米国のハワード・ラトニック商務長官は24日、ブルームバーグTVのインタビューに応じ、ドナルド・トランプ大統領が、半導体大手エヌビディア(NVIDIA)が中国にH200人工知能(AI)チップを販売することを認めるかどうか、最終判断を下す段階にあることを明らかにした。これは、前政権が設けた厳格な輸出規制を覆す可能性を示唆する発言である。
ラトニック氏は「この決定は今、トランプ大統領の机の上にある。前に進めるかどうか、最終的に決めるのは彼だ」と語った。2022年、バイデン政権は「スモールヤード・ハイフェンス(Small Yard, High Fence)」と称される輸出規制政策を導入し、中国が先端の計算能力を獲得する道を断つことを目的としてきた。しかし、2025年1月にホワイトハウスへ復帰したトランプ氏は、自身の「ディールの技術(Art of the Deal)」で、この「技術冷戦」を再定義しようとしている非典型的な大統領である。
もっとも、ブルームバーグは、中国に対する高性能プロセッサー輸出の緩和は、ワシントンの国家安全保障強硬派から強烈な反発を招く可能性が高いと指摘している。
ラトニック氏は、トランプ氏が「さまざまな立場の顧問」の意見を聞いていると述べた。その中には対中強硬路線を主張する国家安全保障のタカ派もいれば、NVIDIAの最高経営責任者(CEO)で、中国市場を失いたくない黄仁勲(ジェンスン・フアン)氏のようなシリコンバレーの巨頭も含まれる。
ラトニック氏はさらに、「トランプは習近平国家主席を最もよく理解している人物だ」と語り、この決定が単なる技術スペックの問題ではなく、米中首脳間の大国間取引や戦略的な駆け引きの一環になる可能性を示唆した。
黄仁勲(ジェンスン・フアン)氏の焦燥 閉ざされた中国市場
黄氏にとって、今回の判断は、近年で最も重要なロビー活動となる可能性がある。NVIDIAの株価は11月24日の米国市場終値で1株182.55ドルと高水準を維持しているが、その華やかな業績の裏側で、中国市場の喪失は「AI教父」とも呼ばれる黄氏にとって大きな痛手となっている。 (関連記事: ソフトバンク、NVIDIA株を全売却 総額58億ドルでAI市場に衝撃 背景に「OpenAI再投資」計画も | 関連記事をもっと読む )
ブルームバーグによれば、黄氏はトランプ氏と緊密な関係を築いており、頻繁に連絡を取り合っているという。黄氏は、何としても製品を中国市場に投入したいと考えているとされた。
【ニュース用語】最強のAIチップはH200なのか
現在、NVIDIAが誇る最先端AIチップは、Blackwellアーキテクチャを採用したB200 GPU、および2基のB200 GPU(TSMCの4ナノ半導体プロセス)とGrace CPUを組み合わせたGB200スーパー・チップである。
B200 GPUは、TSMCの4ナノプロセスを採用し、約2080億個のトランジスタを搭載する単体AIチップとしては最新かつ最高性能を誇る製品で、前世代のHopperアーキテクチャと比べ、学習性能は2.5倍、推論速度は5倍に向上している。
H200はHopper世代、H20はAmpere世代に属する。B200はFP4、FP8/INT6、BF16といった多精度演算において大幅な性能向上を実現し、学習・推論ともにH20やH200をはるかに上回る。特に大規模言語モデル(LLM)など複雑なAI学習において、性能はH100の約5倍とされ、性能、電力効率、応用規模のすべてで飛躍的な進化を遂げており、最先端のAI用途に最適とされる。




















































