護国神山は空洞化するのか?4》TSMCのグローバル展開を徹底解析 米国のレジリエンス指数が急上昇するなか、台湾のシリコンシールドは安全か

2025-11-22 19:57
TSMCは近年、海外展開を積極的に進めており、台湾の「シリコンシールド」への影響が注視されている。(写真/顏麟宇撮影)
TSMCは近年、海外展開を積極的に進めており、台湾の「シリコンシールド」への影響が注視されている。(写真/顏麟宇撮影)
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台湾がさらなる海外投資とグローバル展開を進める中、TSMCの「シリコンシールド」はどこまで保たれるのか。『風傳媒』の分析では、台湾半導体の「レジリエンス指数」は依然として世界首位の76.5を維持し、米国は61.5で続く。他国を大きく上回る状況だ。今回の報告では、TSMCのグローバル戦略を正確に把握するため、「TSMCの地域別/シリコンシールド・レジリエンス指数」を独自に設計。先端ノード比率、重要サプライの現地化、エネルギーと水資源の安定性、コンプライアンスリスクの4項目を軸に、先端プロセスの地域レジリエンスを可視化した。

シリコンシールド・レジリエンス指数の構成と重み:

  • 域内先端ノード割合(35%):その地域にある先端プロセスノードの生産能力が、全生産能力に占める比率。技術仕様に左右されるため、一部は推計による。
  • 重要サプライ現地化比率(30%):先端パッケージング(CoWoS/SoIC)や主要な生産材料、保守用部品がどの程度現地で調達できるかを評価。
  • エネルギー/水資源確保(20%):安定した電力供給、工業用水、再生可能エネルギー(グリーン電力)の利用可能性と予備能力を指標化。
  • 法遵リスク(15%、逆スコア):輸出規制、補助金の付帯条件、環境保護・労働安全規制、対外法規の不確実性などを評価。リスクが高いほどスコアは低くなる仕組み。

TSMCの世界マップ:分散ではなくしなやかな維持運用へ

顧客のニーズと地政学リスクを踏まえ、TSMCはここ数年、世界全体にセーフティネットを張り巡らせるような拡張を続けてきた。台湾は高い技術密度を持つ中核拠点として機能し、アメリカ、日本、ドイツは現地生産やサプライチェーン補完、そして「国家安全保障上の物語」を支えるアンカーとして位置づけられる。中国では上海と南京が役割を担い、シンガポールはグローバル企業との共同投資によって成熟プロセスを補完する。これは単なる生産拠点の拡大ではなく、リスクを分散し、製造と運用を「台湾だけでなく地球規模で回せる」ように設計された、よりしなやかなシステムへの移行だと言える。

まずTSMCのグローバルな布陣を俯瞰すると、台湾が依然として先端ノードと先端パッケージングの高密度集積地であることがわかる。台南ではN3の量産が進み、新竹・宝山と高雄は2025年後半からN2量産のリズムを担う予定で、台中は次世代のA16世代を引き継ぐ構想だ。こうした「設計力」「プロセスの蓄積」「パッケージングというボトルネック領域」が重なりながら鍛えられていく学習曲線は、現時点では台湾でしか再現できないものになっている。 (関連記事: 護国神山は空洞化するのか?1》TSMCに「ノー」は許されない サプライチェーン同伴の海外進出は、台湾空洞化か世界挑戦か 関連記事をもっと読む

米国は大きく揺れ、日本はゴール直前の一蹴 シリコンシールドのレジリエンスはどう変わるのか

前述の五つの地域を詳しく見ていくと、最も劇的にレジリエンスが変化しているのが米国であることがわかる。N2や先端パッケージングがまだ量産段階に入っておらず、サプライチェーンも十分に現地化されていない現状では、米国のレジリエンス指数は40点台にとどまっている。しかし、これらが本格的に稼働し、材料やメンテナンス体制も現地で堅固に整えば、指数は自然と60点台へと跳ね上がる。つまり、アリゾナ工場の第2期が立ち上がるタイミングこそが、米国レジリエンスが基準値に達したと見なせる分岐点になる。したがって重要なのは「できるかどうか」ではなく、「どれだけ早く仕上げられるか」だ。建設期間、人材動員、そして政府のローカルコンテンツ規定がどれほど柔軟に運用されるかが、到達時期を左右する決定要因となる。

米国大統領バイデンと台積電進機典礼での一枚。(図/台積電提供)
シリコンシールドのレジリエンス指標が最も劇的に変化しているのは米国だ。写真は2022年、TSMCアリゾナ新工場の起工式に出席した、当時の米大統領バイデン氏。(写真/TSMC提供)
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