トップ ニュース 「力で平和を守る」台湾・頼清徳総統がNYTサミット登壇 習近平氏に「戦争より民生を」と異例の訴え
「力で平和を守る」台湾・頼清徳総統がNYTサミット登壇 習近平氏に「戦争より民生を」と異例の訴え 2025年12月2日、頼清徳総統は宜蘭県の後備旅第3営を激励訪問し、後備部隊によるドローン運用を初めて視察した。(写真/張曜麟撮影)
米ニューヨーク・マンハッタンのリンカーン・センターで開催された米紙『ニューヨーク・タイムズ』主催の政経フォーラム「DealBook Summit」において、台湾の頼清徳総統は3日、「台湾総統(Taiwan President)」の肩書でオンラインインタビューに応じ、司会のアンドリュー・ロス・ソーキン(Andrew Ross Sorkin)氏と、400億ドル規模に上る特別国防予算のコミットメントについて語るとともに、「安全保障の対価を支払っているのか」「半導体生産が海外に流出するのではないか」という二重の懸念に対し、歴史的背景と経済力をもって応じた。
戦火の縁に立つ冷静な決断 400億ドルは「覚悟」の表明 インタビューの冒頭、ソーキン氏は、先週頼総統が打ち出した衝撃的な発表――400億ドルに及ぶ特別国防予算に話題を集中させた。この巨額資金は、米国製兵器の追加調達に充てられ、中国から迫る侵攻の脅威を抑止することを狙いとしている。頼総統は、「中国による軍事演習はもはや単なるパフォーマンスではなく、『より頻繁で、より高強度』の実戦シミュレーションに変わっている」と指摘。人民解放軍の活動はすでに第1列島線を突破し、第2列島線にまで及び、影響力をインド太平洋地域全体へ拡大しようとしていると警鐘を鳴らした。これは台湾への脅威にとどまらず、世界秩序そのものへの挑戦でもあると述べた。
頼総統は「平和はかけがえのないものであり、戦争に勝者は存在しない。しかし、幻想を抱いてはならない。平和は実力によってのみ守ることができる」と強調した。
米国のドナルド・トランプ大統領は選挙期間中、台湾に対し国防支出をGDPの10%に引き上げるべきだとたびたび主張し、当選後も少なくとも5%に引き上げるよう圧力をかけている。現在、台湾の国防予算はGDP比で約2.45%にとどまっているが、頼総統は2030年までにトランプ氏が示した水準に引き上げると約束した。これは軍事上の決断であると同時に、「取引の芸術」を重んじるトランプ政権に対し、台湾は自らの安全保障に「対価を支払う意思がある」ことを示す政治的な「名刺」でもある。
さらに頼総統は、軍事力のみならず、中国への経済依存を減らすことも「国防の一部」であると述べた。2010年には台湾の対外投資の83.8%が中国に向けられていたが、昨年にはこの比率が7%にまで急減したという。これは驚くべき構造的転換であり、台湾経済はすでに「デカップリング」に伴う最も痛みの大きい段階を終え、多元化とレジリエンスの時代へと移行している。この変化があるからこそ、中国経済が減速する中でも、台湾はなお力強い成長を維持できているのだと説明した。
(関連記事:
台湾の頼清徳総統、米NYTサミットで発言 「力による平和維持」を強調、民主陣営との結束の重要性訴え
|
関連記事をもっと読む
)
ワシントンの霧 真の同盟国は誰か しかし、トランプ氏の「米国第一主義」により、米台関係はいまだ不透明さを帯びている。前任のジョー・バイデン大統領が4度にわたり「台湾防衛のため出兵する」と明言したのとは対照的に、トランプ氏は、中国が台湾に侵攻した場合に米国がどのように対応するかについて、明確な言及を避け続けている。
同じサミットの場では、米財務長官スコット・ベッセント(Scott Bessent)氏が、台湾側が抱く米国への信頼に関する疑問を問われ、「米国は中国の同盟国だ(ally)」と発言し、司会が「中国か台湾のどちらか」と問い返すと、「それに加えて台湾だ」と付け加えた。
戦略的競争相手である中国と、民主主義のパートナーである台湾を同列に語る発言は、台湾の不安を一層強めた。しかし頼総統は、いわゆる「疑米論」に陥ることなく、米台関係は「堅若磐石(盤石のように少しの搖るぎもない)」と強調。トランプ個人の約束に言及することを避け、構造的な協力関係に話題を転じた。「トランプ大統領の就任後も、米台協力は途切れることなく、むしろ拡大している」と述べた。
