李忠謙コラム:ウクライナがトランプ氏に「売られた」時、台湾はどれほど危険な状況に陥るのか

会談を行う中国の習近平指導者とアメリカのトランプ大統領。ホワイトハウスの公式サイトで公開された写真の中には、習近平氏がトランプ氏に笑みを誘われるという珍しい場面も含まれていた。(写真/アメリカホワイトハウス公式サイトより)
会談を行う中国の習近平指導者とアメリカのトランプ大統領。ホワイトハウスの公式サイトで公開された写真の中には、習近平氏がトランプ氏に笑みを誘われるという珍しい場面も含まれていた。(写真/アメリカホワイトハウス公式サイトより)
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「ウクライナは売り渡されようとしているのか?(Is Ukraine Being Sold Out?)」――この衝撃的でありながら、同時に国際政治の現実となりつつある痛烈な問いかけが、『エコノミスト』の対談番組「インサイダー」最新回のテーマだ。

質問を担当したザニー・ミントン・ベドーズ編集長は、「今日のテーマは、祝えるような話ではない」と率直に認める。なぜなら、トランプ氏が強硬に提示した「和平合意」であれ、キーウの汚職スキャンダルや前線の戦況であれ、そのすべてがウクライナを主権と領土を奪われる悲惨な当事者へと転落させる見通しであるからだ。

平和の代償:領土割譲と主権喪失という屈辱の青写真

現在浮上している和平交渉は、表面上は紛争解決に向かっているように見える。しかし、外交辞令という霧を晴らせば、その実体はウクライナにとっての「主権喪失と屈辱」、そして地政学的な巨大な落とし穴に他ならない。この合意の本質は、正義ある平和の追求などではなく、外部勢力が綿密に計算した利益の取引に過ぎないからである。

『エコノミスト』のキーウ特派員オリ・キャロル氏は番組内で、これを「和平計画」と呼ぶよりは、絶えず変動する「枠組み」と捉えるべきだと指摘した。ジュネーブでの交渉を経たこの計画の実態は、「ウクライナ分割条約の草案」以外の何物でもない。結局のところ、ウクライナの領土を切り裂く境界線はどこに引かれるのか。ドンバス地方の最終的な帰属はどう決着するのか。これらの核心的な問題はすべて不透明な「括弧」に入れられ、政治指導者たちの最終決断を待っている状態だが、そもそもこの交渉自体が不平等な賭けなのだ。

特に、米国側交渉代表のスティーブ・ウィットコフ氏と、ロシア側交渉代表のユーリ・ウシャコフ氏との通話録音が流出したことで、交渉の舞台裏での操作が白日の下に晒された。この電話の中で、ウィットコフ氏はあろうことか、取引を成立させるためにトランプ氏へどう対応すべきか、ロシア側に手ほどきをしていたのだ。トランプ氏はこの件について「ディールメーカー(取引の達人)とはそういうものだ」と意に介さない姿勢を見せたが、この態度は、米国が主導する交渉の核心的な論理を如実に露呈させている。

『エコノミスト』のエド・カール副編集長は、この交渉の「非対称性(asymmetrical)」を指摘する。米国側代表はロシアのために積極的に知恵を絞っているが、ウクライナに対して同等の支援や助言を与えている様子は見られない。そして、このリークの出処を巡っては様々な憶測が飛び交っている。合意の破壊を狙う米国の「ディープ・ステート(闇の政府)」か、蚊帳の外に置かれた欧州の同盟国か、それともロシア内部の強硬派か。 (関連記事: 台湾は「次のウクライナ」か 英紙ガーディアン警告 トランプ氏の「弱腰」が台湾危機を招いているのか 関連記事をもっと読む

米国が見せかけの寛大さで提示する「安全の保証」について、ベドーズ編集長は「曖昧で実行不可能」だと断言し、カール副編集長も歴史の教訓は忘れるべきではないと指摘する。かつて1994年の『ブダペスト覚書』でも、米・露・英などがウクライナの領土保全を約束したが、結果としてそれはただの紙切れと化したからだ。

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