Googleが最新AIモデル「Gemini 3」を発表し、その高い性能がテック業界で大きな注目を集めている。市場では「AI競争でGoogleが追う側から再びリーダーへと変貌した」との見方も強まっている。
こうしたなか、経済評論家の狄驤(ディー・シャン)氏はフェイスブックで見解を投稿。Googleの存在感が高まることで、NVIDIA(エヌビディア)のサプライチェーンに影響が出るのではないかと懸念する投資家が増えている状況について触れた。しかし同氏は、今年初めに話題となった「DeepSeekショック」を引き合いに出し、「過度に心配する必要はない」と指摘している。
狄驤氏によれば、投資家の多くは「Gemini 3が強力すぎて他のAIモデルを追いやる形になるではないか」と心配しているという。さらに、Googleが自社のTPU(独自開発のAI処理チップ)需要を一気に伸ばし、その結果としてNVIDIA製GPUの需要が減少し、関連企業の業績にも影響が出るのではないかという声が上がっている。
実際、一部では Meta(旧Facebook)が数十億ドル規模でGoogleのTPU購入を検討しているとの報道もあり、こうした動きがGoogle株上昇の一因になっているとの見方もある。
同氏は続けて、「とはいえ過度な心配は不要だ」と述べ、その理由として今年2月に起きた「DeepSeekショック」を挙げた。
中国が当時、非常に少ないハードウェア資源で開発したAIモデル「DeepSeek」を発表し、その性能の一部が当時の最先端モデルに匹敵したことで、市場では「AIチップ需要が落ち込むのではないか」という懸念が広がった。この影響で、人気の投資対象はハードウェア関連企業から、一時的にソフトウェア企業へとシフト した経緯がある。
「では、AIハードウェア需要は本当にDeepSeekショックで影響を受けたのか? 答えは明らかに『ノー』だ」と同氏は指摘する。
同氏によると、市場が今回のGemini 3を高く評価している理由には、他のモデルが追随できないほどの莫大な事前学習(プリトレーニング)資源を投入できる点や、GoogleのTPUがAI訓練に適している点 が挙げられる。しかし、特定のAIモデルがリードしているからといって、過度に懸念する必要はないという。
実際、今年初めのDeepSeekの登場時も、その前のOpenAIの急成長時も、市場では「Googleは遅れを取った」と悲観的な見方が広がったが、こうした評価は数カ月で容易に覆されたと説明する。
さらに、関連企業がTPUなどのASIC(特定用途向け集積回路) の需要を高めている背景についても言及した。企業側としては「NVIDIAのGPUだけに依存するわけにはいかない」ためであり、この動き自体は自然なものだという。
一方、NVIDIAもASIC需要の高まりを十分に把握しており、同社が近年強調している「エコシステムの完成度こそが最大の強み」という発言は、NVIDIAとASIC供給企業が競合関係というより補完関係にあることを示唆している。同氏は、AI需要が今後も拡大するなかで、両者は共に恩恵を受け、新たな商機や相場の動きを生み出す可能性が高いと分析している。
狄驤氏は、最近の台湾株や米国株の下落が非常に大きいことを指摘しつつも、将来の成長には依然として期待できると述べた。そのため、狄氏は下落局面では合理的な価格帯を狙って投資を行うと考えているという。
同氏によれば、株式投資においては単に評価額を見るだけでなく、「相場の動き、市場心理、資金の流れ」も同時に観察することが重要だという。
さらに同氏は、冷静さを保ちつつ良いタイミングを待つことが、株式市場で生き残るために繰り返し訓練すべきスキルだと強調。今回の下落局面で、多くの投資家が貴重な経験値を得られたとして、今後は市場が底を固める過程を注視することが重要だと述べた。
編集:小田 菜々香 (関連記事: トランプ氏、NVIDIAの対中H200輸出解禁を検討 米商務長官が明言「決断は大統領の机上に」 米中「AI冷戦」に転機か | 関連記事をもっと読む )
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