「シリコン・シールド」の再定義 分業から「米国製造」へ 話題が半導体に及ぶと、場の空気はさらに微妙さを帯びた。トランプ氏は過去に、台湾が「米国の半導体ビジネスを奪った」と公然と批判し、台湾は「保護費」を支払うべきだと示唆してきた。国防予算が軍事的な力比べだとすれば、半導体はこの地政学的ゲームの切り札である。トランプ政権は「今後2〜3年で、世界の半導体の40〜50%を米国で製造する」との野心的目標を掲げており、これは台湾の「シリコン・シールド(半導体防衛)」の地位を弱体化させる可能性を秘めている。司会のソーキン氏は鋭く問い掛けた。「それは台湾の価値を高めるのか、それとも失わせるのか」。
頼総統はトランプ氏の時間軸に真っ向から反論することはせず、「エコシステム」という概念で半導体産業を説明した。「米国は研究開発と設計、日本は材料、オランダは製造装置、台湾は先端プロセス、韓国はメモリ分野に強みを持つ」と述べ、半導体産業は単独の国では完結し得ないと示唆した。一方で「台湾の半導体産業はグローバル・アセット(Global Asset)である」と強調し、TSMCの米国投資は単に米国の「再工業化」を支援するためではなく、米国を世界のAI拠点とするための戦略的布石でもあると語った。
先端半導体の対中輸出を制限すべきかとの問いには、2000年前後に台湾国内で激論となった「半導体の対中進出」問題を引き合いに出した。当時、台湾社会は「中国に工場を移すべきではない」という結論に達したとし、「それは賢明な判断だった」と振り返った。この発言はまた、台湾がすでに25年前に「民主陣営の技術の門番」である道を選択していたという、米国への一つのメッセージとも受け取れる。
ニュース補足:2000年の『対中進出』論争
2000年前後、中国の改革開放が進む中、台湾では「戒急用忍(慎重に抑制)」と「大胆西進(積極進出)」という二つの路線が激しく対立した。当時、TSMC創業者の張忠謀氏らは中国市場に関心を示していたものの、台湾は初の政権交代直後であり、国家安全保障の観点から先端産業の対中進出を厳しい N-1制限(最新プロセスより1世代遅れたプロセス) が設けられた。 この判断は当時、産業界から批判を浴びたが、結果的には最先端技術を台湾にとどめ、今日のAI時代における台湾の中核的地位を築くことに寄与した。
終盤の焦点は経済とAI、そして習近平へのメッセージ インタビューの終盤、話題は経済の足元に戻り、AIブームは「バブル」なのか、そして中国経済の減速が習近平氏の判断にどう影響するのかが問われた。頼総統は、国際協力を通じて「ソフトランディング」を実現し、長期的な世界成長を促すべきだと述べた。
2025年の台湾はAIブームの恩恵を大きく受け、経済成長率は7.37%に達する見通しであるのに対し、中国は4%前後にとどまっている。中国経済の苦境について、頼総統は「台湾は心から習近平主席が領土拡張ではなく、国民生活の改善に注力することを望んでいる」と述べ、経済問題への対応において「台湾は、こうした経済的課題に対し、必要な支援を行い、中国と協力する用意がある(Taiwan is willing to help and to cooperate in addressing these economic challenges)」と語った。
更多新聞請搜尋🔍風傳媒
最新ニュース
中国人観光客、台湾パスポート風カバーで訪日か 台湾SNSで反発広がる 高市早苗首相が国会で「台湾有事」に言及して以降、日中関係は急速に冷え込み、中国は渡航警告の発出、世論戦、経済的圧力などの措置を相次いで打ち出してきた。こうした中、両国の民間レベルでも緊張感が明らかに高まっている。こうした背景の下、最近、一部の中国人観光客が、日本で差別や冷たい視線を受けることを避けるため、中国のパスポートの上から「台湾」を連想させるデザインの......
アジア版「循環型都市宣言制度」が始動 横浜市が第1号都市に、国際枠組み本格化 横浜市が開催した「アジア・スマートシティ会議2025」において、アジアで循環型都市を推進するための新たな国際枠組み「アジア循環型都市宣言制度」が始動した。欧州では2020年に「欧州循環型都市宣言制度」が創設され、現在までに約90都市が参加しており、都市間で課題や先進的な施策を共有しながら資源循環や脱炭素に向けた政策を高め合っている。横浜市はアジアでも同様の共......
東京2025世界陸上、日本開催に好意的65.2% 電通調査で観戦熱とメディア効果が判明 株式会社電通は1日、同社グループの「スポーツ未来研究所」が実施した「東京2025世界陸上」に関する観戦実態およびメディア接触調査の結果を発表した。調査は全国18〜69歳の男女3,000人を対象に行われ、18年ぶりの日本開催となった大会が社会にどのような影響を与えたかを明らかにすることを目的とした。調査では、東京2025世界陸上が「日本で開催されて良かった」と......
