トップ ニュース 米軍に3人の死者、トランプ氏が犠牲拡大を警告 イラン報復、原油・金価格高騰 作戦「エピック・レイジ」の代償
米軍に3人の死者、トランプ氏が犠牲拡大を警告 イラン報復、原油・金価格高騰 作戦「エピック・レイジ」の代償 2026年2月28日、アルメニアのイラン大使館前でデモを行うイラン市民ら。米国とイスラエルによる対イラン空爆への支持を表明した(写真/AP通信)。
先週末、米国とイスラエルが合同で発動した軍事作戦「エピック・レイジ(叙事詩の怒り)」により、イランの最高指導者アリ・ハメネイ師の死亡が官邸で確認され、革命防衛隊の指導部も壊滅した。しかし、「予定より前倒しで進んでいる」とされる勝利の裏で、米軍には3人の死者と5人の重傷者という代償が生じている。トランプ大統領は、戦闘の継続に伴い「犠牲者はさらに増える恐れがある」と警告。イラン残存勢力による猛烈な報復と世界的な原油・金価格の暴騰により、世界はかつてない緊張状態に置かれている。
トランプ氏、米軍の犠牲拡大を示唆 交渉の余地は残されているか 米以連合軍が2月27日、イラン国内の数百の目標に対して壊滅的な打撃を与えた後も、軍事行動は続いている。これに対し、イラン軍は3月1日、地域内の米軍基地への新たな攻撃を発表した。トランプ大統領はこれを受け、戦闘の進展に伴い米軍の死傷者数が増加し続ける可能性を認めた。
米中央軍(CENTCOM)はすでに兵士3名が殉職、5名が重傷を負ったことを確認している。トランプ氏は公開した動画の中で、神妙な面持ちで次のように語った。「勇敢なアメリカの英雄たちが命を落とすかもしれない。戦争において犠牲は往々にして避けられないものだ。最前線で献身するすべての軍人のために祈りを捧げる。彼らの犠牲があるからこそ、アメリカとその子孫は、核武装したイランの脅威に二度とさらされずに済むのだ」
2026年2月28日、ワシントンの街頭にはデモ隊が押し寄せ、米国とイスラエルによるイランへの軍事行動への支持を表明した。(写真/AP通信提供)
国内の政治的対立とトランプ氏の強硬姿勢 ホワイトハウスのジョンソン報道官によれば、ルビオ国務長官とヘグセス国防長官は3日、議会で全議員への説明を行う予定だ。共和党側は「イランの核への野心を排除した」として今回の打撃を支持しているが、民主党のジェフリーズ院内総務は、トランプ氏が議会の承認を得ずに開戦し、米軍を報復の危険にさらしたと厳しく批判している。
鉄拳制裁の裏で送られる「交渉」のシグナル トランプ氏は強硬な姿勢を維持しつつ、交渉に向けた微妙なシグナルも発している。同氏は米誌『アトランティック』に対し、ハメネイ師の死後、イラン側が交渉再開の意向を示していると明かし、「彼らは対話を望んでおり、私も同意した。もっと早くそうすべきだったが、時間がかかりすぎた」と語った。ただし、具体的なスケジュールについては言及を避け、「我々が以前交渉していた相手の多くは、すでに死んでいる」と付け加えた。また、CNBCのインタビューでは作戦が「予定より早い進展」であることを強調し、爆撃を「今週いっぱい、あるいは必要な限り続ける」との意志を改めて示した。
イランは「移行期」に突入、米以は国民へ「自由」を呼びかけ テヘランでは、最高指導者の急逝により、この政教一致国家は未曾有の混乱に陥っている。イラン国営メディアは、国が「移行期」に入ったと発表。現在はペゼシュキアン大統領、司法府代表、および憲法監護委員会の法学者1名からなる「3人委員会」が、暫定的に指導権を代行している。
指導層が甚大な打擊を受けたものの、イランイスラム革命防衛隊(IRGC)による報復の意志と過激な言辞は依然として衰えていない。国営テレビを通じた声明では、「占領地(イスラエル)」や米軍基地に対し、歴史上最も破壊的な攻撃を行うと宣言。すでにイランはペルシャ湾地域の米軍基地に対し数波にわたる報復攻撃を仕掛けており、バーレーンの海軍施設、カタールのアル・ウデイド空軍基地、さらにはクウェートやアラブ首長国連邦(UAE)の民間施設がミサイルや無人機による攻撃を受けている。
米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)』によれば、米国からテロ組織に指定されているヒズボラのカシム副事務局長も警告を発し、「名誉と抵抗の戦場」を放棄せず、米国とイスラエルの侵略に全力で対抗する姿勢を強調した。
