論評:NVIDIAの黄仁勳氏、米政府に「H200」輸出認可を要請 中国は慎重姿勢を崩さず

2025-11-28 10:45
黄仁勲氏がホワイトハウスに中国へのH200チップ輸出を説得、安全上の懸念で中国企業が国産AIチップへの切り替えを求める可能性も(写真、劉偉宏撮影)
黄仁勲氏がホワイトハウスに中国へのH200チップ輸出を説得、安全上の懸念で中国企業が国産AIチップへの切り替えを求める可能性も(写真、劉偉宏撮影)
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海外メディアの報道によると、トランプ政権はAI(人工知能)半導体の対中輸出規制の緩和を検討しているという。しかし問題は、中国側がこれを好意的に受け止めるとは限らず、必ずしも採用するとは限らない点にある。なぜなら、これは中国にとって「長期的な痛み」か「短期的な痛み」かの選択であり、さらには長期的な戦略的布石でもあるからだ。また米国にとっても、長期的・短期的な利益の間でどのような決断を下すかという選択の問題が存在する。

トランプ政権、「H200」の輸出許可を検討

米メディア『ロイター』によると、トランプ政権は現在、エヌビディア(NVIDIA)による中国へのAIチップ「H200」の輸出を許可するかどうかを評価している。その後、ハワード・ラトニック(Howard Lutnick)商務長官も取材に対しこの事実を認め、「現在、エヌビディアH200チップの対中輸出承認に関する決定案は、トランプ大統領のデスクに置かれ、審査を待っている状態だ」と述べた。

しかし、依然として反対派からの圧力には直面している。そもそも高性能AIチップの対中輸出を規制した主な理由は、これらのチップが中国のAI技術を強化し、その軍事能力を助長することへの懸念にあったからだ。したがって反対派の最大の主張も、「規制緩和は北京の軍事能力をさらに向上させることになる」という点にある。

米中、そしてエヌビディアの因縁

ここで、中国、米国、そしてエヌビディアの間の複雑な因縁を振り返ってみたい。

米中間の地政学的争いは、すでに全面的かつ全方位的に展開されている。技術戦争の鍵となるのは半導体に加え、AIである。中国のAI技術は米国に極めて接近しており、あるいは互角であるとも評されている。AIは次の「汎用技術(General Purpose Technology)」と見なされており、先行者は産業技術から科学研究、軍事に至るまで、あらゆる面で競争相手を凌駕することができる。

エヌビディアのAIチップは技術的に疑いようのない世界的覇者である。そのため、米国政府はエヌビディア製AIチップの対中輸出制限に乗り出し、その規制はますます厳格化していった。2022年、米国はまずエヌビディアの最先端チップ「A100/H100」の対中輸出を禁止した。当然ながら中国という巨大市場を失いたくないエヌビディアは、直ちに輸出規制を回避できる中国向け「特別版」AIチップを投入した。しかし、続いてこの特供版である「A800/H800」も再び規制対象となり禁止されたため、エヌビディアはさらに性能を落とした特供チップ「H20」を投入するしかなくなった。

「H20」を巡る攻防とセキュリティ懸念

それでもなお、トランプ政権は4月に「H20」を禁止リストに加え、対中輸出を禁じた。エヌビディアによる必死のロビー活動の末、最終的に中国での売上高の15%を米国政府に納めることに同意することで、ようやく「H20」の輸出許可が回復した。

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