東急プラザ銀座、「GinzaNovo」に改称 2025年12月、新ブランドとして再始動 東京・銀座のランドマークとして知られる東急プラザ銀座は、2025年12月1日より施設名称を「GinzaNovo(ギンザノボ)」へ変更し、新たなブランドとして再出発した。名称は「新しい」を意味するラテン語 “Novo” と、「新星」=“Nova” の語源を踏まえ、銀座にもたらす「新しい象徴」としての存在を示すものとしている。リブランド後の施設は、上層階へのアク......
ファミマ、大谷翔平の「最優秀おむすびパーソン」受賞記念で4万人に無料クーポン配布へ ファミリーマートは、おむすびアンバサダーを務める大谷翔平選手が2025年の「Most Valuable Omusubi Person(最優秀おむすびパーソン・MVOP)」に選ばれたことを記念し、12月5日から公式Xアカウントにて「おむすび無料クーポン」を4万名に配布するキャンペーンを実施すると発表した。ファミリーマートは、大谷翔平選手のMVOP受賞を記念し、......
森美術館、2026年度の展覧会予定を発表 ロン・ミュエク、森万里子の大型個展を開催へ 森美術館(東京都港区、館長・片岡真実)は、2026年度の企画展スケジュールを発表した。テーマは「人間とは何か、感情とは何か、我々はどこから来て、どこへ向かうのか」。戦争や自然災害など混迷する世界情勢を背景に、人間性や普遍的価値を現代アートの視点から探る。4月29日から9月23日までは、スーパーリアルな人体彫刻で世界的に知られるオーストラリア出身の彫刻家ロン・......
TSMCの米国進出でもアジア依存は続く?インテル前CEO「供給構造は簡単に変わらない」 米国のドナルド・トランプ大統領は就任後、台湾に半導体産業を奪われたと不満を示してきた。トランプ氏はメディアのインタビューで、米国がかつて半導体製造を海外移転したこと、特に台湾へ輸出したことが「愚かな判断だった」と述べ、現在ではほぼ100%の半導体が台湾で生産されていると指摘した。しかし、インテルの元最高経営責任者(CEO)であるパット・ゲルシンガー氏は、これ......
AI投資は「現代のゴールドラッシュ」か 49年ラッシュに重なる熱狂とバブルの影 1848年から1885年にかけて、世界中から約30万人がアメリカのカリフォルニアに集まり、シエラネバダ山脈の金鉱を求めた。彼らは「49年ゴールドラッシュ」として知られ、この熱狂は歴史に大きな影響を与えた。このブームは、隣接する州や遠くの国々の経済を活性化させただけでなく、元々アメリカ軍が支配していたメキシコ領カリフォルニアが、独自の法律を持つ州へと変わるきっ......
韓国戒厳令から1年 尹錫悦氏が残した政治的混乱、韓国は深刻な対立に直面 2024年12月3日、韓国の前大統領尹錫悦氏は「反国家勢力を根絶するため」として戒厳令を発表し、世界を驚かせた。この「戒厳騒動」は、尹錫悦氏が弾劾され、権力が「共に民主党」に移譲される形で幕を閉じたが、南韓の政治の極化は治まるどころか、ますます深刻化している。ソウルの裁判所では依然として裁判が続き、大統領府や国家安全保障に関連する主要人物たちが法的な清算の対......
高市首相「対台湾政策は不変」 「1972年日中共同声明に基づく」を重ねて強調 高市早苗首相は、3日の参議院本会議で再び、政府の台湾に対する立場が「台湾有事」に関する答弁を受けて変更されたかどうかについて質問を受けた。これに対し、高市首相は「日本の台湾政策は、1972年の日中共同声明に基づいており、何ら変更はない」と明確に強調した。公明党の竹内真二参議院議員は、質疑の中で高市首相が先に衆議院予算委員会で「台湾有事」が日本の集団的自衛権行......
日中関係の悪化回避を模索 日本の商工団体、日中友好議員連盟幹部が中国大使と会談 高市早苗首相は11月7日の国会答弁で、台湾有事について言及し、「台湾海峡で衝突が発生すれば、日本にとって『存立の危機』となる」と発言した。この発言は日本の自衛隊の介入を示唆しており、中国側は強い不満を表明した。中国は観光制限やその他の対抗措置を取るなどして反発したが、そんな中でも日本の商工団体や日中友好議員連盟の幹部らは中国駐日大使の吳江浩氏と会い、双方の交......