政権転覆の呼びかけと、市民への生命のリスク トランプ氏は大規模爆撃の後、イラン国民に対し、この機に乗じて政権を転覆させ国家を掌握するよう公然と呼びかけた。「自らの運命を司り、繁栄を切り拓く千載一遇の好機だ」と強調。イスラエルのネタニヤフ首相もこれに呼應し、イラン国民が「暴政の鎖」を断ち切る時が来たと述べた。
しかし、WSJの分析では、このような強硬な政権交代(レジーム・チェンジ)の要求は、テヘラン側に生存をかけた戦いを選択させ、より激しい報復を招く恐れがあると指摘。また、今年1月にイラン政権がデモ隊を武力弾圧し数千人の犠牲者を出した背景を考慮すると、呼びかけに応じる市民は極めて大きな生命の危険にさらされることになると警告している。
英仏独は米国と連携、中露はイラン支持の鮮明な対立 英国のキア・スターマー首相は1日、「防衛目的」に基づき、民間人の被害拡大を防ぐため、米軍が英国の軍事基地を使用してイランのミサイル貯蔵庫を攻撃することを許可すると発表した。これに先立ち、英空軍のタイフーン戦闘機がカタール上空でイランの無人機(ドローン)1機を撃墜している。
一方、今回の軍事行動は世界的な支持を得るには至っていない。中国外務省は「高度な関心」を表明し、中東諸国の主権と領土保全を尊重すべきだと訴えるとともに、各当事者に対し軍事行動の停止と対話への回帰を促した。対照的に、ロシアの立場はより急進的だ。ロシアは米以の空襲を「無謀な冒険主義」と非難しただけでなく、世界的な「放射能災害」を引き起こす可能性があると警告。数十年にわたりイランと同盟関係にあるロシアは、依然としてテヘランとその地域代理勢力の強力な後ろ盾となっている。
2022年7月19日、イラン最高指導者ハメネイ氏とロシアのプーチン大統領がテヘランで会談した。(写真/AP通信提供)
湾岸諸国への最後通告とトランプ氏の外交攻勢 ペルシャ湾の隣接諸国にとっても、この戦火は回避不能な事態となっている。イランのアラグチ外相は、サウジアラビア、UAE、カタールなどに対し、米国やイスラエルによる「自国領土や施設の悪用」を阻止する責任があるとする厳格な通告を出した。米軍が攻撃拠点として使用するあらゆる場所は、テヘランにとって「合法的な打撃目標」とみなされるという。
この脅威を受け、トランプ大統領は日曜日にイスラエル、バーレーン、UAEの指導者と緊急電話会談を行い、地域戦線の安定化と結束を図った。
原油価格が7%急騰、米株先物はリスクオフで大幅下落 米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)』によれば、戦火の再燃を受け、世界の金融市場は即座に激しい反応を示した。1日(日)夜、米原油先物指標は7%超急騰し、1バレル=72.19ドル(約11,000円) に達した。
アナリストらは、世界の原油輸送量の約5分の1を担うホルムズ海峡がイランによって封鎖された場合、原油価格は短期間で1バレル=140ドル(約21,700円) まで跳ね上がると懸念している。石油輸出国機構(OPEC)の関係者によると、サウジアラビアはすでに警戒レベルを最高に引き上げ、供給不足を補うための増産などの応急計画を始動させた。
金融市場も連鎖的に冷え込み、1日夜の米株指数先物(ダウ、S&P500、ナスダック100)は揃って約1%下落した。一方で安全資産の金(ゴールド)は買われ、2%上昇。国際スポット価格は2日、一時5400ドルに迫る勢いを見せた。ゴールドマン・サックスのアナリストは、現時点での株式や債券への影響はネガティブであるものの、原油供給に「深刻かつ持続的」な混乱が生じない限り、世界経済への実質的な打撃は限定的との見方を示している。
技術的側面 禁止されたはずのAI技術を米軍が活用 今回の作戦の裏側では、技術運用を巡る矛盾も浮き彫りになった。トランプ大統領が2月26日(金)、国家安全保障上の脅威を理由に連邦政府でのAnthropic社製AI「Claude(クロード)」の使用禁止を命じた数時間後、米中央軍(CENTCOM)は対イラン精密空爆において、依然として同技術を情報評価や標的識別、戦闘シミュレーションに深く依存していたという。
ペンタゴン(米国防総省)と開発会社の間で緊張が続く中、軍事作戦の根幹にまで浸透したAIツールの活用は、ホワイトハウスの一紙の禁止令で即座に断ち切れるものではない実態が露呈した形だ。
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