日本と中国の緊張が続くなか、中国政府は高市早苗首相が国会で「台湾有事」をめぐる仮定の質問に答えたことに反発を強めている。さらに高市氏が先日、「日本はサンフランシスコ平和条約で台湾に関する権利・権限を放棄しており、台湾の法的地位を認定する立場にない」と発言したことを受け、中国側は再び強く反発。「中国はサンフランシスコ条約における台湾主権処理を認めたことはない」と主張した。
こうした中国側の動きに対し、台湾外交部の李憲章・条約法律司長は2日、「台湾海峡の双方は互いに隷属していないというのが政治的現状であり、客観的事実だ」と強調した。
高市氏は11月7日の国会答弁で「台湾有事」に触れたことから、中国の強い反発を招いた。続く11月26日、就任後初めて在野4党の党首と行った討論会で、高市氏は「日本の台湾への基本姿勢は変わらない」としたうえで、台湾とは非政府間の実務的関係を維持していると説明。日本はサンフランシスコ平和条約において台湾に関する一切の権利を放棄したため、「台湾の法的地位を認定する立場にはない」と述べた。
これに対し、中国外交部の郭嘉坤報道官は11月27日、高市早苗氏の発言について「反省する気がない」と強く非難した。翌28日には毛寧報道官も会見で、「サンフランシスコ平和条約は国連憲章および国際法の基本原則に反しており、台湾の主権帰属など中国の領土・主権に関わるいかなる処分も違法かつ無効だ。中国側は同条約を一度も承認も受け入れもしていない」と改めて主張した。
台湾の林佳龍外交部長は、米メディア『ブルームバーグ』のインタビューで、日中の緊張状態は1年程度続く可能性があるとの見方を示したうえで、高市氏がサンフランシスコ平和条約に言及したことに中国が神経をとがらせている理由についても言及した。林氏は台湾の時事番組『筱君台湾PLUS』で、中国側がいっそう強く反発しているのは、高市氏の説明が「1951年以前は条約が結ばれておらず、国際法上、日本はなお台湾に対する主権を有していた」という解釈につながりかねず、その結果、中国共産党が掲げてきた『3つの80年』という歴史叙述が崩れかねないからだと分析した。林氏は「中華人民共和国は1945年の時点ではまだ成立しておらず、その時点で台湾を接収したとは言えない」と指摘している。
李憲章氏「中華人民共和国はこれまで一日たりとも台湾を管理・統治したことはないのは歴史的事実だ」
これに対して、李氏は2日の台湾外交部定例記者会見で、中華民国台湾政府の立場は一貫しており、「中華民国台湾と中華人民共和国は互いに隷属しない関係にあり、これは政治的現状であると同時に客観的事実だ」と説明した。また、「中華人民共和国は国際社会において台湾を代表することはできない」と指摘。そのうえで、サンフランシスコ平和条約は戦後の国際秩序においてカイロ宣言やポツダム宣言などの政治的声明に取って代わるものであり、「中華人民共和国が台湾を管理・統治したことはかつて一度もなく、これは歴史の事実だ」と改めて述べた。
李氏は、台湾は1980年代以降、民主化と自由化のプロセスを経て「本土化」を極めて成功裏に進め、国際社会からも高い評価を得てきたと強調した。1996年の総統直接選挙の実施以降、これまでに3度の政権交代を経験し、台湾の民主制度は着実に定着したと指摘。「台湾を実際に統治し、2300万人の台湾住民を代表し得る唯一の合法政府は中華民国政府であり、その存在によって中華民国と中華人民共和国が対等かつ互いに隷属しない関係であるという現状が形づくられている」と述べた。
さらに李氏は、「国際社会で中華民国、そして台湾を代表する資格があるのは、2300万人の有権者が選んだ民選政府だけだ」と改めて強調した。
編集:小田菜々香 (関連記事: 中国当局、世論の「ネガティブ感情」も規制対象に 経済低迷の中で進む感情統制 | 関連記事をもっと読む )
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