高市首相、トランプ大統領と電話会談 「台湾有事」は協議されたのか

2025-11-25 13:35
2025年10月28日、高市早苗首相が米海軍の原子力空母「ジョージ・ワシントン」上で、在日米軍の貢献に感謝の意を示した。(AP通信)
2025年10月28日、高市早苗首相が米海軍の原子力空母「ジョージ・ワシントン」上で、在日米軍の貢献に感謝の意を示した。(AP通信)

25日午前、日本の首相官邸で暗号化された電話が鳴った。受話器の向こう側にいたのは、米国のドナルド・トランプ大統領である。約20分間に及んだこの電話会談は、表向きは同盟国間の挨拶のように見えるが、実際には地政学的な「ダメージコントロール」であった可能性がある。というのも、トランプ氏は数時間前に中国の習近平国家主席からの電話会談を受けており、北京側の説明によれば、双方は台湾問題が「戦後国際秩序の核心」であるとまで話し合ったとされる。一方、高市早苗首相は国会答弁で「台湾有事は日本有事」に相当する「存立危機事態」だと述べたことで、中国からの外交的逆風に晒されている。

高市氏が24日朝、記者団に語ったところによると、トランプ氏は電話会談の中で極めて友好的な姿勢を示し、「私たちは非常に親密な友人だ。いつでも電話してほしい」とまで述べたという。高市氏はG20サミットの状況についてもトランプ氏に報告したと説明した。しかし、同日に行われた「米中首脳電話会談」で、習近平氏は「台湾の中国への回帰は戦後国際秩序の重要な構成部分だ」と強調し、台湾問題で譲歩しない姿勢を示した。『朝日新聞』は、日中の対立が激化する中、これは日本への牽制だと指摘している。トランプ氏はその後の投稿で再び「G2」に触れ、米中関係の強さを強調したが、「台湾有事」を巡る論争については一切言及しなかった。

高市氏は記者団に「電話会談」の内容を説明する中で、トランプ氏が最近の米中関係の状況について説明し、習近平氏との電話会談内容にも触れたと述べた。しかし、『産経新聞』によれば、記者が「台湾有事」についての最近の国会答弁が会話に含まれたのかと質問した際、高市氏は「外交上の機微」にあたるとして詳細な説明を避け、「日米同盟の強化」や「インド太平洋地域が直面する課題」について双方が確認したとだけ述べた。

『朝日新聞』は、習近平氏が台湾問題で中国の立場を説明する際、高市氏の「台湾有事」発言への批判を強め、台湾問題で譲歩しない姿勢を改めて米側に示したと報じている。中国外務省が発表した声明によれば、トランプ氏は応じる形で「米国は台湾問題が中国にとって極めて重要であることを理解している」と述べたとされる。同声明の真偽について、同志社大学で米国政治を専門とする三牧聖子教授は、もし中国側の報道が正確であれば、トランプ氏が一定程度中国のレッドラインを意識した可能性があると指摘する。さらに、トランプ氏がその後台湾問題について沈黙したことは、こうした懸念を一層強めるとし、「戦略的曖昧さ」を意図的に採用した可能性に言及した。

明海大学の小谷哲男教授は、今回の「米中首脳電話会談」は習近平氏が主導したものであり、狙いはトランプ氏と高市氏の間に「くさび」を打ち込むことにあったと分析する。習近平氏が第二次世界大戦の歴史(米中がかつて同盟関係にあった事実)を強調したことは、日本を「戦敗国」と位置づけ、歴史的正統性の観点から日本による台湾介入の立場を弱めようとする意図が読み取れるという。一方、トランプ氏はこれについて明確に反論することなく、むしろ習近平氏との親密さを語ったことから、両国指導者の優先課題に大きな隔たりがあることが浮き彫りになった。すなわち、トランプ氏が重視しているのはウクライナと貿易であり、習近平氏が重視しているのは台湾と歴史的位置づけであるという構図だ。

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