ第1弾に追加アイテム、12月5日発売へ
東急プラザ銀座、「GinzaNovo」に改称 2025年12月、新ブランドとして再始動
ファミマ、大谷翔平の「最優秀おむすびパーソン」受賞記念で4万人に無料クーポン配布へ
東京コミコン2025限定 Happyくじ「ムジョルニア&ストームブレイカーみくじ」発売へ MARVEL歴代デザインが集結
AKB48、6年ぶり紅白復帰 20周年記念で前田敦子・高橋みなみらOG8人集結 「第76回NHK紅白歌合戦」出演へ
Netflix『ストレンジャー・シングス』最終章記念 「STRANGER THINGS HOUSE」原宿V.A.で期間限定オープン
森美術館、2026年度の展覧会予定を発表 ロン・ミュエク、森万里子の大型個展を開催へ
ソフトバンク、台湾最速級158キロ右腕・徐若熙の獲得が決定的 日米争奪戦を制し先発補強の大本命に
Googleの次世代TPUに台湾MediaTekが参画 NVIDIAに包囲網、収益40億ドル規模の試算
TSMCの米国進出でもアジア依存は続く?インテル前CEO「供給構造は簡単に変わらない」
AI投資は「現代のゴールドラッシュ」か 49年ラッシュに重なる熱狂とバブルの影
韓国戒厳令から1年 尹錫悦氏が残した政治的混乱、韓国は深刻な対立に直面
高市首相「対台湾政策は不変」 「1972年日中共同声明に基づく」を重ねて強調
日中関係の悪化回避を模索 日本の商工団体、日中友好議員連盟幹部が中国大使と会談
高市政権、衆院議席削減試算を公表へ 旧姓使用の法制化も本格始動
『ウォール・ストリート』が注目する投資はポケモンカード?利益率3800%急騰、専門家は「ポケカバブル」に警告
台湾は米国の「中国抑制の切り札」か 台湾大・明居正名誉教授が警告 米国が台湾を放棄すれば財政崩壊の恐れ
第26回東京フィルメックス、各賞決定 最優秀作品賞は『サボテンの実』 観客賞は『左利きの少女』
トランプ氏が「台湾保証実施法案」に署名 台湾側は米台関係を「インド太平洋安定の基盤」と評価
衆院25議席削減で与党が合意 自民党内に「あまりに粗暴」と批判も
中国の圧力が「逆効果」?謝金河氏が分析 浜崎あゆみ公演中止と高市首相支持率
日本、フィリピンに「03式地対空ミサイル」輸出を検討 南シナ海防衛強化を支援