トップ ニュース 「台湾の盾」は防衛の切り札か、金食い虫か 始動したAI防空網に退役大將が警告「致命的な死角」
「台湾の盾」は防衛の切り札か、金食い虫か 始動したAI防空網に退役大將が警告「致命的な死角」 台湾はイスラエルの防空システム「アイアン・ドーム」(写真)に倣い、「台湾の盾」構築を目指しており、国防部に専門のプロジェクトオフィスを設置した。(写真/AP通信提供)
台湾総統・頼清徳氏が掲げる多層防衛システム構想「台湾の盾(Taiwan Shield)」。2026年1月8日、顧立雄(ウェリントン・クー)国防部長(防衛相)は立法院(国会)での答弁において、国防部内に「台湾の盾」専従オフィス(弁公室)が既に設立されていることを認めた。その狙いは、自動化システムとAI(人工知能)技術を結合し、各種レーダーをリンクさせ、あらゆる兵器を統合した「キル・ウェブ(撃殺網)」を構築することにある。
軍関係者によれば、頼総統が称する「台湾の盾」とは、システム統合の視点に基づくものだ。すなわち「センサー(探知機)からシューター(射手)」までを完全に統合するという概念である。
具体例を挙げれば、パトリオット・ミサイルのレーダーが探知した標的を、必ずしもパトリオットで迎撃する必要はなく、状況に応じて国産の「天弓」ミサイルで迎撃するといった、網の目のような(ネットワーク化された)防空概念を指す。
現在、国防部が公表している情報は限定的だが、同オフィスは頼総統へ定期的に進捗報告を行っているという。では、この極秘プロジェクトを実質的に率いているのは誰なのか。
「台湾の盾」は台湾総統・頼清徳氏(左)が自ら命じたものであり、国防部長・顧立雄氏(右)は、同システムが各兵器を統合した一つの迎撃網になると述べている。(写真/顔麟宇撮影)
「台湾の盾」オフィス、召集人は陸軍・連志威中将 国民党の陳永康立法委員(元海軍司令官)は立法院の質疑で、今回の「台湾の盾」構想に関連し、米国メーカーと台湾の国家中山科学研究院(中科院)が複数の覚書(MOU)を締結している点に言及した。陳氏は、米陸軍の「統合戦闘指揮システム(IBCS)」導入にあたり、それが対外有償軍事援助(FMS)なのか商用販売(DCS)なのかによって技術移転の範囲が異なると指摘。台湾軍の防空は空軍が主導しているため、IBCSの導入は空軍にとって最適なインターフェース統合の機会になり得ると述べた。
さらに陳氏は、空軍の「寰展(Huan-Chan)」、海軍の「聯成(Lien-Cheng)」、陸軍の「鋭指(Rui-Zhi)」といった既存システム(元来は「迅安」システム)を、将来的な「台湾の盾」へ統合すべきだと提言した。
これに対し顧立雄部長は、「台湾の盾」専従オフィスの目標がまさに「既存の国産兵器、海外購入兵器、および将来獲得する装備の統合」にあると明言した。AIと自動化システムを用いて全方位かつ多層的なミサイル防衛網を構築する計画であり、公開可能な段階で詳細を報告すると述べた。
「台湾の盾」は米国のIBCS(統合戦闘指揮システム)のように、すべての地上防空火力を統合するものである。写真はパトリオット防空ミサイル。(写真/張曜麟撮影)
米軍戦術を研究する「革新派」、高山マラソンで培った自律心 なぜ、連志威氏が「台湾の盾」のリーダーに抜擢されたのか。
連氏は陸軍軍官学校1992年卒(民国81年班)。陸軍司令部副参謀長などを歴任し、2024年9月に第6軍団副指揮官へ昇進すると同時に中将へ昇格。その後、2025年2月に作戦計画室次長へ就任したエリートだ。
軍関係者は彼を「陸軍きっての革新派であり、新世代の将軍」と評する。連氏は早くから少将に昇進した実績を持つが、特筆すべきは米軍や海外の戦術・戦法に関する書籍や論文を、原語(英語)で読み込む勉強家である点だ。部隊に対して常に最新の軍事概念を共有し、ロシア・ウクライナ戦争の研究を通じて、台湾軍の作戦指導に新たな視点をもたらしているという。
「彼は口数こそ少ないが、発言する際のロジックは極めて明快で、思考も旧弊にとらわれていない」と関係者は語る。また、非常に自律的な性格でも知られる。若い頃からの趣味は「高山マラソン」。麓から山頂まで駆け上がる過酷なレースであり、長期間の規律あるトレーニングなしには完走できない競技だ。このストイックさが、国家の命運を握る防衛網構築の任に選ばれた理由の一つかもしれない。
連志威氏(中)は陸軍の改革派若手将官であり、作戦面において独自の思考を持つ。(写真/張曜麟撮影)
空軍主導の領域でなぜ「陸軍出身」か?革新的思考が決め手に 台湾の防空任務は伝統的に空軍が担っている。なぜ、陸軍砲兵出身の連志威氏が「台湾の盾」という巨大プロジェクトを率いることになったのか。
情報筋によれば、「台湾の盾」の本質は「センサー・トゥ・シューター(Sensor-to-Shooter:探知から攻撃までの一体化)」にある。これまでの「点」や「線」の防衛を「面(ネットワーク)」へと拡大する構想だ。