高市政権、衆院議席削減試算を公表へ 旧姓使用の法制化も本格始動 高市早苗首相は就任後、衆議院議員の定数を1割削減する案、結婚後の旧姓使用の法制化、さらに注目が高まる中で進める働き方の調整など、複数の政策方針を相次いで打ち出し、最近の日本政界で大きな焦点となっている。自民党は12月2日に最新の試算をまとめ、今後提出が予定される「小選挙区289議席のうち25議席を削減する」案を提示した。その他の削減分は比例代表制からの減少と......
トランプ氏が「台湾保証実施法案」に署名 台湾側は米台関係を「インド太平洋安定の基盤」と評価 米国のドナルド・トランプ大統領は米東部時間12月2日、『台湾保証実施法案(Taiwan Assurance Implementation Act)』に正式署名した。同法は、米国務省に対し台湾との交流に関するガイドラインを定期的に見直し、必要に応じて更新することを義務づける内容だ。関連するすべての文書について、少なくとも5年に1度は審査を行い、完了後90日以内......
衆院25議席削減で与党が合意 自民党内に「あまりに粗暴」と批判も 与党である自民党と、連立を組む日本維新の会は、最近、衆議院の議席改革について大きな合意に達した。両党は1日、高市早苗首相と維新の会の吉村洋文代表が出席した幹部会議で、衆議院議員の1割を削減する法案を共同で提出する方針を確認した。削減の対象は比例代表だけでなく小選挙区にも及び、「小選挙区25議席、比例代表20議席」を改革の基準とする内容となる。自民党の鈴木俊一......
中国の圧力が「逆効果」?謝金河氏が分析 浜崎あゆみ公演中止と高市首相支持率 中国によるさまざまな圧力や軍事的威嚇の中で日中関係が緊張を続けるなか、「平成の歌姫」こと浜崎あゆみの上海公演が「中止」されたことも波紋を呼び、国際的な注目を集めている。これについて、財信メディアグループ董事長の謝金河氏は2日午後、フェイスブックに「日本の強運は上昇、『ミセスワタナベ』は退場!」と題した投稿を行い、ウォール・ストリート・ジャーナルの社説が「中国......
日本、フィリピンに「03式地対空ミサイル」輸出を検討 南シナ海防衛強化を支援 日本が自主開発した「03式中距離地対空誘導弾」(中SAM)をフィリピンに輸出することを検討していることが分かった。複数の日本メディアが報じたもので、日中外交関係が緊張する中、もしこの武器輸出が最終的に実現すれば、中国の神経を再び刺激する可能性がある。複数の海外メディアの報道によると、現在、東京とマニラの間ではこのミサイルシステムの調達をめぐって水面下で協議が......
台湾国家安全局「米中対立は管理段階へ」 中国は日本への圧力を維持 高市早苗首相が「台湾有事」に言及したことを受け、日中関係が緊張している。一方、アメリカのドナルド・トランプ氏も中国の習近平国家主席と電話会談を行った。台湾の国家安全局は、米中の戦略的競争という大枠は変わらないものの、トランプ氏と習氏が対話を増やし、情勢の管理を図っていると分析している。また、台湾情勢を巡っては日中それぞれが異なる立場を維持しつつ、緊張のエスカ......
台湾・蕭美琴副総統が異例の発言 米軍が台湾要員訓練を支援と認める「抑止と自衛のため」 台湾の蕭美琴副総統は先日、米メディア『戦情室(War Room)』で共同司会を務めるホワイトハウス担当記者ナタリー・ウィンターズ氏のインタビューに応じ、米軍が台湾側の要員訓練を支援していることを認めた。米軍による台湾軍の訓練協力はこれまで度々報じられてきたが、副総統が公に言及するのは極めて異例とみられる。番組側が「どのような状況で米軍が台湾防衛に派兵すると見......
三交イン、九州初進出 2027年秋、「三交イン Grande 熊本」開業へ 株式会社三交イン(本社:名古屋市中村区、代表取締役社長:長井康明)は、九州エリア初となるビジネスホテル「(仮称)三交イン Grande 熊本」を、熊本市中央区下通二丁目に2027年秋開業予定と発表した。建物は株式会社えがお(本社:熊本市東区)のグループ会社から賃借し、熊本市最大の繁華街「下通エリア」に立地する。新ホテルは、JR熊本駅から市電で約15分の「辛島......
賴清德氏の米国経由訪問、林佳龍氏「米国は支持姿勢へ転換か」日中対立は長期化と指摘 台湾の林佳龍外交部長(外相)は2日、『ブルームバーグ』のインタビューに応じ、ワシントンとの緊密な協議を経て、台湾としては賴清德総統が近く米国を経由して中南米の友好国を訪問できるよう、トランプ政権が容認するとの自信を示した。また、最近悪化している日中関係については、双方の外交的緊張が落ち着くまでには1年ほどかかる可能性があると分析した。「八月拒否」から「歳末の......