衆議院選挙において、自民党は316議席を獲得するという歴史的な勝利を収めた。単独で3分の2を超える議席を確保したことで、高市早苗氏は名実ともに「東京の鉄の女」へと変貌を遂げ、長期政権の盤石な基盤を築いた。
3月には訪米してドナルド・トランプ米大統領と会談する予定であり、憲法への「自衛隊」明記や「非核三原則」の見直しを加速させている。この動きは東アジア近隣諸国の注目の的となっており、日中間の緊張が高まる中、台湾海峡情勢にどのような激震をもたらすかが焦点となっている。
大胆な賭けで「鉄の女」へ 衆議院選挙(定数465)の全議席が確定した。自民党は316議席を獲得し、単独で法定の「3分の2」のラインを突破、戦後の一政党としての最多議席記録を樹立した。日本維新の会の36議席を合わせると、改憲勢力を含む与党側は352議席となり、実に4分の3を超える。
一方で、野党の立憲民主党と公明党が急遽結成した「中道改革連合」は49議席へと激減し、壊滅的な敗北を喫した。維新の会は自民党以上に右派的かつ急進的な立場をとるため、今後、高市氏を改憲方向へと強力に後押しすることは必至だ。残る障壁は参議院のみであり、憲法改正の「ラストワンマイル」はいよいよ現実味を帯びてきた。
高市氏はこの一世一代の豪快な賭けに完勝し、戦後最も人気のある女性首相となった。「強く豊かな日本」をスローガンに掲げ、SNSを通じて「岩盤保守層(あるいは無党派の右派層)」を熱狂的に惹きつける政治的カリスマを発揮。選挙後には日本株が急騰する「ご祝儀相場」も到来した。今後、自民一強体制の下、高市氏は長期政権を視野に入れており、故・安倍晋三氏に続き、日本政界の「東京の鉄の女」として君臨することになるだろう。
日本は右旋回し、保守派が完全に復権した。高市氏は以前から日本国憲法第9条の改正を主張しており、戦後の平和憲法による「軍隊を持たず、戦争をしない」という制約から脱却し、日本を「普通の国」にすることを望んでいる。圧倒的な民意の負託を得て、自民・維新の両党は条文新設による「自衛隊」の明記、そして自衛隊の実質的な「国軍化」を推し進めるだろう。同時に、高市氏は非核三原則の「持ち込ませず」の条項見直しにも着手し、米国との「核共有(ニュークリア・シェアリング)」を通じて抑止力を強化しようとしている。これはインド太平洋地域、そして台湾海峡情勢に大きな衝撃を与える恐れがある。
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高市早苗氏とトランプ氏。(写真/ウォール・ストリート・ジャーナル提供)
トランプ氏との連携と日本の新たな野望 選挙前、米国のトランプ大統領は異例のメッセージを出し、高市氏を全面的に支持して勝利を予祝した。取引を重視するトランプ氏は、米国の「戦略的縮小」と引き換えに、各同盟国に防衛費の自主負担を求めている。改憲後の日本はトランプ氏の思考に合致する。日本による5500億ドル(約80兆円)規模の対米投資が実行され、最新鋭のF-35戦闘機、トマホークミサイル、イージスシステムを購入する限り、トランプ氏は高市内閣の改憲を歓迎し、米国はより多くの「防衛負担金」を受け取ることになるだろう。
しかし、高市内閣が憲法9条改正に踏み込めば、中国や韓国など近隣諸国との緊張関係は高まる。韓国は「日本が戦争可能な国になること」を容認できないと表明しており、日韓関係の悪化は、日米韓連携で中露に対抗するという米国の戦略構想に亀裂を生じさせる。
また、高市氏が靖国神社参拝のための「環境整備」を行うと述べていることは、中国の「軍国主義復活」への警戒心を煽り、東アジア情勢の展開を複雑化させる要因となる。
