トップ ニュース イラン、ホルムズ海峡の封鎖を宣言 革命防衛隊「通過すれば撃沈」と警告 世界経済の「頸動脈」が遮断の危機
イラン、ホルムズ海峡の封鎖を宣言 革命防衛隊「通過すれば撃沈」と警告 世界経済の「頸動脈」が遮断の危機 イラン革命防衛隊初の「ドローン空母」の空撮映像。(写真/AP通信提供)
米国とイスラエルによる対イラン軍事作戦「エピック・レイジ(叙事詩の怒り)」が4日目に突入した。イラン革命防衛隊は3日、世界最重要のエネルギー要衝であるホルムズ海峡の封鎖を正式に宣言し、通過を試みるあらゆる船舶に対して攻撃を行うと警告した。米軍によるハメネイ最高指導者への「外科手術的」な殺害作戦を受け、事態は中東の地政学的バランスを覆し、世界経済を揺るがす深刻な局面を迎えている。
世界経済の「頸動脈」ホルムズ海峡封鎖の衝撃 今回の衝突が家計や経済に与える影響を理解するには、この狭隘(きょうあい)な水路の重要性を知る必要がある。オマーンとイランの間に位置するホルムズ海峡は、北にペルシャ湾、南にオマーン湾を望む。最狭部は約33キロメートルだが、巨大タンカーが航行可能な双方向航路はわずか3キロメートルに過ぎない。ここはまさに世界経済の「頸動脈」であり、イランはその動脈に鋭利なメスを突きつけている状態だ。
『ロイター通信 』が引用したエネルギー分析会社Vortexaのデータによれば、昨年、同海峡を通過した原油や燃料は1日平均2000万バレルを超え、世界の石油消費量の約5分の1を占める。サウジアラビア、アラブ首長国連邦、クウェート、イラクといったOPEC主要国のほか、世界最大の液化天然ガス(LNG)輸出国であるカタールもこの水路に完全に依存している。現在、カタール・エナジー社はLNGの生産停止を余儀なくされているという。
現実味を帯びる脅威 タンカー攻撃と市場の動揺 イランの警告は決して虚勢ではない。船舶管理会社が『ロイター通信』に認めたところによれば、オマーン沖でマーシャル諸島船籍のタンカー「MKD VYOM」がミサイルまたは無人機とみられる攻撃を受け、乗組員1名が死亡、ほか2隻も損傷した。
この事態を受け、同海域の航行は事実上の全面停止に追い込まれた。アジア市場の早朝取引では、市場の恐慌(パニック)を反映し、米国産原油先物価格が反応。世界的なエネルギー供給への不安が広がっている。
「見えない暗箭」6000発の機雷による非対称的脅威 ミサイルや無人機といった直接攻撃に加え、より深刻なのは「機雷」による脅威だ。米情報機関の推定では、イランは浮遊型や吸着型など最大6000発の機雷を備蓄しているとされる。
米軍F-15Eをクウェート軍が誤射、防空システムの脆弱性が露呈 2日、一時「米軍機がイランによって撃墜された」との情報が流れたが、米中央軍はその後、これがクウェート軍による誤射であったことを認めた。イランによるクウェートへの報復攻撃が続く混乱の中、クウェートの防空システムが敵味方の識別を誤り、米空軍のF-15E戦闘機3機を撃墜したという。幸いにも、乗員6名は全員脱出に成功し無事救助された。しかし、極限状態の防空作戦における敵味方識別(IFF)システムや指揮系統の脆弱性が浮き彫りとなった形だ。
一方で、すべての米兵が難を逃れたわけではない。『ロイター通信』によれば、先週末の報復攻撃で米兵6名が死亡。今衝突の開始以来、米軍にとって初の重大な人的被害となった。対する米軍は、これまでにイラン国内の1,250カ所以上の目標を精密打撃し、イラン海軍の艦船11隻を破壊したと発表。衛星画像では、イランの「チョカ・バルク・アリレザ(Choqa Balk-e Alireza)」無人機基地が空爆により壊滅的な被害を受けた様子が捉えられている。
拡大する戦火 サウジ製油所やUAEへの攻撃 米国・イスラエル連合軍の猛攻に対し、イラン側も報復の矛先を広げている。サウジアラビア国防省は、東海岸のラスタヌラ(Ras Tanura)製油所が2機の無人機による攻撃を受けたと発表。無人機は迎撃されたものの、落下した破片によりサウジアラムコが運営する同施設で火災が発生した。また、アラブ首長国連邦(UAE)国防省も、イランから発射された弾道ミサイルに対し、防空システムが応戦中であることを明らかにした。
戦火の影は外交機関にも及んでいる。サウジアラビアの首都リヤドにある米国大使館で火災が発生したとの情報が『ロイター通信』によって報じられた。爆発音の直後に発生したこの事態に、米国務省は治安情勢の急激な悪化を考慮し、サウジアラビアやUAEを含む中東の十数カ国に滞在する米国市民に対し、直ちに国外へ避難するよう強く促している。
民間人犠牲への疑念 女子小学校への空爆で160人以上が死亡か イラン国営メディアの報道によれば、米・イスラエル連合軍による空爆初日、イラン南部ミナブ(Minab)にある女子小学校が爆撃を受け、160人以上の児童らが死亡した。この惨劇に対し、国際社会からは激しい反発が起きている。ユネスコ(UNESCO)やノーベル平和賞受賞者のマララ・ユスフザイ氏らは、教育機関への攻撃を「戦争犯罪」として厳しく非難する声明を発表した。国際人道法では、学校や病院などの民間施設を意図的に標的にすることは禁じられている。
テヘランとベイルートに立ち込める硝煙 テヘラン中心部では、空爆の脅威が市民生活を脅かしている。イスラエル軍が退避勧告を出した直後、イラン国営放送(IRIB)本部周辺で2回の激しい爆発が発生し、後にイスラエル軍が同施設への攻撃を認めた。同時に、イスラエル軍はレバノンの首都ベイルートにあるヒズボラの指揮センターや武器庫への打撃も継続している。テヘランからベイルートに至るまで、中東の空は硝煙に完全に覆い尽くされている。
指導部壊滅による「権力の空白」 今回の戦争における最大の焦点の一つは、イラン政権内部の動揺だ。イスラエルは過去2年間の工作によりイラン軍高官を次々と排除してきたが、今回の攻撃で最高指導者ハメネイ師を含む指導部中枢が殺害されたとされる。現在、イランを誰が実質的にリードしているのか、外部からはその実態が極めて窺い知れなくなっている。
こうした中、ペゼシュキアン大統領は1日、自身と司法府長官、護憲評議会メンバーらによる「指導評議会」を設立し、最高指導者の職務を暫定的に代行すると発表した。ハメネイ師の「殉教」がもたらした巨大な権力の空白を受け、建国者ホメイニ師の孫が政治の表舞台に再登場するかどうかに国際社会の注目が集まっている。
トランプ政権の「賭け」と米国内の冷ややかな視線 作戦を発動したトランプ大統領にとって、この軍事行動は予測不能な要素を孕んだ「ギャンブル」となっている。トランプ氏は作戦が「4〜5週間、あるいはそれ以上続く可能性がある」と言及。イラン内部の権力構造が不明瞭であることを認めつつも、「いかなる代償を払っても」任務を完遂する姿勢を強調した。
しかし、米国内の世論は厳しい。『ロイター』とイプソス(Ipsos)が共同で実施した最新の世論調査では、イランへの攻撃を支持する米国民はわずか25%にとどまっている。この低水準の支持率は、年末に控える中間選挙において政権への大きな政治的リスクとなることは避けられない。
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