中国と日本の外交的緊張が、軍事面へと波及している。中国は黄海海域で連日演習を実施し、24日には日清戦争で敗北の象徴とされる山東省・劉公島で実弾射撃を行った。一方、日本の小泉進次郎防衛相は23日、台湾まで約110キロの距離にある沖縄県与那国町を視察し、同島への中程地対空ミサイル配備を確認。自衛隊の防衛体制強化と日米同盟の重要性を強調した。
中国外務省は24日、日本が「中国台湾」に近い南西諸島に攻撃的兵器を配備することは「地域の緊張を意図的に作り出し、軍事対立を煽る行為だ」と非難。高市早苗首相の「台湾有事」発言を踏まえ、「極めて危険な動き」であり周辺国と国際社会は高度に警戒すべきだと訴えた。
与那国島は火薬庫となるのか ミサイル配備が日中の軍拡競争を刺激
与那国島は琉球弧(日本の南西諸島)の最西端に位置し、日本本土から数百マイルにわたり島々が連なる地域の終点にあたる。近年、日中関係が緊張する中、中国の国営メディアは琉球王国の歴史を取り上げ、同地域の主権を暗に疑問視する論調を展開している。
共同通信によると、小泉防衛相は視察先で「日本は戦後で最も厳しく複雑な安全保障環境に直面している」と述べ、中程ミサイル配備は「日本が武力攻撃を受ける可能性を減らす」と強調。地域の緊張を高めるとの批判には否定的な姿勢を示した。与那国島には2016年、自衛隊駐屯地が設置されており、南西防衛の最前線と位置付けられている。

歴史の戦場から現代の前線へ 03式中SAMと中国の反発
日本が配備を進める「03式中距離地対空誘導弾(03式中SAM)」は、三菱電機が開発し陸上自衛隊が運用する中距離防空システムだ。2003年に初期生産、翌年から配備が進み、射程は最大50キロ、高度1万メートルまで迎撃が可能。垂直発射方式で弾道ミサイルや戦闘機など多様な脅威に対応する。
中国外務省の毛寧報道官は24日、「日本の右翼勢力による歴史逆行を断じて容認しない」と述べ、「外部勢力が中国台湾に干渉することも、軍国主義が再び勢いを取り戻すことも許さない」と主張した。中国は領土主権を守る「決意と能力がある」と強調している。
台湾外交部の呉志中次官は、日本の防衛体制強化は「台湾海峡の安定に寄与し、台湾の利益にもつながる」と評価。一方で、台湾海峡で紛争が発生した場合、日本が防衛協力に踏み切るかは不透明だとし、日本の「台湾有事」への立場は「曖昧だ」と指摘した。

日台安全保障の「説明しづらい近さ」 劉公島の実弾演習が日本への圧力に
同じ24日、中国人民解放軍は黄海の劉公島東側海域で実弾射撃を実施した。劉公島は清朝北洋艦隊の拠点であり、1895年の日清戦争末期、日本軍が北洋艦隊を殲滅した「威海衛の戦い」の舞台として知られる。現在、同島は「国の恥を忘れず民族復興を誓う場所」と位置づけられている。
中央テレビ(CCTV)によると、中国各地では安徽省や重慶市を含む国防動員システムが、実戦に即した民兵訓練を進めており、緊急対応力と兵站能力の強化を図っている。今回の実弾演習は、与那国視察や南西防衛強化を進める日本への牽制とみる向きもある。
世界を、台湾から読む⇒風傳媒日本語版X:@stormmedia_jp (関連記事: 中国「第十五次五カ年計画」は経済再建と科技自立が核心 専門家「台湾の最大リスクは軍事より供給網再編」 | 関連記事をもっと読む )















































