トップ ニュース 護国神山は空洞化するのか?4》TSMCのグローバル展開を徹底解析 米国のレジリエンス指数が急上昇するなか、台湾のシリコンシールドは安全か
護国神山は空洞化するのか?4》TSMCのグローバル展開を徹底解析 米国のレジリエンス指数が急上昇するなか、台湾のシリコンシールドは安全か TSMCは近年、海外展開を積極的に進めており、台湾の「シリコンシールド」への影響が注視されている。(写真/顏麟宇撮影)
台湾がさらなる海外投資とグローバル展開を進める中、TSMCの「シリコンシールド」はどこまで保たれるのか。『風傳媒』の分析では、台湾半導体の「レジリエンス指数」は依然として世界首位の76.5を維持し、米国は61.5で続く。他国を大きく上回る状況だ。今回の報告では、TSMCのグローバル戦略を正確に把握するため、「TSMCの地域別/シリコンシールド・レジリエンス指数」を独自に設計。先端ノード比率、重要サプライの現地化、エネルギーと水資源の安定性、コンプライアンスリスクの4項目を軸に、先端プロセスの地域レジリエンスを可視化した。
シリコンシールド・レジリエンス指数の構成と重み:
域内先端ノード割合(35%):その地域にある先端プロセスノードの生産能力が、全生産能力に占める比率。技術仕様に左右されるため、一部は推計による。 重要サプライ現地化比率(30%):先端パッケージング(CoWoS/SoIC)や主要な生産材料、保守用部品がどの程度現地で調達できるかを評価。 エネルギー/水資源確保(20%):安定した電力供給、工業用水、再生可能エネルギー(グリーン電力)の利用可能性と予備能力を指標化。 法遵リスク(15%、逆スコア):輸出規制、補助金の付帯条件、環境保護・労働安全規制、対外法規の不確実性などを評価。リスクが高いほどスコアは低くなる仕組み。
TSMCの世界マップ:分散ではなくしなやかな維持運用へ 顧客のニーズと地政学リスクを踏まえ、TSMCはここ数年、世界全体にセーフティネットを張り巡らせるような拡張を続けてきた。台湾は高い技術密度を持つ中核拠点として機能し、アメリカ、日本、ドイツは現地生産やサプライチェーン補完、そして「国家安全保障上の物語」を支えるアンカーとして位置づけられる。中国では上海と南京が役割を担い、シンガポールはグローバル企業との共同投資によって成熟プロセスを補完する。これは単なる生産拠点の拡大ではなく、リスクを分散し、製造と運用を「台湾だけでなく地球規模で回せる」ように設計された、よりしなやかなシステムへの移行だと言える。
米国は大きく揺れ、日本はゴール直前の一蹴 シリコンシールドのレジリエンスはどう変わるのか 前述の五つの地域を詳しく見ていくと、最も劇的にレジリエンスが変化しているのが米国であることがわかる。N2や先端パッケージングがまだ量産段階に入っておらず、サプライチェーンも十分に現地化されていない現状では、米国のレジリエンス指数は40点台にとどまっている。しかし、これらが本格的に稼働し、材料やメンテナンス体制も現地で堅固に整えば、指数は自然と60点台へと跳ね上がる。つまり、アリゾナ工場の第2期が立ち上がるタイミングこそが、米国レジリエンスが基準値に達したと見なせる分岐点になる。したがって重要なのは「できるかどうか」ではなく、「どれだけ早く仕上げられるか」だ。建設期間、人材動員、そして政府のローカルコンテンツ規定がどれほど柔軟に運用されるかが、到達時期を左右する決定要因となる。
シリコンシールドのレジリエンス指標が最も劇的に変化しているのは米国だ。写真は2022年、TSMCアリゾナ新工場の起工式に出席した、当時の米大統領バイデン氏。(写真/TSMC提供)
台湾の鍵はコア密度の強化 シリコンシールドは島からネットワークへ こうした変化に対し、台湾側の方針はジオポリティカルリスクを真正面から見据えたものにならざるを得ない。米中の技術分断が長期化する中で、「輸出規制・現地化義務・補助金の付帯条件」といった新しい常態はすでに制度化しつつある。グローバル化の段階がどれだけ変わろうとも、法規制に伴う遵守コストは必ずつきまとう。設備投資、建設期間、労務費、検証プロセス──それらが積み重なることで価格曲線はどうしても上向きになり、短期的な粗利圧力も避けられない。一方で、顧客や各国政府にとって「供給が止まらない」こと自体が価値となり、レジリエンスに対するプレミアムはより長期的な財務指標に反映されていく。
TSMCの地政学リスクへの向き合い方は「きわめて分かりやすい」とも評されている。写真は建設が進むTSMC熊本工場。(写真/AP通信)
台湾に根を置き続ける姿勢 魏哲家氏:海外展開の本質は地域の柔軟性 第3四半期の決算説明会で、TSMC会長の魏哲家氏は改めて強調した。TSMCの海外展開はすべて「顧客の地域分散ニーズ」に基づくものであり、そのために必要な政府支援も重要な前提となる。そして、この戦略が最終的に株主価値の最大化につながると説明した。
アリゾナについては、米国側の先端顧客の協力と、連邦・州・市レベルの支援もあって拡張作業を加速しており、既存工場の隣接地に新たな大規模用地を取得した。これにより既存計画を支えつつ、急増するAI需要に柔軟に応じられる体制を整える。また魏氏は、今後数年にわたり台湾での先端プロセスおよび先端パッケージング施設への投資を継続すると述べ、TSMCの中核は今後も台湾に置き続ける姿勢を明確にした。
「グローバル化」は是非の問題ではなく、「いかに強靭につくり直すか」という問題だ──魏氏の発言はその点を示している。コスト増と粗利圧力は確かに避けられないが、米国のレジリエンス指数が高まるのは必然でもある。重要なのは、プロセスの世代移行、材料・部材の現地化、サプライチェーンの追随が同時並行で実行できるかどうか、そして新たな法規制の境界条件をどう乗り越えるかだ。「シリコンシールド」はもはや一つの島を守る壁ではなく、複数拠点で支え合うネットワークとして再定義されつつある。
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