論評:2014年に柯文哲氏を支えたのは誤りだったのか 2024年に追い込んだのは正しかったのか

2025-12-02 18:09
前台北市長・柯文哲氏(写真)は民進党の勝利に貢献したが、同時にその基盤を揺るがす可能性も抱えている。(写真/柯承惠撮影)
前台北市長・柯文哲氏(写真)は民進党の勝利に貢献したが、同時にその基盤を揺るがす可能性も抱えている。(写真/柯承惠撮影)
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政治と司法は別物だが、同じ天秤に載せて測れるものもある是非や正誤、利と損、得と失――こうした価値判断は、一つの天秤で軽重を議論できる。ただし、是非や正誤に絶対的な基準があるとは限らない。利害得失も同様で、一人一人の基準によって重みは大きく異なる。

民進党は多数を取りにいく発想を失ってしまったのか

陳水扁政権の重臣であり、蔡英文政権でも重いポジションにいながら表に出にくい立場だった「臣」とも言える張景森氏(前政務委員)が、またフェイスブックで投稿した。しかも、自分自身と民進党(緑陣営)を名指しした「張景森が見たDPP──後出しジャンケンと、歴史に敗れた側の都合のいい物語」という文章だ。要するに、2014年に民進党が柯文哲氏を支援し、台北市で「青(国民党)より緑(民進党)」という基本構造をひっくり返したことを、今も自分は支持しているという内容だ。それなのに、いま緑陣営(民進党)の支持者は彼を嘲笑している。張氏は、柯文哲氏がなぜ「自分の道」を選ぶに至ったのか、むしろそこをこそ反省すべきだと投げかけている。

張​景森氏は、見た目は賴清德氏ほど「華がある」わけではないが、頭の回転は賴氏より何倍も優れている。張氏の指摘は「正解」に近いにもかかわらず、民進党も、その支持者も、さらにはいわゆる「側近」と呼ばれる人々も、その意味を理解しようとしない。もし政権を十年握って権力に酔っているのではないのだとしたら、本当に頭がどうかしていると言うほかない。第一に、複数選挙区の議員選挙なら、どれだけ極端な主張でも、得票数さえ足りれば当選できる。しかし単一選挙区の首長選挙、すなわち県市長から総統までの選挙では、「最大多数」を取りにいかない限り勝てない。陳水扁氏が台北市長選で辛勝できたのは、国民党候補の黄大洲氏が弱く、新党の趙少康氏が強く票を割ったからであり、そうでなければ当選はあり得なかった。同じ構図は総統選でも見られ、国民党候補の連戦氏が弱かったからこそ「僥倖の勝利」を手にした。重要なのは、陳氏自身がそれを自覚していた点だ。市長であれ総統であれ、自分は「幸運な勝者」にすぎないと理解したうえで、「過半の民意」を獲得する努力を続けたのである。
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この陳水扁氏の認識は、本来であれば蔡英文氏の認識でもあったはずだ。台湾の悲劇は、蔡英文氏の八年間、民進党が国会で過半を握っていたにもかかわらず、もし彼女に国家発展についてより深いビジョンがあったなら、台湾はいまのような状況にはならなかったかもしれないという点にある。にもかかわらず、彼女は本当に「国家の進むべき方向」を見定めていたのかどうかが疑問のままだ。両岸関係については「憲法」と「両岸人民関係条例」に従う枠組みを守ったものの、退任するまで両岸の正常な往来を回復できなかった。国会で多数を持ちながら、政党中立の原則に従わず、国会の同意を要するはずの独立機関のポストを「自分たち(緑陣営)の人材」で固めてしまった。結果として、いわゆる「憲法上の五権」のうち、蔡英文氏によって半分は事実上廃棄された。行政権のもとにあるはずの「独立機関」──中央選挙管理委員会であれ、NCC(国家通訊放送委員会)であれ──は軒並み機能不全に陥り、監察院は「給料だけ払わされる笑いもの」と化した。蔡英文氏はこれらについて説明も謝罪もせずに去り、NCCはいまも定員が埋まっていない。中選会では在野党が推薦名簿を出しているにもかかわらず、リコールで大敗して本来なら辞任すべきだった行政院長が、いまだにその名簿を立法院に送ることすら渋っている。

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