例えば、A地点のレーダーが敵を捕捉した場合、必ずしもA地点の兵器で迎撃する必要はなく、最適な位置にあるB地点の兵器が即座に攻撃を行う。この作戦概念は防空のみに留まらない。台湾海峡という広大な領域において、敵の集結を探知するセンサーは、沿岸部のレーダーに限らず、他のプラットフォームや同盟国からの情報共有も含まれる可能性があるからだ。
こうした複雑な統合アーキテクチャを構築するには、柔軟かつ革新的な発想が不可欠だ。連氏は長年にわたり米軍の戦術・戦法を研究し、その思考は極めて現代的である。そのため、陸軍出身であっても「台湾の盾」の防衛構造を理解する上で障壁とはならなかったという。ただし、組織図上では連氏が召集人を務めるものの、彼が「特権的なリーダー」として君臨するわけではない。構成メンバー(各部局長)は対等な関係であり、連氏が率いる作戦計画室(作計室)はあくまで「秘書機能」を担う。各部署からの報告を連氏が取りまとめ、上層部へ報告する調整役としての側面が強い。
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「台湾の盾」の概念は防空のみに適用されるものではないため、参加は空軍に限定されない。写真は天弓3型防空ミサイルの発射風景。(写真/陳昱凱撮影)
「台湾の盾」は万能薬か?退役大将が指摘する「非対称」の死角 「台湾の盾」という理想は美しいが、現実には中国軍のロケット弾(多連装ロケット等)の大量配備という脅威が立ちはだかる。海軍退役上将(大将)で元軍政副部長(国防副大臣に相当)の蒲澤春(プー・ツェチュン)氏は、台北政経学院基金会の座談会で、その盲点を鋭く指摘した。
「ミサイルとロケット弾ではコストが桁違いだ。ロケット弾を迎撃するために高価なミサイルを使えば、命中率は低く、費用対効果も釣り合わない。敵はロケット弾を1発だけ撃つのではなく、大量に発射して『面』で制圧してくる。固定的な『盾』で防ぐことは不可能だ。重要なのは機動力だ。情報を察知して敵の動きを掴み、素早く攻撃して即座に移動する(シュート・アンド・スクート)。米軍もそうしている。その場に留まって『盾』を作ろうなどというのは自殺行為だ」
蒲氏はさらに、防空システムの限界についても言及した。「インディアンの放った矢を、こちらの矢で撃ち落とすのが簡単だろうか? 矢を射る本人を直接狙う方が早いはずだ」と比喩し、迎撃一辺倒の難しさを説いた。
また、大量の迎撃ミサイル購入が財政的な「ブラックホール」になる懸念や、飽和攻撃への対処不能なリスクも挙げた。「適度な防衛ミサイルは必要だが、それで100%防げると思ってはいけない。米軍ですら迎撃成功率はせいぜい7割だ。近距離で2発連続発射すれば8〜9割に上がるかもしれないが、それは天文学的なコストがかかり、弾薬もすぐに尽きる。ロケット弾の雨に対して、そのような対処は不可能だ。台湾の重要インフラが打撃を受けることは避けられない現実として直視すべきだ」理想に燃える「台湾の盾」だが、ベテラン将軍の目には、その現実は極めて厳しいものとして映っている。
台湾による「台湾の盾」構築について、元上将の蒲沢春氏(写真)は、「基本的に盾で防ぐのは困難だ。必要なのは機動力であり、情報を用いて敵の動きを察知し、即座に攻撃して離脱することだ。米国もそのようにしている。一か所に留まって盾を作るなどあり得ないし、成功する見込みはない」と直言した。(資料写真、蘇仲泓撮影)
「旧態依然」からの脱却なるか 軍改革の試金石 情報によれば、「台湾の盾」オフィスの指揮系統は国防部長(大臣)および参謀総長にまで繋がっている。トップが毎回の会議に出席するわけではないが、月に一度はコアメンバーと会議を行い、進捗を確認する。また、総統への軍事報告(軍談)の際にも、頼清徳総統へ定期的な進捗報告が行われている。
国防部に詳しい関係者は、「近年、こうした特命チーム(タスクフォース)形式のオフィスが増えている」と語る。「従来の縦割り組織のままでは、陸海空軍がバラバラに動くだけで、改革は進まない。特命オフィスが参謀本部と国防部の考えを統括し、各軍種を連携させることで、意思決定のスピードを上げようとしている」
台湾軍は近年、組織文化の刷新を進めている。1992年卒の連志威氏の登用は、軍の中枢が70年代卒の世代から80年代卒の世代へと移行しつつあることを象徴しており、「LKK(Lau-Kou-Kou=台湾語で『老いぼれ』『時代遅れ』の意)」と揶揄される古い体質からの脱却を図る狙いがある。若返りと革新を象徴する「台湾の盾」が、真に台湾を守る鉄壁となり得るのか。その真価が問われるのはこれからだ。
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