財政のジレンマと「高市ノミクス」 内政に目を向ければ、日本の「失われた30年」の弊害は解決されていない。アベノミクス以降の経済刺激策にもかかわらず、円安と物価高が進行している。安倍氏の正統な後継者として、高市氏は減税、公共投資拡大、大規模な財政出動を主張し、約20兆円規模の経済政策構想を掲げている。
その目玉となるのが、食料品の消費税率を8%から一時的に0%へ引き下げる2年間の時限措置だ。しかし、この政策は毎年5兆円の税収減をもたらし、日本の社会保障支出を圧迫するため、高市氏は早晩、財政的なジレンマに直面することになる。国民の切実な期待にどう応え、支持率を「保温」し続けられるかが、長期政権の鍵となるだろう。
「抗中」姿勢が最大の集票マシンに 皮肉なことに、中国政府 の強硬な反撃こそが、高市氏にとって最高の「応援演説」となった。中国による長年の反日教育、そして薛剣(せつ・けん)駐大阪総領事による「汚れた首を切り落とす」といった外交官にあるまじき暴言と、彼が更迭されなかった事実、さらに中国人観光客への日本渡航禁止令——これらすべてが逆効果となった。
高市氏の衆院選圧勝は、中国政府 への明確なメッセージとなった。すなわち、中国からの激しい攻撃は、もはや高市氏の政治的地位を揺るがすことはできないということだ。ある学者は「習近平氏が大和魂を呼び覚ましてしまった」と評したが、これは誇張だとしても、中国側が依然として「誤った言動の撤回」を求めている以上、日中関係は長期的な「冷たい対立(コールド・コンフロンテーション)」構造に突入し、この潮流が変わることはないだろう。
2025年4月28日、総統府で当時衆議院議員だった高市早苗氏(左)率いる訪問団と面会する頼清徳総統(右)。(写真/総統府提供)
「日本有事は台湾有事」への懸念 安倍晋三元首相が唱えた「台湾有事は日本有事」という概念に対し、高市氏はさらに踏み込み、「台湾有事」は日本が安全保障関連法に基づく「存立危機事態」に突入することと同義であるとしている。
一方で、台湾の野党・国民党の鄭麗文(チェン・リーウェン)主席は、今後の情勢が「日本有事は台湾有事」という逆の連鎖を招く恐れがあると懸念を示す。「高市氏の状況はどうあれ、全世界が台湾海峡の平和(無事)を望んでいる」と強調した上で、過去の歴史を引用して警鐘を鳴らした。「かつてヒトラーがズデーテン地方の有事はドイツの有事だと言い、プーチンがドンバスの有事はロシアの有事だと言った後、彼らは軍事侵攻に踏み切った」
頼清徳政権への「追い風」とレッドライン 高市氏が政治生命をかけた賭けに大勝したことは、台湾の与党・民進党にとって強力なデモンストレーション効果を持ち、頼清徳総統を勢いづける結果となった。頼政権は、日本の政界で起きたこの激変を千載一遇の好機と捉えている。今後、日本政府との公式な連携をさらに拡大し、「抗中」路線を加速させるだろう。しかしそれは、両岸(中台)問題において、中国が設定する「レッドライン」を試すような動きが増えるリスクも孕んでいる。
「東京の鉄の女」にのしかかる経済とトランプ氏の圧力 圧倒的な民意を背に「東京の鉄の女」の称号を手にした高市氏だが、直面する喫緊の課題は、低迷する日本経済と、トランプ米大統領による「マキシマム・プレッシャー(最大限の圧力)」だ。
高い支持率を維持できるかどうかの鍵は、「高市ノミクス」が奏功し、日本国民が現在最も気にしている物価高と賃金停滞の問題を解決できるかにかかっている。そして、高市氏が日本を右傾化させ、憲法改正を推進するその一挙手一投足は、必然的に台湾海峡の命運をも左右することになるだろう。