世界の半導体地図が再編されるなか、台湾が長年築いてきた優位性にも変調が生じている。コークラン・キャピタル会長でベテラン半導体アナリストの楊應超氏は、米中対立と世界的な資金再配分の波の中で、台湾の「三つの宝」――半導体、外貨準備、中小企業――はもはや岐路に立たされていると語る。
「かつて台湾を守ってきた三つの宝は、今では圧力の源へと変わりつつある」。楊氏はそう指摘し、政府が戦略を再構築しなければ台湾は急速に周縁化すると警鐘を鳴らす。
半導体は台湾の経済を支える最大の柱だが、その強さが今、別のリスクを生んでいる。台湾は世界で最も成熟したファウンドリーおよび封止・テストのエコシステムを持つ。しかしTSMCが米国進出を進めるにつれ、技術・人材・コストの「分散」が避けられなくなり、国内の産業密度が強制的に薄まると楊氏は見る。
これは単なる製造コストの上昇や粗利低下の問題ではなく、サプライチェーンの「構造的な空洞化」が起きる可能性があるという。
半導体の移転リスク:強さの裏側に潜む脆さ
台湾の外貨準備高は過去最高水準だが、楊氏は「多いほど自主性が弱まる」と指摘する。
「米国が兵器購入や国債投資、主権ファンドの設立を求めるとき、台湾の外貨はもはや自由に動かせる資金ではない」。
名目上の豊かさとは裏腹に、金融主権の領域はむしろ狭まっているという警告だ。
中小企業は台湾経済の生命線だが、関税障壁、台湾ドル高、人件費の上昇が重なり競争力が急速に低下している。「企業規模が小さく分散しているため、外部ショックへの耐性が弱い」。
柔軟性を強みとしてきた台湾の中小企業が、今はグローバル化と反グローバル化の板挟みで最も傷つきやすい立場にある。楊氏はまとめる。「半導体は集中リスクを抱え、外貨は数字だけの強さになり、そして中小企業は小さすぎる。このままでは台湾はより速く世界の周縁へ押しやられるだろう」。

地政学とドル覇権:台湾の役割はますます困難に
近年の地政学的環境を俯瞰しながら、楊氏は「最終的な勝者は米国だ」と断言する。米国はトップ0.1%の人材と基礎科学の力で科学技術・金融覇権を維持しており、中国がこれを代替するにはなお距離があるという。
さらに、米国の戦い方は従来の貿易戦争や技術封鎖ではなく、実質的には「金融戦争」だと分析する。
楊氏は語る「トランプの関税は目的ではなくツールだ。狙いは米国の巨額債務の処理。関税は企業を米国に戻し、内需と税収を増やすための手段にすぎない」。
米国債の利払いはすでに国防費を上回り、トランプ氏が対中だけでなく「対債務」の戦いに挑んでいる構図だ。もし関税でインフレが悪化し、購買力が低下すれば票を失う──だからこそ、各国はアメリカの政策の“副作用”を読み違えてはならないと警告する。
楊氏はさらに踏み込む。「台湾にとっての最大リスクは外からの圧力だけではない。政治的混乱と内部消耗だ」。
対岸の軍事脅威も重大だが、同じくらい危険なのは国内政治の内紛であり、「それが台湾の貴重な時間とエネルギーを奪ってしまう」と語った。




















































